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ジゴワットレポート

映画とか、特撮とか、その時感じたこととか。思いは言葉に。

感想『風都探偵』単行本1&2巻。ページをめくる度に実感できる、再び『W』を楽しめる喜び

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2018年3月、ついに漫画『風都探偵』の単行本(1,2巻)が発売された。

 

オリジナルスタッフによる正統続編という夢のような一報から、あれよあれよという間に連載が始まり、オリジナルWキャストが表紙を飾ったスピリッツに狂喜乱舞し、気付いたら単行本まで辿り着いていた。

いまだに、『仮面ライダーW』の続編がリアルタイムで進行していることが信じられない。

 

週刊ビッグコミックスピリッツ 2017年44号(2017年10月2日発売) [雑誌]

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思えば、平成仮面ライダーは、シリーズ当初「続編」という感覚とは無縁の存在だった。

 

先輩ライダーに鍛えられ・共闘する流れを汲んでいた昭和ライダーとは異なり、原則として「一作品完結」で、前後の作品がリンクすることは無い。これが、『電王&キバ』で覆され、『ディケイド』が大きな変化をもたらす。その後、OV展開やその他諸々のメディア展開が活発になり、「続編」に限らず、「スピンオフ」「レジェンド出演」という多彩な土壌が整っていった。

 

また、「平成ライダーの漫画」というと、『龍騎』のTVSPコミカライズ、現行だと『クウガ』の新解釈版が挙げられるだろう。

 

仮面ライダー龍騎13RID

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仮面ライダークウガ1(ヒーローズコミックス)

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しかしいずれも、いわゆる「パラレル」の文脈に成り立つもので、本編と地続きという性格が強いものではない。

 

natalie.mu

 

その流れを考えるに、『風都探偵』という作品がいかに特殊で、いかにスペシャルかは、もはや言わずもがなであろう。

 

平成ライダーは、グッズ商法や音楽展開など、数々のコンテンツの幅を生み出してきたが、ここにきて「正統続編を漫画でやる」という事例が持ち込まれたのだ。

しかも、プロデューサー・脚本・クリーチャーデザインがそれぞれ続投するという、驚異の布陣。これで高まらない訳がない。

 

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新連載の1話が掲載されたスピリッツの発売日、胸を躍らせてコンビニに向かったのを今でも鮮明に覚えている。

 

すぐにレジに持って行って、家に帰るまで待てなくて車の中でページをめくる。カラーの風都タワーが目に入り、「あのイントロ」が無条件で脳内再生されるワクワク感。

実際に読み進めてみると、翔太郎もフィリップも、あのキャラクターとあの声とあの演技のままで頭にインプットされていく。「このセリフ!この言い回し!まさに翔太郎!まさにフィリップ!」。三条さんが脚本を書いているので当たり前なのだが、それでも、頭を撃ち抜かれたような衝撃が走った。

 

漫画を読んでいるのに、不思議と、「あの頃」の『仮面ライダーW』を観ていた自分に巻き戻っていくのだ。

「漫画を読む」と「テレビを観る」が同じ情報で脳に入り込んでくるという、中々味わうことのできない感覚。奇妙な痛快さ。『風都探偵』は、そんな戸惑いすら覚える感動を教えてくれた。

 

風都探偵 1 (ビッグコミックス)

 

キャラクターデザインについて、翔太郎とフィリップを必要以上に実際の2人に寄せていないあたり、私の中で非常に好感度が高い。

 

フィリップは「真・ヒロイン」のポジションも担っているので、より魔少年に、美形に、中性的に調整されている。

特筆すべきは翔太郎で、説明不要の『探偵物語』松田優作っぽいアレンジが加えられており、素晴らしいの一言に尽きる。

 

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「実際の2人にあまり寄せない」という判断は、この漫画版が本編の補完的な位置づけではなく、あくまで「メディアを移しての正統続編」であることを表明する重要なアイコンになっていると、そう思うのだ。

漫画でやるのだから、より漫画に似合う形に。より漫画で活きるデザインに。 

 

その意味でいくと、「漫画だからできる表現」に果敢に挑んでいるのも、非常に興味深い。

新たな敵幹部オーロラ・ドーパントは、手がフワフワとしたまるで実体が無いかのようなデザインに設定されている。これをもし実写でやるとカットごとにCG合成が発生してしまうことは、容易に想像できる。

