日常を忘れられる「たたずみ酒場」「瀑声」に耳を傾け燗酒をあおる異世界…「おんたき茶屋」は新神戸駅から歩いて15分、眼前の風景はまるで絵画
おんたき茶屋(兵庫・神戸市)
物価高は止まらず、正体不明の犯罪グループによる事件が続出。2024年はどうもキナ臭い1年だったが、そんなご時世だからこそ焦らず急がず、一度立ち止まってみてはどうか。本紙記者が、日常を離れて「たたずめる」酒場を探った。
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「都会から近いのに、日常を忘れられる」──。
斎藤元彦兵庫県知事の失職、再選挙での当選、公職選挙法違反疑惑と、混沌を極める県政を取材する中でキャッチしたのが、この店だった。
店は、六甲山のふもとに位置する山陽新幹線の新神戸駅の裏手から、山側を約15分歩いた場所にある。「日本三大神滝」の1つである「布引の滝」付近に位置し、たどり着くにはちょっとした山登りが必要だ。布引の滝は雄滝、雌滝、夫婦滝、鼓ケ滝の4つから成り、最上流の雄滝は高さ43メートルの落差を誇る。店名は雄滝にちなんだものだ。
記者が同地に向かったのは11月下旬の某日午後。晴天だが気温は十数度と肌寒く、午前中に県政取材に駆け回ったせいか、体は芯から冷え切っていた。不安を覚えつつ、高架状の新神戸駅をくぐると「布引の滝 500m」の標識が目に入る。「近いじゃん」と思ったが、すぐに自らの甘い認識を痛感させられた。
滝へと向かう道筋は舗装されているものの、超急峻で、歩を進めるごとに息は上がり、体力が削られていく。ジャケパンスタイルに革靴で臨んだのは適切ではなかった。ただ、冷え切った体は芯から温まり、気付けば汗だくである。