本販売日:2024/12/10
電子版配信日:2024/12/20
本定価:1,386円(税込)
電子版定価:1,386円(税込)
ISBN:978-4-8296-7942-5
「今夜は思うぞんぶんママに甘えていいのよ」
浴衣をはだけ、勃起した先端に手を絡ませる義母。
濃厚なキス、秘所の洗いっこ、湯船での肉交……
熟女のやわ肌と濡ひだに包まれる温泉旅行!
誘惑小説の真打ち・神瀬知巳、待望の文庫X第二弾!
『義母温泉』
第一章 無防備な義母【女ざかり】
第二章 熟女別館【おもてなし】
第三章 年上ぐるい【濃厚フェロモン】
第四章 いちゃいちゃ温泉【泡天国】
第五章 甘艶母【あまえんぼ】
第六章 禁忌ざんまい【官能風呂】
エピローグ
『義母と温泉旅行【ふたりきり】』
第一章 淫らな新居でハーレムは続く
第二章 妻公認で「妻の妹」と……
第三章 義母とふたりきりの温泉旅行へ
第四章 「新婚気分」で混浴づくし
第五章 後ろの穴まで捧げて……
ロングエピソード 三人の「妻」
本編の一部を立読み
第一章 無防備な義母【女ざかり】
1
榎本秋生は、大浴場のひのき風呂に浸かっていた。他に客の姿はなく、吐水口から流れ落ちる水音のみが響いていた。秋生は視線を外へ向けた。
(このきれいな景色を、のんびりと眺められたら良かったのに)
浴場の大きな窓越しに、ライトアップされたシダレザクラやエドヒガンの木々が見えた。春の夜を艶やかに彩るピンク色が、風にゆらされてはらはらと舞い散っていく。値の張る温泉宿とあって、周囲の景色や閑静な雰囲気、温泉の心地は申し分なかった。
(部屋に戻りたくないな。ずっとこのまま、こうしていたい)
宿の離れの部屋では、母貴和子が息子の帰りを待っていることだろう。
秋生の父が突然の交通事故で亡くなって一年が経つ。残された三十二歳の母と息子にとって、初めての二人だけの旅行だった。
(入学祝いだって言って、ママは温泉に連れてきてくれたけど……)
地域でも指折りの名門校に、この春秋生は無事合格した。四月からは、新生活が待っている。
(変だよ。ママとお風呂に入ることなんか今まで一回も無かったのに。急に一緒に入浴しようって言ってくるなんて)
豪華な夕食をとった後だった。貴和子が離れ専用の家族風呂に入ろうと、秋生を誘ってきた。
貴和子は三年前に父と籍を入れた後妻で、秋生と血の繋がりはなかった。再婚当時秋生は、新しく現れた母にうまく馴染めなかった。当然、入浴を共にした経験など一度もない。
(大きなお風呂がいいって断ったけど……きっと家族風呂のなかで、ママは僕に切り出すつもりだったんだ)
伴侶を喪った若く美しい母に、再婚の話が幾つも来ていることを、秋生も知っていた。
『お義母さんのしあわせを、考えてあげなさい』
縁談話の一つを持ち込んできた伯父は、貴和子のいない場所で秋生にそう告げた。
(確かに自分が生んでもいない子供を、ママがこの先もずっと育てていくのは変だよね。学生の息子なんていたら、再婚の邪魔にもなるだろうし)
父親が亡くなった時、貴和子はじきに家を出て行くものだと秋生は覚悟した。書道師範の免状を持つ母は、週に四回、実家に通って弟子や子どもたちに書を指導している。実家に戻った方が暮らしやすいのは明らかだった。しかし母はこの一年、義理の息子の側にいる。
(僕が一人ぼっちになるのを、不憫に思ってのことだったのかな。受験が終わるまで、面倒を見ようと思ってただけなのかも)
秋生ははかない風情の夜桜から目を背けて、はあっと溜息を漏らした。母が乗り気になるような交際相手が見つかったのかもしれないと考えると、憂鬱は深くなる一方だった。秋生は湯船の縁に頭を預けて、目蓋を落とした。
(この先もずっとママと暮らしていけるのかなって、思ってたのに)
目を閉じると、自然と母の姿が思い浮かんだ。形の良い細眉、睫毛の長い切れ長の瞳、芯の強さを感じさせる薄い唇──。
(ママを見た友だちはみんな、美人なことと着物姿に驚いてたっけ)
書を嗜んでいるだけあって、貴和子は常にきっちりと和服に身を包み、髪をきれいに結い上げていた。人目を惹く細面に和装はよく似合った。気品と優美を兼ね備えた母は、秋生にとっても秘かな自慢だった。
(僕が合格した時、ママはにっこり笑って祝ってくれた。もうあの笑顔を見られなくなるなんてこと、嫌だな)
受験前の半年間、母は毎晩秋生の隣に座って、勉強を見てくれた。凡庸な成績だった秋生が、難関校に入ることが出来たのは、貴和子のおかげだった。
『よくできたわね』
難しい問題が解けた時、貴和子は凜とした色白の相を崩して、秋生の頑張りを褒めてくれた。
(厳しかったけれど、ママの家庭教師の時間、とっても楽しかった)
