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料理研究家ってどうやってレシピつくってるの?こだわりのモノづくりの裏側を聞いてみた

「おうちで簡単」を生み出すのは簡単なのか!? 時短レシピが好評の料理家・ジョーさん。に、レシピ発表の裏側やバズるようになるまでの経緯について伺うと、ユーザーに対する優しく熱い思いが見えてきました。

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近頃、SNSでもよく料理のレシピを見かけますよね。「おうちで簡単」とか、「時短」とか銘打っていて、ものすごい数の「いいね」を集めると「バズレシピ」なんて呼ばれたり。

 

こうしたレシピは、いったいどのように生み出されているんでしょう? ひらめきであっさりなのか、実は大変な試行錯誤があるのか。

 

そこで今回お話をお伺いしたのが、約26万人ものTwitterフォロワー数(2021年1月19日現在)を誇る料理研究家「ジョーさん。」。

 

ひとたびレシピを投稿すれば、数千、時には数万の「いいね」がつくこともザラであり、料理本の出版やテレビ出演などその活躍の場を広げています。

www.kadokawa.co.jp

 

日々膨大な数のレシピが世に発表される中、ジョーさん。はいかにして人々に支持されるレシピを生み出してきたのでしょうか?

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レシピの考案方法や料理撮影のノウハウ、さらには無名の存在からメディアで活躍する料理家になった経緯まで、話題の料理研究家の裏側に迫りました。

 

※本インタビューは2020年12月下旬に、感染症予防対策を徹底した上で実施しています。

 

ジョーさん。直伝!「レンジで作れる一番濃厚なカルボナーラ」

 

とにかく料理していただかないと始まらないので、ご自身がTwitterで発表した中でもっともバズったレシピを作っていただきましょう! こちら、約29万「いいね」を獲得(※2021年1月14日現在)した「レンジで作れる一番濃厚なカルボナーラ」です!(ちなみに先ほどご紹介したレシピ本にも収録されています)

 

【材料】(1人分)

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  • スパゲティ 1束(100g)
  • ハーフベーコン 1パック(40g)
  • 粗びき黒こしょう 小さじ1/4

A

  • 水 250ml
  • チューブにんにく 3cm
  • 顆粒コンソメ 小さじ1

B

  • ピザ用チーズ 大さじ5程度(40g)
  • 卵 2個
  • オリーブオイル 小さじ1

 

【作り方】

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ハーフベーコンを1cm幅に切っていきます。

 

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深さのある耐熱容器に、まずは半分に折ったスパゲティ。

 

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続いて先ほどのハーフベーコンを入れ、

 

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にんにくと顆粒コンソメも加え、

 

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水を注ぎ入れたら、

 

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軽く混ぜ合わせます。

 

f:id:Meshi2_IB:20210115164601j:plainそうしたら、フタやラップはせずに容器をレンジへ。加熱時間は「スパゲティの袋にあるゆで時間+3分(600Wの場合)」です。

 

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加熱を待つ間にBの材料でソースの準備です。ボウルに卵を2個割り入れます。

 

「ずいぶん色が鮮やかな卵ですね」と感想を述べると、ジョーさん。からは「見栄えを考えて、そういう卵を選んでます」との答え。細かいところまで気が配られていました。

 

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さらにオリーブオイルとピザ用チーズを加えてかき混ぜます。

 

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そして、加熱した熱々の容器の中身をボウルに入れるのですが、ここがポイント! 投入直後は何もせず10秒ほど待ちます

 

ジョーさん。に理由を聞くと「いきなり混ぜると卵が一部固まってしまい、ソース状にならないからです」とのことでした。う~ん、深い!

 

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ちゃんと待ちましたか? ではかき混ぜてくださいね。

 

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さあ、あとは手早くお皿に盛りつけて、粗びき黒こしょうを振りかければ……、

 

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ジョーさん。直伝の「レンジで作れる一番濃厚なカルボナーラ」の完成です!

 

試食させてもらうと、ソースがまったりとスパゲティに絡みつき全体をしっかりコーティングしています。ほのかなにんにくの風味と、チーズと卵のコクが渾然一体となり、シンプルな味つけながらどっしりしていて旨味も十分。

 

時々ベーコンと粗びき黒こしょうが舌を刺激し味に抑揚をつけます。知らずに食べたら電子レンジで作ったとはとても思えない本格的な味わいでした。

 

調理と撮影、その舞台裏はどうなっていたのか?

