石破茂首相の約1週間に及ぶ南米歴訪のハイライトは11月15日(日本時間16日)に訪問先のペルーの首都リマで行われた中国の習近平国家主席との日中首脳会談だろう。厳しい状況が続く日中関係を前に進めることができるかどうかー。外交経験が乏しい首相にとって緊張の連続だったに違いない。関係者によるとそんな首相を前にして口火を切ったのは習氏だった。
「石破総理は田中角栄先生(元首相)のご縁で政治家になられたと聞いています」
多分にリップサービスのにおいが消えないものの首相にとって悪い気になるはずがない。首相は周辺に「当たり前のことだがよく調べているもんだね」とまんざらでもない様子だったという。
1972年9月、田中氏は首相就任から2カ月後に電撃的に中国を訪問して国交正常化を実現した。日本国内で台湾派と北京派が激しくぶつかり合う中での大きな決断だった。そのため中国で元首相は「井戸を掘った人」と...
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