はじめに
このところミラーレス一眼の利用が増えていて、キヤノン EOS R5を使い続けています。EOS Rシリーズの中堅モデルということもあり、必要十分な性能と機能を備えています。基本的な操作性は一眼レフのEOS 5D系に近く、違和感なく扱えるところが気に入っていますが、微妙な変化もありそのあたりをカスタムして補っています。
EOS R5 Mark IIも購入してあれこれ使いこんでいる真っ最中ですので、今回は長年使ってきたEOS R5を例に、私がどんなカスタマイズをしているのか、紹介していきます。
気温がマイナス10℃と冷え込んで、一面霧氷がついて真っ白になった。こんな景色が見られるようになると、道東でも冬がやってきたことを実感できる。厳しい寒さの中で的確にカメラを操作できるように、使いやすくカスタマイズすることはいい作品を撮るために大切なことだ。
■撮影機材:CANON EOS R5 + RF24-240mm F4-6.3 IS USM
■撮影環境:F13 1/320秒 ISO200 WB太陽光
自分の使い方を把握しよう
カスタマイズをしていくうえで大切なのは、自分がどんな撮影操作をするか、です。よく使う機能を使いやすいボタンや、初期設定のままでは使わないボタンに割り当てていきます。カメラを手にしたばかりでまだどんな写真を撮りたいのかわからないという人は、いきなりカスタマイズをしないほうがいいかもしれません。逆に、これまでいろいろ撮影してきてEOS R5を手にしたのだけれど、ちょっと操作しにくいなと感じている人はぜひ参考にしてください。EOS R5は思っている以上にカスタマイズ性が高いので、より使いやすいカメラに仕上げていけると思います。
ふだん私が撮影している被写体は、大きく分けてふたつです。風景や花などの動かない被写体と、動物や鳥などのいきものです。北海道では風景を撮影しているときに突然いきものが姿を見せることも多く、こんな状況にも対応できるようにカメラを設定しています。このあたりは過去記事のペンタックス K-3 Mark IIIのカスタムなどにも触れていますので、見てみてください。
EOS R5では、なるべくシャッターボタンから指を離さずカメラを構えたまま操作できることを目標にして、操作系のカスタマイズを行っています。なぜかというと、ファインダーから目を離してカメラを持ち直す必要があると、シャッターチャンスを逃す可能性があるのです。
青空に映えるナナカマドの赤い実。ちょっと高いところに実がついていて、色のコントラストを感じられるようにすることと、実の密度感を高く見せられるようにカメラポジションを選びながら撮影した。空の青さを強調するためにC-PLフィルターを利用している。
■撮影機材:CANON EOS R5 + RF24-240mm F4-6.3 IS USM
■撮影環境:F13 1/80秒 ISO400 WB太陽光
ナナカマドを数枚撮影したあと、木の裏側にとまっていたオジロワシが突然飛び立っていった。とっさに撮影モードを動体撮影用に切り替えてシャッターを押した。レンズの画角的にちょっと小さくなってしまったが、その姿を捉えることができた。いきものの密度が高い道東では、このような出会いはよくあることだ。
■撮影機材:CANON EOS R5 + RF24-240mm F4-6.3 IS USM
■撮影環境:F6.3 1/1600秒 +0.3EV補正 ISO6400 WB太陽光 1.6倍クロップ
ボタンカスタマイズで使いやすく
カメラを構えたときになるべくシャッターボタンから指を離さないで操作することを考えると、親指で操作できるボタンを使うのが理想です。EOS R5では背面部にいくつもボタンがあり、カスタマイズできるようになっていますので、これらを活用しましょう。
ボタンをカスタマイズするときは、メニューの「カスタム機能3」タブの「ボタンカスタマイズ」から行います。カメラの上部や背面にあるボタンの多くをカスタマイズできますので、好みの操作性を実現可能です。同様にダイヤルのカスタマイズも可能です。ダイヤル操作を変更したい方は見てみてください。
