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<社説>新幹線延伸遅れ 地元への配慮欠かせぬ

 北海道新幹線の新函館北斗―札幌間の開業が2038年度以降にずれ込むことになった。
 建設主体の鉄道建設・運輸施設整備支援機構は、30年度末の開業を断念していた。
 トンネル掘削の難工事が続いている上、貫通後の工事も人手不足などで当初の見込み通りに進みそうにないためだ。
 延伸区間はトンネルが8割を占める。現地の地層は火山活動などの影響により非常に複雑な構造で、事前に詳細を把握するのは困難だったという。
 延伸区間の工事現場では、死亡事故がこれまでに6件発生している。工事は安全かつ着実に進めてもらいたい。
 延伸は沿線のまちづくりに直結し、経済効果への期待は高いだけに地元の落胆も大きい。
 開業延期による地元の負担増などをできるだけ軽減するよう、国は配慮すべきだ。
 延伸区間の事業費は資材や人件費の高騰などで当初より4割増の2兆3千億円と見込まれている。工期延長で費用はさらに膨らみかねない。開業が1年遅れた北陸新幹線の金沢―敦賀間より影響は格段に大きい。
 沿線自治体には工期延長による地元負担金の増加を懸念する声が多い。駅周辺の再開発事業も延期や再検討を余儀なくされるおそれがある。
 事業費の地元負担を巡っては、一部についてJR北海道などが支払う貸付料を活用した軽減策が取り入れられている。
 開業延期に伴う地元の負担増や損害についても、国は同様の対策を講じる必要があろう。
 JR北海道は30年度末の札幌開業を前提として、31年度の経営自立を目指しているが、見直しが避けられない。
 車両などの設備投資や人材育成にも影響する。現場の士気低下も心配される。当面は新幹線に頼らない経営改善策を自力で打ち出すことが肝要だ。
 現在は30年度までとなっている国による支援の枠組みも、再構築することが求められる。
 バス転換が決まっている並行在来線の函館線長万部―小樽間は、引き続き住民や観光客の大切な足となる。バスの運転手不足が深刻化する中、存続も排除せずに公共交通のあり方を議論すべきではないか。
 昨年は後志管内黒松内町のトンネル工事現場近くで、川の水枯れが発生した。鉄道・運輸機構は工事が原因である可能性が高いとみている。
 川の水量減少は同管内ニセコ町の工事現場近くでも確認されている。環境保全への十分な対応に努めなくてはならない。
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