Elizabeth Grace Saunders氏は時間管理コーチであり、時間管理術を教える「Real Life E Time Coaching & Training」の設立者で、『The 3 Secrets to Effective Time Investment: How to Achieve More Success With Less Stress』の著者でもあります。そんなSaundersさんの仕事の経験から分かった、他人に振り回されずにきちんと自分のスケジュールで仕事をこなす術を、よくある3つのパターンを分析しながら、ご紹介していきましょう。

自分よりも他の人の欲求を満たす、ということを常に強迫観念のように感じている人にとっては、考え方を変えるのは難しいです。他人を喜ばせることというのは、何をするかということだけでなく、人格の一部のようなものでもあります。

ここまで読んで「まるで自分のことを言われてるみたいだ」と思った人は、自分のスケジュール管理をうまくやる以前に、そのような他人を喜ばせるための行為で、自分のスケジュールを圧迫する必要はないのだ、と気付く必要があります。自分と他人の線引きをきちんとできるようになりましょう。仕事によっては、仕事の領分などを超えて即時対応しなければならないものもあります。(例えば消防士など)しかし、ほとんどの仕事の場合、目の前にある仕事に次々と対応していては、本当に大事な仕事をおろそかにしかねません。もしくは、すべてに対応した結果、夜遅くまで残業したり、週末に休日出勤や自宅作業をするなどして、本当に大事な仕事をするために、自分の大切な休暇の時間を使うことになります。

他人が喜ぶことをしたいという気持ちは、当然ながら本質的には悪いことではありません。しかし、常に誰かを助けなければならないと思い過ぎて、自分のことよりも必要以上に他人を優先してしまうのが問題なのです。他人の要求に神経質になり過ぎず、自分を大切にするというバランスを、上手に取っていきましょう。

今回は、他人を喜ばせて自分を苦しめるタイプの人にありがちな3つのパターンを紹介しながら、どのようにすれば上手にバランスを取ることができるのかを考えていきましょう。

■「いい社員」の基準が非現実的

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あまりにも会議が多いという事実に、後ろめたい気持ちを感じている会社員は多いです。しかし、誰かに声をかけられて会議に出ないとなると、「自分はできの悪い社員だ」という思いが強くなります。そのような気持ちが強いと、今度は入れられた会議にできる限り出席し、予定を隙間無く埋めるようになっていきます。その結果、自分の本来の仕事をするのが定時後の残業時間や週末になり、そのせいで「できの悪い社員」なだけでなく、「悪い亭主/妻」や「悪い親」や「(付き合いの)悪い友だち」になっていきます。

このようなパターンに陥りがちな人は、自分の考える「いい社員」の基準を、変えるところから始めましょう。例えば、「いい社員の条件の一つは、優先度の高い仕事に集中することの重要性を実証していること」だと考えることができれば、自分の仕事をきちんと終わらせるために、週のうちある一定時間は何も予定を入れず、そのことで罪悪感も持たずに仕事に集中することができるようになります。

このような場合、厳格なルールを決めて、それは何人たりとも犯してはならない、というようになってしまう人もいますが、現実的にはルールには臨機応変に対応していいと思います。自分の中の「いい社員」の基準は、いい社員やいい友だち、周囲に影響力のある人物、いい会議参加者になるということと同義だと改めることで、罪の意識を感じることなく、自分にとってほど良い境界線とバランスを見つけられるようになります。

なぜそのように急に線引きをするようになったのかと聞かれたり、説明しなければならなくなった時は、「すみません、もう時間ですから」とか「申し訳ありませんが、この時間には対応するのが難しいので、ご要望があればメールを送っていただけますか」と言うだけでいいです。

■頼まれると断れない八方美人

元気でサービス精神あふれる人の場合、誰かに何か頼まれた時にいつも「もちろん、できますよ」と答えてしまう傾向にあります。もしくは、会議中や誰かがボランティアを求めている時にも、つい手を挙げてしまいます。時には、助けを求められていないのに、助けが必要なのではと思った時には、思わず手を差し延べてしまいます。

困っている人を助けたいという気持ちや、その行動は、もちろん悪いものではありません。しかし、そのせいで完全に超過労働になってしまったり、本当に大事な仕事に集中できないようでは、自分の仕事をきちんとこなせなくなり、信用もなくなってしまいます。

何でもかんでも引き受けないように自分を戒めるには、「そんなことをする時間の余裕が本当にあるの?」と自問してみましょう。答えが「ある」であれば、それは引き受けてもいいでしょう。答えが「ない」であれば、今やっていることをどれかやめて時間を作るか、助けるのを自制する必要があります。

困っている人がいたら、それを助けずにはいられないという人は、結局自分の休息の時間を取ることができなくなり、その結果危機的状況に陥ってしまうことにも気付きません。

どうしても見過ごせないような状況だったとしても、それは相手にとってはチャンスかもしれないということを忘れないでください。会議もイベントも記事も解決するべき危機的状況も、この世には有り余るほどあります。睡眠や休息、大事な人と一緒に過ごす時間など、自分の本当の仕事をこなすために必要な時間を作れなくなってしまったら、本末転倒だということを決して忘れないようにしましょう。

■人に任せきれず自分でやってしまう

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私の経験から言うと、頭が良くて、仕事熱心な人ほど、人に仕事を任せたり、仕事を手放すことが苦手な傾向にあります。これは、「自分でやる」ことが役割のプレイヤーの段階から、「指導する」ことが役割のマネージャーの段階へを移行する時に、かなり大きな課題となります。

その仕事にふさわしい人に責任を委譲するのではなく、「自分がやればほんの数分の作業だし、他の人よりもうまく、速くできるから」と、つい自分でやってしまいます。この考えはある意味正しく、そして真実なのかもしれません。しかし、人を指導する立場なのであれば、そのようなことをする時間はないでしょう

繁忙期などはさておき、通常の時期であれば、自分にしかできない仕事をするための、貴重な時間しかないはずです。作業の大小に関わらず、まず最初に「この仕事は自分以外の人にもできるか?」と自問してください。答えが「できる」であれば、適切な人に委任しましょう。

自分の仕事をうまくコントロールできるようになれば、他人に"迷惑"をかけることなく、上手に仕事を任せられるようになります。相手にとって理想的なタイミングでなくても、仕事を頼むこと自体は悪いことではありません。つい自分でやりたくなる気持ちに負けないようにしましょう。

パソコンが壊れた時は、自分で修理するのではなくITの部署にメールしてください。会議の調整をしなければならない時は、アシスタントに頼みましょう。プレゼン資料をまとめなければならない時は、それぞれの部門の責任者に任せてください。さもなければ、自分の組織のためにリーダーシップを発揮したり、戦略的に働くことができる、貴重な時間やエネルギーを失うことになります。

Stop Being a People-Pleaser | Harvard Business Review

Elizabeth Grace Saunders(原文/訳:的野裕子)

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