恋愛漫画やアニメ、ドラマにおいて、地味な女主人公よりも、顔は良いのにどこか抜けてる男主人公よりも、何考えてんだかわからん男友達よりも、やかましい女友達よりも、恋愛経験豊富な女友達よりも、クソチャラ男ライバルよりも、誰よりも、
「地味な女主人公の恋のライバルとして登場し、二人の仲をさんざん邪魔するが、女主人公の純粋さに触れたことで徐々に心を開き、最終的に女主人公の一番の親友になるツインテールの性悪美少女キャラ」の幸せを願ってる。
『君に届け』のくるみ、『花のち晴れ』の愛莉、『妄想テレパシー』のマナ、『クズの本懐』のモカ…
ディテールこそ違えど、どのツインテールも一見なんの苦労もない人生イージーモードの勝ち組に見える。そりゃツインテールなんて髪型、自分の顔面に自信がないとできない芸当で、それを簡単にやってのけるルックスをツインテールは持ってる。だから周りの連中はみんな勘違いする「あの娘は恵まれてる」「あの娘はなんでも持ってる」って。でもそれは違うんだよ。悩みがない、コンプレックスがない人間なんていないんだよ。でもツインテールは素直じゃない、自分の弱みを他人に見せるなんてことはできねぇ。だから演じる、完璧にカワイイ自分を。
スクールカースト上位狙いの女共やしょうもねぇ男共はワラワラとツインテールに寄ってくる。さながら、蜜に群がるハチ。でも、そいつらは花の美味い部分しか見てねぇ、ただ上澄みすくってるだけ。ツインテールって花が本当にとまってほしいのはミツバチなんかじゃねぇ、蝶なんだよ。たった一匹のアゲハ蝶。蝶はわかってくれたんだよ。自分の弱いとこ、醜いところ、不味いところ、それを全部わかったうえで「お前はお前でいいよ」って言ってくれたんだよ。
そう、ツインテールの性悪美少女キャラ、だいたい男主人公と幼なじみ、同小、同中、だいたい地味な女主人公が男主人公のことを好きになるずっとずっと前から好き。山本耕史も引くほどのド級の一途。これがデフォ。周りも「美男美女カップルうらやましい〜」なんてもてはやしてくる。
でもツインテールはホントは気づいてんだよ。男主人公が自分になんの興味もないってこと、幼なじみ以上、友達以上には見てくれることはないって…。誰よりも一番よくわかってんだよ…。でもな、いつか…いつか男主人公が自分のほうを向いてくれる、自分を好きになってくれる、それだけを信じて必死に自分を磨いてきたんだよ。わかるか?
なのに、いきなり春の風みてぇに現れたわけわかんねぇ地味な女に、ツインテールが一段一段慎重に慎重に積み上げてきた恋愛ジェンガが全部崩される。一番下からガッシャーン!いかれる…この気持ちがお前にわかるか?
「違う、男主人公が地味な女主人公を見る目と自分を見る目が明らかに違う」
ツインテールにはそれがすぐにわかるんだよ。だって見てきたから。男主人公のこと、ずっと見てきたから…
地味な女主人公の無自覚さ、それがツインテールにとっては一番の悪なんだよ。たいてい地味な女主人公は気づかねえ。バカだから。地味な女主人公、全員もれなく自分の気持ちにすら気づかない稀代のド天然だから。だから決まって「なんで…?私がなにしたって言うのよ…?」みたいな顔して悲劇のヒロイン気取りやがる。当たり前だろうが。徹夜で立てたドミノ完成する寸前に横からブチ壊されてみろよ、頭おかしくなるに決まってるじゃねぇかよ。お前は前しか見てねぇ、だから足元にあるドミノに気づかねぇんだよ。
そりゃ邪魔もするだろ。周り使って悪評流すだろ。冷蔵庫にも閉じ込めたくなるだろ。俺がツインテールでも同じことしてるわ。逆にその程度で済んでありがたく思えよ。これが恋愛漫画、恋愛ドラマで良かったなぁ?『北斗の拳』だったら一発で首から上吹っ飛んでるからなコラ。
それでも最後にはツインテールは身を引くんだよ…好きだからこそ身を引く、自分の幸せよりも男主人公の幸せを願ってるから必死で「友達」に戻ろうとする。心で泣きながら笑顔で「もう好きじゃないから!」とか言いだすんだよ…
最初にツインテールのことを「性悪」って言ったが…アレもコレも全部ただひたすらに男主人公が好きがゆえの行動…ツインテールはただ周りが見えなくなっちまっただけなんだよ…仕方ねぇじゃん…そういうもんじゃん…恋愛って…
だがな…ツインテールはいつしか地味な女主人公の純粋さに触れて、地味な女主人公の前では素直な自分でいられることに気付く。「こんな自分も悪くないな」ってそう思うようになる。そして二人は親友になる。地味な女主人公と男主人公の幸せを心から願うようになる。そんなツインテールを見るたび、俺は泣きながら思うんだよ…
「いや…お前が幸せになれよ…」って…
誰なんだ俺は。