私も多くの機能を切り替えていて、かなり使いやすくできました。ただ、自分以外には使えないカメラにもなっています。ボタンに割り当てられなかった機能や使用頻度が少し低い機能については、マイメニューに登録しておくとすぐに呼び出せるので、便利です。
EOS R5の背面にはカメラを構えたときに親指で操作しやすい位置にたくさんのボタンが配置されている。その中でも、右上に並んで配置されている「AF-ON」ボタンや「AEロック」ボタン、「測距点」ボタンは押しやすい位置にある。しかし、私はどのボタンも普段使わないものなので、ここによく使う機能を割り当てて、操作しやすくすることにした。
カメラ上部にあるボタンも使わないものがある。たとえば動画は撮らないので「動画撮影」ボタンはカスタマイズに利用する。このように自分の撮影で使わないボタンがあれば、よりよく使う機能を割り当てていくことを考えていこう。ただ、何を割り当てたのか忘れてしまうような機能であれば、無理してカスタマイズする必要はない。
「動画撮影」ボタンは動画を撮らないので使わない。ここには「ドライブモード」を割り当てている。静止画撮影でも三脚撮影時に「1枚撮影」から「2秒セルフタイマー」に切り替えたり、連写速度を変更したいときに利用する。
ハクチョウが水浴びをしているシーン。羽の動きが激しいので、こういうときには高速で連写していい羽の形を写し止めたい。といってもいつも激しく動いているわけではなく、湖面でふつうに羽繕いをしているくらいなら無理に連写をせずいい形だけを写し撮ればいいのだ。電子シャッターだと否応なしに20コマ/秒になるので、必要に応じて切り替えている。
■撮影機材:CANON EOS R5 + RF200-800mm F6.3-9 IS USM
■撮影環境:F9 1/1000秒 ISO3200 WB太陽光
「MODE」ボタンは「メニュー表示」に変更。メニューボタンは左側にあってカメラを持ち替えないと操作できないが、こうすることでほとんどのカメラ操作を右手だけで行えるようになる。多機能なカメラなので必要に応じて設定を変える必要もあり、かなり便利に使えるようになった。
「AF-ON」ボタンもふだんは使っていないので、「AF方式ダイレクト選択」に変更している。これはボタンを押すたびにAFフレームのサイズやエリアを切り替えるもので、撮影シーンに合わせて頻繁に切り替えている。全部のAF方式は必要ないので、「AF方式の限定」で必要なものだけ表示されるようにしてある。
エゾリスが木の幹に乗った雪を舐めていた。エゾリスはカメラの被写体認識率が低いことと手前には木の枝があったため、AFエリアが広いと木の枝にピントが引っ張られてしまうことがあるので、一番狭いAFフレームにして撮影している。どんなシーンのときにどのAF方式が適切なのかは経験を積んで覚える必要があるだろう。
■撮影機材:CANON EOS R5 + RF200-800mm F6.3-9 IS USM
■撮影環境:F9 1/400秒 ISO6400 WB太陽光
「AEロックボタン」は「静止画クロップ/アスペクト」に変更している。これはいつもフルサイズで撮影しているわけではなく、APS-Cサイズにクロップすることも多いからだ。遠くのいきものやマクロ撮影をするときによく利用する。高画素なEOS R5では後でトリミングしてもいいのかもしれないが、撮影時にしっかりフレーミングを決めておきたいのだ。
花の上に乗っていた小さなヒシバッタ。マクロレンズの等倍でも画面内では小さく写るので、APS-Cにクロップした。画面内の面積的には1.6倍になるので、かなり大きく見せることができる。撮影画素数は約1700万画素となるが、A2サイズ程度の大伸ばしには対応できる。
■撮影機材:CANON EOS R5 + SIGMA 70mm F2.8 DG MACRO | Art
■撮影環境:F6.3 1/200秒 +0.3EV補正 ISO3200 WB太陽光 1.6倍クロップ
