誰もがそうだと思いますが、私もネタバレが大嫌いなので、映画のことを書くときとても注意しています。そうは言っても、この映画にはタイムトラベルが出てくるとわかるだけで、タイムトラベルがストーリーの後の方に出てくる場合にはネタバレになってしまうことがあります。

今回ご紹介する映画は傑作なので「仕掛けはタイムトラベルだ」ということがバレてしまっても楽しめます。しかし、本気でネタバレが嫌なら、この記事を読むときは気をつけて。予告編を観るときは自己責任でお願いします。

タイムトラベル(時間旅行)は作家にとっては、最も興味深いプロット技法の1つです。タイムループを取り入れたり、過去を変えたり、未来の出来事を防いだり、タイムトラベルはずいぶんいろんなストーリーに使えます。

もちろん、タイムトラベルの要素さえあれば良い映画だと言いたいわけではありません。タイムトラベルを効果的に使うには、コンセプト上で新しいアングルを模索したり観客が満足するような感情的な体験を提供しなければいけません。

傑作と駄作を選り分けるのは大変なので、あなあたの代わりにやってみました。ここでご紹介するのはタイムトラベル映画の中のベスト10で、どれもが他のありふれたタイムトラベル映画とは良い意味で一線を画しています。なお、評価の目安として、ロッテントマト(主に英語圏で圧倒的に信頼されている映画批評サイト)のレーティングを掲載しています。

プリデスティネーション(2014年、原題:Predestination)

ロッテントマトのレーティング:84%

タイムトラベルする時空エージェントの人生の物語。最後の任務で、彼はあらゆる時間を股にかけて逃亡する1人の犯罪者を追跡することになる。

出だしは少しゆっくりしていますが、『プレデスティネーション』ほどドキドキさせてくれた映画は他にありません。プロットはひねりをきかせ、激しく展開しますが、エンディングに至り全体の流れを振り返ると、観客を満足させる形で全ての意味がつながります。

正直言って、ひねりのいくつかは予測がつき、あらかじめ次に起こることががわかりますが、そうしたひねりは意図的に観客が予見できるようにしてあるのだと思います。観客は自分でいろいろ気が付いたと思っているでしょうけれど、この映画は観客の3歩先を行っています。

しかし、それ以上に大切なことは、映画の筋を先回って当ててやろうとするよりもこの映画をただ楽しんで観てほしいのです。物語は素晴らしいの一言なので、自分で自分にネタバレをしないでおきましょう。

タイムシャッフル(2014年、原題:Time Lapse)

ロッテントマトのレーティング:77%

友達の3人組が24時間後の未来の写真を撮影する不思議な装置を発見して、利己的な目的で使うことをたくらむが、気になる危険な画像が映し出される。

私はつい先ほど『タイムシャッフル』を観終わったところで、言葉を失っています。だからと言って、これが私の空前のお気に入りの映画だと考えているとは思わないでください。そういうわけではないのです。しかし、この映画が素晴らしい形で私の期待を上回るものであることは認めざるを得ません。

出だしは話の展開がゆっくりで先が予測できそうですが、最後までそういうわけではなく、最後は何度もひねりを効かせたプロットに観客は打ちのめされます。しかし、この映画の良いところは「未来を覗く」というアイデアを取り入れて、それを劇中で大変うまく使っているところです。その結果、途中から急展開して最後まで緊張が途切れることがありません。

この映画には低予算の自主制作映画かと感じさせる部分があり、俳優陣の演技は完璧からは程遠いものであることを予めお伝えしておきます。しかし、だからと言って、そのせいでこの映画は観るに耐えないというわけではありません。

プライマー(2004年、原題:Primer)

ロッテントマトのレーティング:72%

4人のエンジニアが偶然タイムマシンを発明してしまう。

タイムトラベル映画のことを語るときに欠かせないのが『プライマー』です。77分の短い映画ですが、『プライマー』はプロットがとても濃いので、多くの人がこの映画を究極のタイムトラベル映画と見なしています。現時点では、『プライマー』を見ずしてタイムトラベル映画は語れないというぐらい、ほとんど通過儀礼的存在になっています。

