総務省が6月21日に開催した電気通信市場検証会議(第37回)にて、NTTドコモとNTTレゾナントの合併について、ドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイル、MVNO委員会が見解を表明した。ここでは同会議で提出された資料から、要点をまとめる。
ドコモは、多様なニーズに応えるサービスを提供するために、7月1日付で子会社のレゾナントを吸収合併。レゾナントが提供している「OCN 光」や「OCN モバイル ONE」などのサービスはドコモが継続して提供する。
ドコモは現状の課題として、ライトユーザー向けのプランを提供できていないことを挙げる。小容量帯のプランはエコノミーMVNOでカバーしているが、エコノミーMVNOはドコモブランドのサービスに比べてサポートが十分でなく、シニアのライトユーザー層など、サポートが必要なユーザーに届けにくいことも課題に挙げている。
そこで新たなライトユーザーを獲得すべく、レゾナントをドコモに統合し、ドコモブランドで新たなライトユーザー向けプラン「irumo」を提供する。irumo、eximo、ahamoの3プランで、ライトユーザーからヘビーユーザーまで、多様なニーズに応えることを目指す。
なお、レゾナントを統合するに当たっては、法令を順守するとともに、公正競争に十分配慮するとしている。
OCN モバイル ONEは、MVNEのNTTコミュニケーションズがMNOのドコモに再卸をする形になるため、この取引形態を早期に解消すべく、OCN モバイル ONEの新規受付は停止し、ドコモへの移行を促進させていく。エコノミーMVNOであるトーンモバイル(フリービット)とLIBMO(TOKAIコミュニケーションズ)の提供は継続し、新たなMVNOの追加も要望に応じて協議するとしている。また、エコノミーMVNOの営業情報をドコモが自ら提供するプランの販売促進などに活用しないことも加えている。
一方、他の3キャリアやMVNO委員会は、レゾナントがドコモに統合されることの懸念点を挙げている。
KDDIは、NTTレゾナントがNTTコミュニケーションズからコンシューマー向け事業を移管されたことで、ドコモの禁止行為規制対象事業者に指定されたことに言及。そのレゾナントがドコモと合併することで市場支配力が強化され、公正競争に弊害をもたらす恐れがあると指摘する。そこで、事例ごとに公正競争に与える影響を検証する必要があることを要望した。
ソフトバンクは、レゾナントの統合は、NTTコミュニケーションズの事業やインフラを段階的にドコモに集約していることになり、公正競争に与える影響や必要な措置の議論が不十分なまま進むことを懸念する。
楽天モバイルは、ドコモがOCN モバイル ONEを承継することに関し、MVNOの接続関連情報が他の目的で活用されてしまうことを懸念する。例えば、NTTコミュニケーションズの卸先MVNOのサービス開発や経営戦略などの情報が、ドコモの営業部門に流入して活用される、といったことが想定される。
また、レゾナントがドコモに統合されることで、禁止行為規制対象事業者の1社が消滅する。その際、ドコモがOCN モバイル ONEに対して不当に優遇したとしても、その有無を確認することが困難になることも指摘する。
NTTグループの禁止行為規制を潜脱する可能性について、十分検証せずに、ドコモとレゾナントの合併が実行することも懸念点に挙げた。合併などで連携を強化する場合、事前に検証することを要望した。
テレコムサービス協会のMVNO委員会は、MNOとMVNOの接続情報には、5G SA対応などを見据えた、イノベーションに関わる情報が含まれることから、接続情報の目的外利用の禁止はいっそう重要になるとの見解を示す。
その上で、ドコモとレゾナントの合併は、市場競争への影響が懸念されるとみる。合併後は、レゾナントが禁止行為規制の対象から外れてしまうため、これまで接続部門のみが知り得た情報をドコモ全体で活用することが想定される。そうなると、独立系MVNOとドコモとの競争に影響する恐れがあると指摘する。
また、ドコモの新料金プラン(irumo)は独立系MVNOのプランと料金が近いため、ドコモと独立系MVNO間のイコールフッティング(条件を同一にすること)を確保するためには、接続料や利用者料金が適切なのかを検証するスタックテストが必要だと訴えた。
レゾナントの統合はエコノミーMVNOにも影響があるとの見解で、例えばirumoを訴求することで、エコノミーMVNOの販売拡大に大きな影響を受ける可能性があると危惧している。
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