「AFフレーム」ボタンは「撮影モード設定」に変更している。AFフレームの操作はマルチコントローラーで直接行うため、このボタンの意味はない。また、すぐ上にモードボタンがあるのだが、この位置のボタンを押すためには人差し指で操作する必要があり、シャッターボタンから指を離すことになる。頻繁に撮影モードを切り替えるため、私にとってはこの位置のボタンで撮影モードを切り替えるのがベストなのだ。
「レンズのAFストップボタン」は「AF停止」に設定している。これは他のメーカーでも同じように設定していて、AFロック代わりに利用している。
「マルチコントローラー」は「AFフレームダイレクト選択」にしてある。AFフレームの位置は頻繁に移動しているので、ボタンを押してコントローラーを操作する二段操作では面倒だし、いいシーンを撮り逃してしまう。せっかく操作性の良いコントローラーを備えているのだから、しっかり活用したい。
シダの影からこちらの様子を伺っている若いキタキツネ。顔全体が見えない状態だと動物認識されるか微妙なので、狭いAFフレームにしたうえでAFフレームの位置も調節してきちんと目にピントが来るように操作している。狙ったところに確実にピントを合わせるために、自分できちんとカメラを操作することは必要だ。
■撮影機材:CANON EOS R5 + SIGMA 60-600mm F4.5-6.3 DG OS HSM | Sports
■撮影環境:F6.3 1/250秒 ISO6400 WB太陽光
「SET」ボタンには「再生画像の拡大」を割り当てている。撮影後の画像をすぐに拡大して確認できるので便利だ。拡大倍率は「再生メニュー」の「拡大倍率設定」で指定することができる。私は「等倍(任意選択合焦点から)」にしている。
凍りつき始めた小さな流れにできた飛沫氷。EOS R5は低速シャッターでもけっこう手ブレ補正が効くので、1/8秒程度だと数枚撮影しておけばブレずに撮れる。といっても後で後悔したくないので、このような撮影をしたときは必ず撮影後に拡大して再生し、ブレていないことを確認している。
■撮影機材:CANON EOS R5 + RF24-240mm F4-6.3 IS USM
■撮影環境:F13 1/8秒 +0.7EV補正 ISO800 WB太陽光
マイメニューには必要な設定だけを呼び出せるよう登録できるので、ボタンに割り当てられないけど必要な項目を登録しておくとカメラを扱いやすくできる。この「MY MENU1」タブには、ご覧の通り、私が比較的頻繁に切り替える内容が登録してある。
「MY MENU」タブの「設定」からマイメニューをカスタマイズできる。まずは「登録項目の選択」で必要な項目を登録してから「登録項目の並べ替え」などをして使いやすいマイメニューにしていこう。
カスタム撮影モードを活用する
被写体や撮影するシーンによってカメラの設定はこまかく異なってきます。AFモードやISO感度、撮影モード、ピクチャースタイルなど、これらをいちいち変更していたら面倒ですし、とっさに切り替えたいと思っても間に合わないことがあります。
自分のカメラの設定がある程度決まってきた人は、カスタム撮影モードにそれらを登録して、一瞬で切り替えるようにすると便利です。私は「C1」に風景や花などの動かない被写体用の設定、「C2」はAVモードで動体撮影できるよう、AF関連を切り替えています。「C3」はMモードで動体撮影用となっています。
カスタム撮影モードの登録は、「カメラ設定5」タブの「カスタム撮影モード」から行います。難しいことはないので、気に入ったカメラの設定ができたときや写真教室で教えてもらった設定を登録しておくと、あとから簡単に呼び出して利用できます。
カスタムしたカメラの設定をカードに保存しておくこともできますから、撮影に合わせて一気に設定を切り替えるといったことも可能になります。
カスタム撮影モードの登録は簡単。今のカメラの設定が使いやすいとか気に入っているといったときに「カスタム撮影モード(C1-C3)」を開いてC1からC3のいずれかに「登録」するだけだ。基本的に今の状態がそのまま記録されるので、次に撮影するときには登録したカスタム撮影モードに切り替えればいい。