 

洗練されたプロの手際は素人からすると一見簡単そうに見えます。

 

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ジョーさん。のレシピや調理を見て、中には「これなら、自分にもレシピ作って紹介とか簡単にできそう」と思われた料理好きの方もいらっしゃるかもしれません。実際のところはどうなのでしょうか。

 

その舞台裏を見てみるため、調理スタートのさらに前まで時間を戻してみましょう。

 

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準備はなんと天板選びから始まっていました。ジョーさん。の自宅兼キッチンスタジオにもともとあるのは黒のダイニングテーブル。料理に合わせて天板の装飾を考えます。

 

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選ばれたのは以前アメリカの建築現場で足場材として使用されていた板を加工したもの。風合いがカッコイイ!

 

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そして時間を早送りして、また調理終了後のところに戻り、撮影の様子を追っていきます。

 

取材日の天気は曇り。自然光がある程度一定しているため、露出の調整は不要ということで、フラッシュなしで行われています。光を柔らかくするために、窓は撮影用のトレーシングペーパーで覆われていました。

 

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撮影用のランチョンマットも吟味します。このための布だけで100枚以上お持ちとのこと。

 

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食器やカトラリーはいわずもがな。今回の撮影対象はカルボナーラということで、黄色が映えるよう、お皿は補色(色相環で正反対に位置する色)に近い青系をチョイス。

 

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盛りつけはもっとも重要な要素の一つ。箸でベーコンの散らばり具合やスパゲティの方向を一つひとつ丁寧に整えていきます。メディアによっては「ロングパスタの端っこはすべて隠して欲しい」と要求されることもあるそうです。

 

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そして撮っていただいたのがこちらのカット。なんとも美しく、おいしそうな写真です。ちなみに、先ほどの料理完成時の写真もジョーさん。によるものです。

 

「あれ、ランチョンマットはどこ行った?」と思った方。

 

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鋭いご指摘です。

 

最初はマットありで撮影していたのですが、しっくりこないということで外されました。それに合わせて、実はフォークもアンティークのものに交換されているんです。

 

当初のアイデアに固執せず、現場状況に合わせて軽やかに変更していきます。

 

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料理のシズル感が失われないよう、盛りつけ前のお皿選び〜撮影まで基本的に10分ほどで終えるようにしているとのこと。

 

しかし短い時間の中に、多くの労力と神経が注ぎ込まれていました。よりおいしそうな写真を撮るために、カメラや周辺機材にもこだわり、気づけばどんどん増えていってしまっているとのこと。

 

では、ごくシンプルに見えるジョーさん。のレシピの方はどうでしょうか? こちらにも想像以上の秘密が隠されていました。

 

数多ある競合レシピとの差別化は?

 

──実はこれが今回いちばんお聞きしたかったことなんですが、定番料理ってすでにたくさんのレシピがありますよね。それらとどう差別化というか、ジョーさん。風に味つけをしていくんですか?

 

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ジョーさん。(以下、ジョー):例えばカルボナーラだと電子レンジレシピだけでもたくさんありますよね。でも調べてみると「誰に向けてのレシピなんだろう?」みたいなものが多いんですよ。

 

──えっ、レシピからそんなことまで読み解いているんですか?

 

ジョー:例えば「こだわりはバターとチーズと生クリームを使ってレンジでチンです!」といったレシピを見ると、「ん? そこまで凝った具材を使う人なら、多分調理方法もこだわるし、スパゲティゆでるよね」みたいな違和感があることが多くて。

 

──なるほど。そう指摘されると、こだわりどころがちぐはぐな感じがします。

 

ジョー:そもそもカルボナーラってもっとシンプルなはずなんですよ。イタリアでは生クリームやバターなんて絶対使わないし、ましてや、今回使ったにんにくやスパゲティのようなロングパスタですら使わない。

 

──そうなんですか!?

 

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ジョー:要はイタリアの「卵かけご飯」なんですよ。チーズと卵の相性さえ良ければおいしい。ゆで汁を上手に使ったり、多少のコツはあるんですけど、「そもそも」に立ち返れば「生クリームもバターもいらないじゃん」と思ってて。だから僕のレシピでは味はもうコンソメにお任せして、後は卵かけご飯を作るという難易度で考えちゃうんです。

 

──そう教えてもらうとカルボナーラを見る視点がガラッと変わってくる!

 

ジョー:僕、電子レンジレシピをたくさん出してるんですね。理由は、お米を炊くとか朝に夕飯の準備してから家を出るのって、マメな人以外には難しいから。準備できずに家を出て、帰宅して、一から料理するのは大変です。でも、電子レンジレシピであれば、加熱している間に着替えを済ませたり、他のことに時間が使えますよね。

 

──お風呂の準備なんかもできちゃいますね。

 

ジョー:そういう風にレシピを使ってもらえたらなと。なので、「思い描くターゲットにいかに寄せていくか?」を考えて時短レシピを作っています。差別化という点ではここがポイントになるでしょうか。

 

食卓を共にする「家族」にレシピを届けたい

 

──「ターゲット」という言葉が出てきましたが、どんな方を想定されているのかもう少し教えていただけますか?

