WAMとは
WAMと聞いて、すぐにその内容をイメージできる人はどれくらいいるだろうか。
WAMとは、Wet and Messy(ウェット&メッシー)の略で、「濡らす(ウェット)」ところや「汚す(メッシー)」ところを見たり、見られたりすることで性的興奮を得るフェティシズムである。
例えば、女性の白いブラウスが雨に濡れてブラジャーが透けてきたり、さらには乳首が透けて見えたりすることに興奮する男性は少なくないだろう。もしかすると、“濡れフェチ”“透けフェチ”という言葉のほうが一般的かもしれない。映画やAVにもそんなシチュエーションはこれまで数限りなく使われてきた。
Messyの“汚れフェチ”は、泥やローション、シェービングクリームなどを使って行い、着衣もヌードもある。
1990年頃から欧米で認識が広がり始めたと言われるWAMだが、日本では今でも言葉の認知度は低い。そんな中、WAMでエロティシズムを追求する活動をしているMARIがネットで注目されている。
MARIの語るWAMの魅力
MARIさんの表現の場はSNSがメインで、ツイッターのアカウントは2つある。日本語で発信しているアカウント(@Mari_wam_)のフォロワーは約32,000人、英語で発信しているアカウント(@MARI_flix7)のフォロワーは約121,000人だ(いずれも10月26日現在)。英語で発信している方には、世界中からコメントの返信があるという。
「泥んこになるWAMはアメリカからの『いいね』が多く、日本人に好評なのは、やはり水やローションです。それから、タイのファンから『MARIさんはタイのスクールガールの制服が似合いそう』というメッセージをいただき、その気になってタイの制服を輸入しました。早速、WAMに使いました。国によって好きなWAMの内容が違うのは興味深いですね。そもそも、この活動を始めた頃、WAMという言葉を知りませんでした。ファンから『MARIさんがやっているのはWAMですね』みたいなメッセージをいただき、それで始めて知りました」
MARIさんは『Onlyfans』という課金制のSNSも利用している。こちらにはWAMからのヌードもあるし、WAMのライブ配信もある。10月26日に行われたライブ配信は深夜にもかかわらず、熱心なファンが「髪がすでに濡れてますね」「乳首が見えた」などのコメントとともにチップ(投げ銭)を投下していた。
MARIさんは屋内だけでなく、野外でも撮影する。夏は河原で泥だらけになるWAMを撮影している。露出もある撮影なので、必然的に時間帯は夜間を選ばざるを得ない。とはいえ、通行人に見られたり、通報されたりするトラブルはないのだろうか。
「そういうトラブルはなかったです。車が通るときもありますが、案外見てないのでは。ただ、浅い川に見えたので、向こう岸に渡ろうとしたところ、流されそうになったことがありました。ちょっと命の危険を感じました(笑)」
深夜、周囲に街灯のない河原で動画を撮るには、大量のライティングが必要だ。撮影がどんどん本格的になっていき、彼女はプロ用のカメラ機材を揃えていった。これまで総額300~400万円は使ったという。
彼女がそこまでこだわるWAMの魅力とは何か。
「制服やスーツなど、きちんと正装した美しいものが汚されていくという『落差』でしょうか。そして、正装したものが少しずつはだけていくところにエロティシズムがあると思います。『金閣寺』という小説は、金閣寺が放火されて全焼した事件を描いていますが、三島由紀夫さんは『美への嫉妬』がテーマだとノートに記しています。私みたいな者が『金閣寺』を引き合いに出すのはおこがましいのですが、人間の心にはそんな一面もあるのかなと思います」
汚せば何でもいいのかといえば、そうではないらしい。彼女は水、ローション、泥をよく使う。はちみつ、生クリームなども使ったことがあるが、ジャムや金粉は使ったことがない。
「いちごジャムのような赤いものは血液を連想するので、嫌悪感を覚える人も多いでしょう。それから、墨汁だと真っ黒になるのでビジュアル的にどうかなと思います」
泥はOKで墨汁がダメ、というあたりがWAMをやっている人それぞれのこだわりなのかもしれない。
それから、主に夜間・深夜に撮影するのは、人目を忍んでということだけが理由ではないという。
「女性の魅力は夜の方がより出てくるのではないでしょうか。女性美は暗闇の方が映えると思っています」
