「統一教会との格闘、22年」鈴木エイト著/角川新書(選者:佐高信)
カルト教団と闘い続けるジャーナリスト精神に頭が下がる
先月、石橋湛山議員連盟の研究会に呼ばれた私は開口一番、「SUT」すなわち「世襲、裏金、統一教会」から最も遠かったのが湛山だ、と切り出した。これは議連に参加している自民党議員を刺激したようで、その代弁者の「産経新聞」が、私を講師に招いたのが信じられない、という声があると報じた。しかし、湛山は靖国神社廃止を唱えた人である。
「自民党がヤクザなら維新は半グレ」と持論を展開したことも彼らを興奮させたようだが、カタギの政治家なら絶対遠ざけるのが、とりわけ統一教会である。ようやく明らかになってきたその危険性について、著者は文字通り体を張って訴えてきた。
統一教会という宗教カルト団体は、正体を隠して「手相の勉強」や「意識調査アンケート」を口実に声をかけ、「ビデオセンター」と呼ばれる教化施設へ連れて行く。それに著者は「後先考えず割って入っていった」のである。2002年、東京は渋谷の雑踏でだった。それから統一教会との長い“格闘”が始まった。
教団の人間から殴られたり、警察に通報されたり、住所と家族を喧伝されたりしながらも、著者はひるまず闘ってきた。そのたゆまぬジャーナリスト精神には頭が下がる。著者によれば、信者となった人たちは「どこにでもいる人たち」である。「この本を読んでいるあなたの娘、友人、恋人であったかもしれない」し、「身近な人が、ある日突然カルト教団に取り込まれてしまうことは、誰にでも起こり得る」のだという。
だから、なおさら、その実態を詳らかにしなければならないのだが、高額な壺などを法外な金額で購入させる霊感商法が問題になった時も、統一教会は政治家に働きかけて、捜査をストップさせたりしてきた。統一教会は自治体のイベントなどにも潜り込む。北千住の荒川河川敷で開かれていた「灯籠流しと音楽会」も彼らが実質的に主導権を握り、勧誘などにつなげていた。もちろんメディアにも圧力をかけ続けてきたが、辛抱強くその扉を開けてきた著者には惜しみない拍手を送りたい。著者を支援するには、まず、この本を買うことである。
ヤクザと半グレの比喩に戻れば、財務官僚OBの多い国民民主党はインテリヤクザであり、代表の玉木雄一郎は極めて統一教会と関わりが深い。それは著者の「自民党の統一教会汚染」(小学館)にも書かれている。
ヤクザと半グレ、そして統一教会の三位一体からカタギの衆を救い出さなければならない。 ★★★