カスタム撮影モードもいきなり完成するわけではないので、撮影中にさらに設定を変えたときにそれが記録されるように「登録内容の自動更新」は「する」にしている。登録した内容が変わってしまったら困る人は、「しない」にしておこう。
カスタム撮影モードの便利さがわかってくると、3つでは足りないと感じるかもしれない。そういうときは、「カメラ設定をカードに保存・読込」を利用してSDカードなどに設定を書き出しておき、必要なときに読み込めるようにしておくといい。容量はそれほど大きくないので、使わなくなったSDカードを設定記録専用にして持ち歩いてもいいだろう。
メニューをじっくり見てみよう
ここまでのカスタマイズでもかなり使いやすくなっていると思います。でも、より使いやすくするために、メニューを端から端までじっくり見てみましょう。メニューの項目はたくさんの人の好みに合わせられるよう用意されているもので、無駄なものではありません。標準のままでいいと思うものもあれば、変更することでより好みのカメラとすることができます。
最近になって変更したものでは、「撮影8」タブの「ファインダー表示形式」です。標準の表示1ではファインダー全域に画像が見えていますが、表示2にすると、画面の周辺に表示される情報が画像に被らなくなり、画面の隅々まで確認できるようになります。はじめはファインダー像が大きいほうがいいと思っていましたが、画面の隅の部分を確認しにくくて気になっていたところでした。また、ヒストグラムの表示も大きく邪魔だと思っていたら、小さく表示できることも分かりました。
このようにメニューを見直してみることで、自分が不満を感じていた部分を改善できることも多いです。キヤノンはユーザーも多いので、いろいろな声が寄せられていて、それに対応してくれているのだと思います。
「ファインダー表示形式」を現在は「表示2」にして使っている。ファインダー内に表示される情報が画像に被らないので、構図をしっかり見られるようになった。また、メガネをかけているためファインダーから微妙に目が離れるので、ときどき画面の四隅が見にくいと感じることがあったがそれも解消された。
画面の左右ギリギリに被写体が入ってくるときは、ファインダー画像だけがスッキリ見えるほうが構図をしっかりと決めることができる。できるだけトリミングをせずに、シャッターを押すときに構図を完成させたいので、ちょっとしたことだが撮影時のストレスはかなり少なくなった。
■撮影機材:CANON EOS R5 + RF24-240mm F4-6.3 IS USM
■撮影環境:F10 1/400秒 +0.7EV補正 ISO3200 WB太陽光 1.6倍クロップ
「カメラ設定7」タブの「撮影情報表示設定」を開くと、「ヒストグラム」の項目がある。さらにこの下に「表示サイズ」があって、ヒストグラムの表示サイズを変更できる。「小さい」を選択するとファインダー画像の右上に小さく表示され邪魔にならなくなるので、常時ヒストグラムを表示している人におすすめだ。
まとめ
カメラの操作は慣れも必要ですが、デジタル化された現在のカメラではユーザーの好みに合わせられるようにもなっています。カメラを買ったままの基本設定でもかなりのシーンで押せば写る手軽さを実現してくれているものの、より狙い通りの写真を撮影するためには、自分で思い通りにカメラを操作できるようにすることが大切です。
カメラのカスタマイズははっきりした目的がないと行えません。言い換えれば、自分がどんな撮影をしようとしているかを見直す機会にもなりますので、漠然とシャッターを押すのではなく、カスタマイズをしながら自分の撮影スタイルを考えてみてください。
今回はEOS R5を例にカスタマイズを紹介しましたが、最新のEOS R5 Mark IIなど他の機種でも基本的な考え方は同じです。これらを参考にして、より自分のカメラを使いやすくし、写真を楽しんでください。
■自然写真家:小林義明
1969年東京生まれ。自然の優しさを捉えた作品を得意とする。現在は北海道に住み、ゆっくりとしずかに自然を見つめながら「いのちの景色」をテーマに撮影。カメラメーカーの写真教室講師などのほか、自主的な勉強会なども開催し自分の視点で撮影できるアマチュアカメラマンの育成も行っている。