それでは、どのぐらい濃密なのでしょうか。いくつかの娯楽理論によれば、この映画の背景で2つの別々な話が進行しており、そのどちらもスクリーンには出てきませんが、本筋の物語に影響を与えたり操ったりしています。

言うならば、『プライマー』は従来通りの映画というよりは脳のエクササイズであり、それもかなり負荷の高いエクササイズです。ぜひ観てみてください。これほど複雑に入り組んだ映画は他にありません。

タイム・クライムス(2007年、原題:Timecrimes)

ロッテントマトのレーティング:88%

ある男が偶然タイムマシンに乗り込み、約1時間前の過去に戻ってしまう。そこで自分自身と出会ったのが災難の始まり。結末が予測不可能な数々の災難に遭遇する。

『タイム・クライムス』は実はスペイン映画の『Los cronocrímenes』です。だから、スペイン語がわからないなら字幕で見なければなりません。でも、何という映画でしょう。

『タイム・クライムス』で私が一番好きなのは、観客の裏を書こうとしないところです。タイムマシンに対して独特なスタンスを取っており、ストーリー上できる限り早々とタイムマシンの説明をして、その後はストーリーを然るべき形で展開させます。

姑息なひねりもなければ、妙なストーリーの矛盾もありません。時空を旅して戻ってくることと、一貫した法則の下で、物事がどのように現実的に展開するかをただ正直な目でとらえています。

トライアングル(2009年、原題:Triangle)

ロッテントマトのレーティング:82%

魔のバミューダ―トライアングルをヨットで航海中の乗客達は不思議な天候に足止めされ別の船に乗り移らざるを得なくなるが、その結果さらに大きな惨事に遭遇する。

「タイムトラベルサスペンス」としては、『トライアングル』は最高傑作の1つ。独特の雰囲気で、サスペンスに満ち、不気味な場面が散見される。そして、全ては伝説のバミューダ―トライアングルにより生じた一種のタイムループにかかっている。

ネタバレが怖いので多くは語らないことにしますが、『トライアングル』は驚くほど感情に訴えかけるエンディングのおかげで強烈な映画になっています。ストーリーの矛盾点に1つか2つ気付くかもしれませんが、この映画の主旨は、観る人をゾクゾクさせることなので、その点で極めて成功しています。

ルーパー(2012年、原題:Looper)

ロッテントマトのレーティング:93%

西暦2074年、犯罪組織は抹殺したい人物を過去に送り、そこでジョーのような雇われガンマンが待ち受けている。ジョーはある日その犯罪組織が未来の自分を暗殺すべく過去に送り、「ループを閉じようとしている」ことを知る。

映画『インセプション』が、その独創的な夢と現実の追求で大衆を釘付けにしたので、私を含めた多くの人がその後『ルーパー』の封切りでは大騒ぎしましたが、『ルーパー』も観客に同じようなドキドキ体験を約束しました。

『インセプション』の方がはるかに良い映画ですし、『ルーパー』が宣伝に相応しいレベルまで達していないので、多くの観客を失望させることになりました。今になって振り返ってみると、そうは言っても、封切前の期待を横においてみれば、『ルーパー』は実は堅実な映画です。

この映画の中のタイムトラベルは登場人物のやり取りのむしろ背景でしかなく、この点こそこの映画で私が気に入っているところです。「ループする」場は何も特別なものではありませんでした。よって、映画を満足のいく域までもっていったのは登場人物たちでした。

インターステラー(2014年、原題:Interstellar)

ロッテントマトのレーティング:72%

人類の存続をかけて宇宙のワームホールを通って旅する探索チームの物語。

『インターステラー』は過去四半世紀で、いや、もしかしたら映画史上でも最高の映画の1つです(誰に意見を聞くかにもよりますが)。特殊効果が素晴らしく、物語上の世界の構築は空想的でありながらもしっかりと本物の物理学に根差していますし、登場人物のクーパー(マシュー・マコノヒー)の感情の移り変わりが実に巧みに描かれています。