 

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ジョー:僕の場合は、まず「家族」ですね。「家族」を癒したり大事にしたいという思いが、いちばん根っこにあります。

 

学生時代にある社会学の本を読んだんですけど、その前書きに「家族というのは食卓を共にする最小単位の集団であると定義する」とあって……。

 

──なかなか興味深い定義ですね。

 

ジョー:他人だって食卓を共にした瞬間に一回「家族」になるし、血縁でも離れていくこともある。僕はこの本でいうところの「家族」を特に大事にしたいし、レシピを届けたいですね。

 

──それはご自身のご家庭の影響などがあったのでしょうか? 

 

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ジョー:不幸せ……だったとは思わないし、いや、すごく恵まれた方だったと思うんです。だけど、うちは父が昔の人だったんで「男子厨房に入らず」というか、キッチンに立つ発想がないというか、母を全然手伝わない。

 

──ああ、わかります。私の父も「ザ・昭和のオヤジ」というタイプでしたから。

 

ジョー:母だけが外でもキッチンでもバタバタしているのを見て、「共働きなのになんか変だなぁ」と。「家族でもっと楽しく食卓を囲みたかったなぁ」という思いがありました。

 

なのでとにかく何かできないかと、炊飯器のスイッチを押すということから母の手伝いをはじめましたね。

 

──そこが原体験だったんですね。そして今、似た境遇の「家族」に対して、彼らがもっと良い余暇時間を過ごせるようにと思って時短レシピを出している。

 

ジョー:そうです。大変な思いをしている人には「もっと手抜きをした料理があるよ」、料理をどう始めていいかわからない人には「とっても簡単で時短なレシピがあるよ」って伝えたいですね。

 

“悩み”を種に、本当に役立つレシピを目指す

 

──新規のレシピはどういった時に考えつくんですか?

 

ジョー:種はいろんなとこにあるんですけど、みんなのお悩みの解決が先にきますね。「何に悩んでますか?」とか「冷蔵庫に今何が余ってますか?」とか、Twitterで聞いちゃうこともあります。

 

──フォロワーさんとのやり取りでレシピを紡ぎ出していくんですね。

 

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ジョー:「余っちゃう」っていうのもお悩みの一つなんですよね。すると「小松菜と納豆が余ってます!」みたいに返ってくるので、じゃあどうしようって落語の三題噺みたいに考えはじめます。お題から頭の中の引き出しを開けていく感じですかね。

 

──素材は決まりました。ではその後はどうレシピに落としましょう? 

 

ジョー:「何と組み合わせるか」「洋風か和風か」くらいの方向性まで決めて、次に食材名で検索して、1ページ目に出てくるレシピは全部さらいます。

 

「考えてるヤツはもう他の人がやっている」「このアイデアなら他のとはちょっと違うな」みたいな確認ですね。

 

──今は料理サイトもあるし、プロもアマもSNSでレシピを発表するから、膨大な数ありますもんね。

 

ジョー:とにかくパクリにはならないように気を付けます。そこまでインプットしてようやくレシピに書き出しますね。

 

──いきなり書き出しちゃうんですか! キッチンで食材を食べながら、ではなく?

 

ジョー:いきなりアウトプットします。多分食べながら作るのって、シェフのように専門性が高い方だと思います。彼らは未知の食材とかも扱うので、まず自分で食べてみるところがスタートになります。でも、僕の場合はあくまでも家庭向け。使う食材も基本的には誰もが知っているものなので、限られてくるんですよね。

 

──そうか、だからジョーさん。のレシピは身近にある食材と調味料しかでてこないんだ。

 

ジョー:特定のブランドのトマトで100点満点を目指すわけじゃなくて、普遍的なトマトで75点以上のレシピを書くのが僕の仕事なので。

 

──考え始めてレシピに書き出す間はどれくらいなんですか?