また、敵幹部らしきブラキオサウルス・ドーパントも、ビルの谷間に出現する巨体という描写がされている。2巻の巻末付録によると元はそうでは無かったようだが、これも映像作品ならではの資金的・技術的制約から解き放たれた結果と言えるだろう。

 

同様に、「街が別次元の風都に入れ替わる」「数十匹の猫が一ヵ所に集う」といった、実際の撮影では困難が予想されるシーンも多数用意されており、キャラクター・クリーチャーデザインに続き、敵の能力や話運びさえも、「漫画ならでは」が意欲的に盛り込まれている。

 

こういった姿勢が、『W』のファンとしては非常に嬉しい。

単にTVシリーズを漫画に落とし込むような作品ではない。正統なる続編として、漫画でしかできない表現、漫画というフィールドでこそポテンシャルを最大限に発揮できるストーリーが、次々と現れる。「堅実さと攻め気」が同居するこのバランスは、間違いなく『W』そのものだ。

 

風都探偵 2 (ビッグコミックス)

 

加えて、物語もしっかり「続編」としての魅力を兼ね備えている。

 

TVシリーズ本編はフィリップの出生の謎を本筋に置きながら、『ジョジョ』のような能力バトルと旧来のヒーロー活劇をミックスした作りだったが、フィリップ関連のあれこれはご承知のように完全に解決を迎えている。園崎家も、もちろん壊滅した。

そこからのバトンとして、別次元に存在する「裏風都」と、そこから迷い込んだ記憶の無い少女・ときめを配置。彼女と翔太郎に男女の関係を匂わせるのも新風として面白いし、ときめが彼らを理解していく構図が、『風都探偵』で初めて『W』に触れた人にも優しい。

 

TV雑誌の『風都探偵』スタッフインタビューで語られていたが、『W』は、TVシリーズ1&2話のフォーマットが「初回」として完成されている。だからこそ『風都探偵』も、それを踏襲して「初回」を作っているのだ。

 

「初めて探偵コンビとWと出会う」という鳴海亜樹子、「記憶が無く今後の縦筋を予感させる存在」としてのフィリップ、「人をたぶらかす魔性の女」としての津村真里奈。この3人の役割を、ときめという新キャラクターにすべて担わせる。

もちろんのように「二転三転する犯人予想」「翔太郎とフィリップの喧嘩」「サイクロンジョーカーからルナを披露してのもう一度サイクロンジョーカーで必殺技」あたりも継承され、間違いなく『W』の「初回」として仕上がったロード・ドーパント編は、正統続編として堂々とした仕上がりであった。

 

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・・・といった、「こういうポイントが良い」「ここが素晴らしい」等々を語ると、本当にきりが無い。

しかし、『風都探偵』に覚える本質的な感動は、そういった部分的な要素ではない。

 

私は放送当時大学生だったが、徹夜麻雀明けで眠い目をこすりながら観た『W』を、バイト代でドーパントメモリを買って遊んだ『W』を、劇場版を観て感涙した『W』を、この平成も終わる2018年にまたリアルタイムで楽しんでいる。

 

この感動、一点に尽きる。

 

「この曲を聴くとあの頃・あの場所を思い出す」という話はよく語られるが、同じように、TV番組にも記憶を鮮明に掘り起こす力がある。『W』をリアルタイムで観ていた頃の、自分の生活、その時にあったこと、出会った人、学んだこと。『風都探偵』は、それらを驚くほど鮮明に蘇らせてくれる。

「それ自体」なので本当は適切な表現ではないのだけど、それほどに、「再現性」が高いのだ。単にドラマの内容が漫画で「再現」されているのではなく、その作品を楽しむ受け手に対するアプローチ(作り手の姿勢)の「再現」だ。

いや、むしろ「再演」と言った方が適当かもしれない。

 

この2018年に、『仮面ライダーW』が毎週楽しめる!こんなに幸せなことがあるだろうか!

 

ページをめくる度に小さな感動が訪れるこの『風都探偵』の連載が、今後もたっぷりと続くよう、一介のファンとして切に願っている。

そして、『風都探偵』を立ち上げ、創り上げてくれたスタッフの皆さんに、心からの感謝を伝えたい。この作品の感想は、どれだけ長々と語ろうとも、結局は「感謝」の二文字に集約されるのだ。

 

風都探偵 1 (ビッグコミックス)

風都探偵 1 (ビッグコミックス)

 
風都探偵 2 (ビッグコミックス)

風都探偵 2 (ビッグコミックス)

 

 

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