この映画ではタイムトラベルは「タイムトラベル」という言葉を耳にするときにふだん思い描くものとは違っていますが、それでも構いません。登場人物や俳優の演技、音楽、特殊効果がこの映画を素晴らしいものにしているからです。実際に、プロット以外は全てが素晴らしいです。プロットはとりあえずあるのですが、他の全てがそれぞれのキャンバスの上で輝きを放っています。

『インターステラー』は生命についてあらためて考えさせるような映画です。教訓じみてはいませんが、人間のありようについて強い共感を呼ぶのでこの映画を観て影響を受けずにいるのはほとんど不可能です。だからこそ、この映画は大変長い間、映画における最高の功績の1つなのです。

オール・ユー・ニード・イズ・キル(2014年、原題:Edge of Tomorrow)

ロッテントマトのレーティング:90%

ある兵士が時間を操り未来を知ることができる地球外侵略者との宇宙戦争に巻き込まれる。兵士は自分も同じ力を手に入れると、特殊部隊の戦士と協力して宇宙戦争を終結させようとする。

『オール・ユー・ニード・イズ・キル』はタイムトラベルの中の「タイムループ」というカテゴリーに分類される映画ですが、同じ日を何千回も繰り返えして生きることを強いられた人間の精神的ストレスと感情的なストレスの追求のような新しいこともいくつか試みています。

『恋はデジャヴ』で劇中のビル・マーレーがエイリアンの侵略と戦ったら、この映画みたいになるでしょう。タイムトラベルは出てくるものの、『オール・ユー・ニード・イズ・キル』は深刻な映画ではなくて、健全な分量のコメディとロマンスも出てくるのですが、だからと言ってそのせいで緊張感が無くなったりプロットから外れたりはしません。タイムトラベルが主人公に与える影響を追いかけていくには、どちらが欠けてもいけません。

私の唯一の不満は、エンディングです。しかし、そうであっても、この映画を気に入っているので推薦します。これと似たような映画をもっと観たいなら、『ミッション:8ミニッツ』(原題:Source Code)もチェックしてみてください。

12モンキーズ(1995年、原題:12 Monkeys)

ロッテントマトのレーティング:88%

伝染病により荒廃した未来の世界で、地球上のほぼ全人類を滅亡させた人工ウィルスに関する情報を収集するために1人の囚人が過去に送られる。

『12モンキーズ』は直接タイムトラベルに関わるドキドキするプロットのひねりを見せてくれる最初の人気映画として画期的な映画です。こんなに変なタイトルがついているのは残念です。このせいで多くの人がこの映画を観逃すことになっていることは疑いの余地がありません。

『12モンキーズ』は『ブレード・ランナー』を彷彿とさせるフィルム・ノワール風の暗黒映画で、この2つは最高の未来アクション映画です。ストーリーは観客を夢中にさせて、興行成績は最高でした。そしてエンディングはわかりにくいプロットの救いになっています。

余談ですが、『12モンキーズ』は最近テレビ版が放送されましたが、最初のエピソードをいくつかやり過ごせば一度ぐらい観るのもそれほど悪くないようです。

バック・トゥ・ザ・フューチャー(1985年、原題:Back to the Future)

ロッテントマトのレーティング:96%

友人のエメット・ブラウン博士が発明したタイムトラベル車のデロリアンで誤って30年前に送られてしまった青年は、当時高校生だった自分の両親を結び付けて、2人の間に誕生する自分の存在を確かなものにしなければならなくなる。

今まで一度も『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を見たことがない人がいるでしょうか。この映画はとても人気があるので映画を観ていない人でも「マーティー・マクフライ」、「ブラウン博士」、「デロリアン」という言葉は知っています。多くの意味で、この映画はタイム・トラベル映画のマスコット的存在です。まだ観ていないなら、今すぐご覧ください。

The Best Time Travel Movies of All Time | makeuseof.com

Joel Lee(原文/訳:春野ユリ)

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