記事提供:『三橋貴明の「新」経世済民新聞』2017年5月31日号より
※本記事のタイトル・リード・本文見出し・太字はMONEY VOICE編集部によるものです
恐るべき「日本国民の貧困化」消費はなぜ拡大しないのか?
「今までこうだったから、こうなる」が日本人の国民性
ソーシャルレンディング最大手「maneo」代表の瀧本憲治様との対談シリーズ、第8回がリリースされました。
※【お金とは何か?インフレになるのは何時か?】三橋貴明氏に教わる 第8回 – YouTube
実は、すでに人手不足によるインフレ化は、「サービス量の低下」という形で始まっている。それでは、本格的なインフレ(物価上昇)になるのは? 金利は? というお話です。
上記、瀧本様との対談でも解説しましたが、日本国民が「消費を増やす」形で国内需要が拡大するためには、まずは実質賃金が2~3年は継続的に上昇する必要があります。
昨年9月の日銀のレポートからも明らかなとおり、日本人は「適合性期待形成」の傾向が強い。つまりは、「将来的にこうなるだろうから、こうなる」と考えるのではなく、「今までこうだったから、こうなる」と考える傾向が強いのです。
というわけで、まずは実質賃金の継続的な上昇がなければ、実質消費の安定的な拡大はないと考えるべきです。それにしても、日本の実質消費の減り方は半端ありませんが。
20カ月連続で消費減少、歴史に名を残した安倍総理
総務省が30日発表した4月の家計調査によると、2人以上世帯の消費支出は1世帯あたり29万5929円で、物価変動を除いた実質で前年同月比1.4%減少した。14カ月連続で減少した。QUICKがまとめた市場予想の中央値は1.0%減だった。季節調整して前月と比べると0.5%増加した。
勤労者(サラリーマン)世帯の1世帯あたりの消費支出は32万9949円となり、実質で前年同月比2.9%減少した。2カ月ぶりに減少した。』
日本の実質消費の推移(対前年比%)
これで、うるう年効果を除くと、20カ月(!)連続で日本国民は実質の消費を対前年比で減らしたことになります。もちろん、統計的に確認できる期間では、史上最長です。
安倍総理は、日本史上、最も長く国民の消費を減らし続けた総理大臣である可能性が極めて濃厚なのです。おめでとうございます、総理! 歴史に名を残しましたね!未来永劫、語り継ぎたいと思います。
2013年4月の消費を100とすると、2017年4月は何と92.4! 分かりやすく書くと、「2013年4月、国民はパンを100個買えていた。今は、92個しか買えない」という話になります。
恐るべき「貧困化」としか、呼びようがありません。
Next: さらに恐るべきは「国民の貧困化」を問題にしない政治家とマスコミだ
「国民の貧困化」を問題にしない政治家とマスコミ
それに輪をかけて恐るべきは、この「国民の貧困化」を政治家やマスコミが問題視しないことです。何というか、北朝鮮のミサイルと同じく、「政治」は貧困化に慣れてしまっていませんか?
もっとも、状況は好転しつつあります。瀧本様との動画で解説した通り、生産年齢人口比率の低下により、人手不足が深刻化。企業は「サービス量を減らす」形で値上げを始めています。
この状況が進めば、やがては「値上げ」から「生産性向上による実質賃金の上昇」につながるはずです。そして、実質賃金上昇が安定的に3年ほど続けば、ようやく実質消費が拡大を始め、デフレ脱却となります。
そして、この「少子高齢化」が与えてくれたデフレ脱却の絶好の機会を潰すのが、PB黒字化目標、消費税増税といった安倍政権の緊縮財政なのです。
20カ月連続で実質消費を減らした内閣が、さらなる緊縮財政路線を進もうとしている。国家とは、情報の間違いにより亡国に至るということが、如実に理解できます。
安倍政権が国民のさらなる貧困化を望まないならば、PB黒字化目標を破棄し、緊縮財政路線と決別しなければならないのです。
『三橋貴明の「新」経世済民新聞』2017年5月31日号より
無料メルマガ好評配信中
三橋貴明の「新」経世済民新聞
[無料 ほぼ日刊]
●テレビ、雜誌、ネットで話題沸騰!日本中の専門家の注目を集める経済評論家・三橋貴明が責任編集長を務める日刊メルマガ。三橋貴明、藤井聡(京都大学大学院教授)、柴山桂太(京都大学准教授)、施光恒(九州大学准教授)、浅野久美(チャンネル桜キャスター)、青木泰樹(経世論研究所 客員研究員)、平松禎史(アニメーター・演出家)、宍戸駿太郎(國際大学・筑波大学名誉教授)、佐藤健志(作家・評論家)、島倉原(評論家)、上島嘉郎(ジャーナリスト/元「正論」編集長)などの執筆陣たちが、日本経済、世界経済の真相をメッタ斬り! 日本と世界の「今」と「裏」を知り、明日をつかむスーパー日刊経済新聞!