 

ジョー:いつも複数のレシピを考えてますけど。一つのレシピだけであれば20~30分じゃないですかね。

 

──その後はいよいよ試作ですね。

 

ジョー:試作して1、2回の修正か、一発で「もうオッケーじゃん!」ってなることも結構あります。家庭料理なので微細に作り込む必要がないんですよ。どのみち、各ご家庭でアレンジされちゃうんで。

 

──確かに、我が家でも「余りもの入れちゃえ!」はやりがちです。あと、そもそも食材でも調味料でも日本全国で少しずつ味が違いますもんね。

 

ジョー:そうですね。九州と東京じゃ醤油にしても味噌にしても違うし、じゃあどうすんだよって話で(笑)。

 

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ジョー:だから追い切れないものは初めから追ってもしょうがない。たまに「コレは使いたいな」というこだわり食材で迷うことはあるんですけど、結局アップするレシピは徹底して普遍的なものですね。

 

──あくまで、「どこで誰が作っても普通に作れておいしい」が目標がなんですね。

 

ジョー:はい。「一人暮らしの男の人が、引っ越ししたてのワンルームのキッチンで、近所の100円ショップでさっき買ったもので作れるご飯」という難易度にしたいと思っています。調味料プロデュースのお話をいただいたりもするんですが、普遍性を大事にしたいと考えると、お断りせざるを得ないんですよね……。

 

一つの“つぶやき”には膨大な知識と時間が濃縮されている

 

──Twitterを上手に使われているなというイメージがあるのですが。

 

ジョー:実は大学の時に本を出版してて、小説家だったんですよ。そっちで生きようとしていました。

 

──ええ! じゃあ、その時の経験が役に立っている!?

 

ジョー:役立ってますね。言葉への思いはすごく強いです。しかも文学部のドイツ語文学文化専攻だったので授業で本を読むし、文学部サークルにいたのでここでも読むし、おまけにゼミでも……。だから週に少なくとも3~4冊、多ければ7~8冊くらい読んでましたね。

 

──うわっ、しかもその合間に小説を書くための資料にも目を通すんですよね。

 

ジョー:映画も見なきゃいけなかった(笑)。それらの経験は絶対に生きてます。

 

──じゃあ、ジョーさん。のツイートは実はすごく推敲されてるんですね?

 

 

ジョー:推敲はしますね。膨大なインプットを活かしつつ、しかも若者に向けてきゅっとエッセンスにしているので、なかなか詰まった140文字になっていると思います。

 

──うわ~、ユーモラスで軽やかな文章なので、そこまで練り上げられているなんてぜんぜん想像してなかった!

 

ジョー:一つのつぶやきに2~30分ぐらいかけてます。1時間くらいのときもあるかな? 

 

──特にマクラの部分がおもしろいなぁという印象があるのですが。

 

ジョー:そこをおもしろがってもらわなきゃだし、レシピを「おいしそう!」「簡単そう!」って思ってもらうことは大前提。その上で、「こういう人に届いてほしい」「こういうシーンをイメージして料理を楽しく囲んでほしい」って思いを乗せられるのは、やっぱりマクラの紹介文なので、そこはすごく大事にしています。

 

無名の料理愛好家は、いかにしてプロの料理家になったのか?

 

──学生時代のお話が出たので、そこから料理家になるまでの経緯を教えてください。

 

ジョー:そのまま小説家になるつもりだったんですけど急に書けなくなっちゃって、小説家を辞めちゃったんですよ。

 

──ええっ、何その急展開!

 

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ジョー:しかもその時は就活期間も終わっちゃってて……、結局、卒業の3カ月後になんとか国内メーカーの営業職に滑り込みました。

 

──なにかとてもブラックな会社だったとお聞きしたのですが……。

 

ジョー:圧倒的なパワハラがありました。みんなの前で上司から怒鳴られるっていうのは毎日だったし、ネクタイを掴まれて裏に呼び出されたことも……。2年ぐらい在籍してましたけど、病院で鬱と診断されたので、辞めちゃいました。

 

──うわ~、それは酷い。

 

ジョー:その後は高校の時に留学経験があって英語はまぁできたので、英語を公用語にしている外資系の会社に1年ほど派遣社員で入れてもらいました。

 

──英語を仕事レベルで使える人材は日本だと貴重ですもんね。

 

ジョー:はい。「ここで実務経験を積んでおけば、他にいっても仕事はあるだろう」と。そうやってセーフティーネットを作った後、「やりたかったことに挑戦してみようかな」という気持ちで、やっと食関連の会社に入りました。

 

──そちらはどんな会社だったんですか?

 

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ジョー:今僕がやっている食関連のお仕事と全く同じです。雑誌に載せるレシピを考えたり、料理の写真や調理の動画を撮ったり、それを業務としてやっているようなところでした。ここで仕事に関する基本的な流れを教えて頂いた感じです。

 

──で、満を持して独立を?