美の追求と日々の努力
彼女が追求するWAMには常に「美」へのこだわりがある。それだけに、食事など日々の努力はかなりのものだ。また、お金もかかっている。例えば、ロングヘアをきれいに維持するだけで、毎月5万円以上は使っているという。
「基本的に1日1食です。また、気合を入れて撮影するときは、撮影1週間前から炭水化物を抜くようにしています。既製品のスーツを買っても、体にフィットするよう必ずお直しに出します。それから、とくに誰かに会うわけでなくても、ハイヒールを毎日はきます。ハイヒールは女性の特権みたいなものだと思っていて、はくと自信もわいてきます」
テレビのバラエティなどで「美しさの秘訣は?」と質問されて、「何もしてませーん」と答えるアイドルや女優をよく見るが、あれは嘘くさい。MARIさんのようにハッキリと答えるほうがよほど潔いし、質問するこちらとしてもすっきりする。
エロに興味。きっかけは個人的趣味
彼女が白シャツを水やローションで濡らして透けさせるところをスマホで自撮りし始めたのは2年ほど前。きっかけについてこう話す。
「エロには10代の頃から興味がありました。AVやネット動画などでWAMを見ることがありましたが、きれいだと思ったものがほとんどありませんでした。私ならもっときれいに、そしてエロっぽく撮れると思いました」
最初はホテルなどのバスタブで撮っていただけだったが、どんどん撮影に熱中するようになり、野外でも撮り始めた。野外での撮影は、さすがに1人では難しいので、知り合いのカメラマンの協力を得ている。
彼女は大学卒業後、看護師として働いていたが、WAM撮影を続けるために、その仕事を辞めた。あらぬ噂を立てられて、職場に迷惑をかけたくなかったからだ。
彼女は趣味の活動を理解してくれる知り合いの会社で働き始めた。現在も、平日の昼間はその会社でサラリーマンとして働いている。仕事が終わってから、撮影した動画を夜中に1人で編集する。もちろん、すべてパソコンでの編集だが、編集ソフトの使い方も独学でマスターした。そして、ある程度、作品のストックができた頃にSNSで公開し始めた。
体操服ブルマで撮ってみましたが、あまりのシチュエーション違いで笑えました?皆様いかがでしょうか❓?https://t.co/Mqi8ClSaUS pic.twitter.com/6KR41dEc6n
— ??MARI?? (@Mari_wam_) November 2, 2021
https://t.co/Mqi8ClSaUS
濡れ濡れ濡れ?透け透け? pic.twitter.com/YK4G7RBpwa— ??MARI?? (@Mari_wam_) October 27, 2021
プロになるつもりは今後もない
今夏からSNSに加え、個人撮影会でのモデルも始めた。ファンの意見や要望を直接聞いてみたくなったという。WAMの撮影会では会場にビニールプールを敷き、彼女はその中でローションだらけになっている。撮影会前日は大量のローション作りをするなど、準備が大変らしい。
自撮りしているとき、そして素人カメラマンに撮られているとき、彼女はどう感じているのだろう。
「美しく、セクシーに撮られたいと考えています。撮影中、見られているということに興奮はしますが、私自身は、WAMは性的な行為ではないと思っています」
MARIさんの写真や動画を見ると、脚を曲げる角度や指先の伸ばし方、視線に至るまで、ポーズの細部に注意しているのがよくわかる。
「モデルの経験などはなく、まったくの素人ですので、撮影したデータを日々確認しながら『次はああしよう、こうしよう』と手探りでやっています。また、子供の頃、13年ほどクラシックバレエを習っていたので、体が柔らかく、ポージングをすることに慣れていることもあると思います」
彼女は今後の活動について、グラビアのモデルなどもしてみたいと抱負を語るが、サラリーマンを辞めて“プロ”になるつもりはまったくないと断言した。
「本職があって、個人的な趣味の範囲で活動しているからこそ、精神的な“余裕”が生まれるものだと思います。お金目当てになって余裕がなくなると、自由な表現活動ができなくなってしまいます」
精神的な余裕から生まれる自由な表現と美しさ。彼女が追求するWAMの今後が楽しみだ。
(文=上条泡介)
【MARI】
公式Twitter@Mari_wam_(日本語版)
公式Twitter@MARI_flix7(英語版)