 

ジョー:いやクビになったんです。正味3年ほどいたかなぁ。あるとき社長から退職勧告っぽいことをいわれたので「は、はい……」みたいな。

 

試行錯誤の日々と、あるレシピが呼び込んだ奇跡

 

──独立した、というかせざるを得なかったワケですが、その後はどう戦っていったんですか?

 

ジョー:最初は『タベタノ?』という自分のホームページを立ち上げて、そこにレシピをどんどん作りためました。いろんなSNSを使ってそこに流入させようと思ったんですけど、どうにも数字が伸びない。

 

──いいものを作ったからといって、すぐに人々に注目してもらえるわけじゃない。

 

ジョー:だったらもう集客とかなしにTwitterを主戦場にして、その中だけで人を喜ばせようと開き直りました。

 

──その時は何かツイートのスタイルを変えたりしたのですか?

 

ジョー:はい。というかレシピ投稿の仕方も画像に文字を載せたり、ツリーにいっぱい並べたり、どういう方法がいちばん人に届くだろうかと、戦略的・戦術的にいろいろ試しました。まあ、その間にもいろんな迷走はします。調理器具を紹介してみたり……。

 

──「『春の増量キャンペーン300g増量中』のシールをこっそり妻の背中に貼った僕は本当にひどい夫です」とツイートしたりとかですね。

 

ジョー:あはははは(笑)、まぁ妻関連のつぶやきは最近の迷走ですね。するとそれまで「いいね」が2、3個くらいだったのがコンスタントに50~100くらいつくようになってきて……。

 

──明らかに結果がついてきてる! 何かコツをつかんだのですか?

 

ジョー:どうやら可能な限り1ツイートの中にすべての情報を網羅した方が拡散されやすいということに気づいて、やっと今の原型ができた感じですね。

 

──ラーメンの「全部のせ」じゃないですけど、「この一杯を食べてくれればウチの店のウリがわかりまっせ!」みたいな?

 

ジョー:そうですそうです。コースで料理を出されるとめんどくさいけど、とりあえず全部のせドンブリがあればいちばん伸びるな、と。それからコンスタントに2,000「いいね」とかつくようになり、ある時「アスパラバター混ぜご飯」っていうのが爆伸びして、20万「いいね」くらいついた。

 

 

──うわっ、それはすごい! ついにやりましたね。

 

ジョー:すると、これがきっかけであちこちのメディアで取り上げられるようになり、ある時、某情報番組のワンコーナーからお声がかかったんですね。しかもその時は、尊敬している料理家の山本ゆりさんやリュウジさんと、コーナー的に並ぶような紹介をしていただきました。

 

──完全に潮目が変わりましたね。

 

ジョー:変わりました。そこで本当にブレイクですかね。でもやっぱり、「奇跡」の種を撒いてはいたというか……。

 

──そこですよね。テレビをみた人がジョーさん。のことを調べる。するとホームページがある。仕事を依頼するに足るレシピの蓄積という裏付けもある。

 

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ジョー:おっしゃる通りです。だから最初に作っておいたレシピサイトは無駄じゃなかった。「奇跡」をものにするにはそれなりの準備が必要だと思っていたので、結果的によかったです。

 

日本の食文化を守っていきたい

 

──最後に、ジョーさん。の今後の夢や目標を聞かせて下さい。

 

ジョー:地方の食品会社や魚の養殖や畜産、そういった生産者さんたちがちゃんと生き残っていけるようなお手伝いをしていきたいと思っています。

 

──そこにはどんな思いがあるのですか?

 

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ジョー:日本の、おそらく世界でもいちばんの、豊かな食文化に育ててもらった恩があります。それを返すためにも今失われつつある食文化を保存したり、地方でがんばっている生産者さんを応援する会社を立ち上げたいと思っています。

 

──本日はありがとうございました!

 

おわりに

 

ジョーさん。のレシピには、ミクロで見ると「家族」を、マクロで見ると「日本」を思う気持ちが詰まっていました。

 

そんな思いを知った後で料理を口にすると、また一味違うかもしれません。どうでしょう、今晩はジョーさん。のレシピの中から、家族のために(あるいは自分のために)一皿作ってみてはいかがでしょうか?

 

書いた人:飯炊屋カゲゾウ

飯炊屋カゲゾウ

1974年生まれの二女一男のパパ。共働きの奥さんと料理を分担。「おいしいものはマネできる」をモットーに、料理本やメディアで紹介されたレシピを作ることはもちろん、外で食べた料理も自宅で再現。家族と懐のために「家めし、家BAR、家居酒屋」を推進中。「双六屋カゲゾウ」名義でボードゲーム系のライターとして活動中。「子育屋カゲゾウ」名義で育児ブログも更新中。

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