問題の解き方を教えてもらう時には、耳元に貴和子の吐息を感じた。身体からは、甘い体臭とかすかに墨の匂いがした。側にいるだけで、秋生の胸はドキドキと昂揚しっ放しだった。
(卒業式の案内のプリントを、捨てちゃったのが悪かったのかな)
ちょうど一週間前のことだった。父母用の案内プリントを、秋生は誤って屑入れに捨ててしまった。翌日、くしゃくしゃになったプリントは皺を丁寧に引きのばされて、リビングのテーブルの上に置いてあった。
(他の必要でないプリントと一緒になってたから、間違えちゃったんだって必死に説明したけど、ママはどこかしょげた様子だった)
卒業式の晴れの舞台に来て欲しくない、まだ母親として認めていない──貴和子はそう受け取ったのかも知れない。
(あー、失敗したなあ。決してママのこと、嫌いな訳じゃないのに。むしろ僕はママのことが……)
生みの母は物心がつく前に亡くなっていた。母親の記憶がなかった秋生にとって、貴和子との三年間は、父と母のいる家族の時間を得られた貴重な日々だった。義理の母と別れたくないと、少年は思う。
不意に賑やかな話し声が浴場内に響いた。秋生は目を開けた。浴室のなかに入ってきたのは、中年男性二人組だった。
「──さん、ホントにあのお堅い奥さまとやったのかい?」
「おうよ。見た目とは大違いで、布団のなかではしっとりいい女だったねえ。最後にはヒイヒイ泣いてしがみついてきたよ」
「うへえ、想像つかないなあ。あのツンツンした奥さまが」
「じっくり時間を掛けて、前戯で愉しませてやればどんな堅い女でも落ちるもんだよ。唾液まみれのディープキスから始まって、足の指や腋の下までぺろぺろ舐めて、許してくれって頼んで来ても構わず続けてやりゃあ、その段階で欲求不満の人妻はメロメロになるよ」
「お股は特に念入りにでしょ? 向こうから突っ込んでくれって言い出すようになるまで」
「くく、そうそう。こう脚をグッと掴んで、容赦なく舐めまくるんだよ。人妻にはキクよ」
男たちが笑い声を上げる。
(なんて会話)
秋生は顔をしかめて、洗い場に並んで座った二人をちらちらと見た。酔っているらしく、どちらも顔が真っ赤だった。聞き耳を立てている訳ではないが、大きな声で交わされる下品な内容はどうしても耳に入ってしまう。
(酔ってるんじゃしようがないか。一般のお客さんが来る大浴場に来た僕も悪いし)
気が強い方ではない。大人に向かって注意をするような度胸は秋生にはなかった。
「ハハ、まー女遊びもたいがいにね」
「可愛い愛妻を、放っておく旦那だって悪いだろうよ。あの奥さん、すっかりご無沙汰だって漏らしてたよ」
「男は風俗で手軽に発散できるけど、女はね。三十、四十はやりたい盛りだろうし」
(やりたい盛り? そうなんだ。ママも同じなのかな)
三十二歳の母も、そういった欲望を秘めているのだろうかと秋生はつい考えてしまう。
「あの奥さん、あー見えて、こっそりオナニー三昧だったってさ」
「あちゃあ、そりゃ可哀想だ」
(オナニーか。ママはそんな真似しないはず)
秋生は否定の言葉を胸でつぶやく。女性でも自慰を行うという知識はあった。しかし高貴な雰囲気を持つ貴和子と、そういった行為は結びつかない。
「ツンツンした雰囲気で、清廉潔白でございって顔をした女の方が、普段抑え込んでいる分、激しくなるもんよ」
「あー、確かにそれはあるかもねえ」
母のことを言い当てられた気がして、秋生はドキッとした。
(そうだよな。ママだって性欲がゼロって訳じゃないだろうし……。僕が勝手に思い込んでいるだけなのかも)
少年の頭のなかに、薄暗がりの寝室と着物を脱いで横たわる長襦袢の肢体が、ぼんやりとイメージされた。女はほっそりとした手を太ももの間に差し入れて、股間を秘めやかにまさぐっていた。母が自慰を行っている場面だった。
(ママのオナニーなんて、想像したらいけないのに)
共に暮らす母に性的なイメージを重ね合わせることは、少年の罪の意識を掻き立て、同時に情欲を喚起した。湯のなかで陰茎が充血し、むくりとそそり立つ。秋生は湯のなかで股間を押さえた。
(こんな場所で勃起するなんて……)
秋生は己の肉柱を握った。脳裡に浮かんだ母は、長襦袢の裾をはだけて、脚の間にもぐらせた手を控え目に動かし続ける。
「俺は見て見ぬ振りは出来ない性分だからさあ。寂しい人妻は、誰かがケアしてやらないとさあ」
「人助けだって言うのかい? ハハ、それはどうかなあ」
再び男たちの下卑た笑いが木霊した。
(もし僕が、ママの寂しさやつらさを慰めてあげられたら、離れずに済むのかな)
布団に横たわった母に、人影が近づく。それは秋生自身だった。音を立てぬよう忍び寄り、母の足首に手を巻き付け、横に開きにかかる。貴和子が顔を上げ、秋生を見た。都合の良い妄想の世界、相手が息子とわかっても貴和子は汗の浮かんだ色白の顔を横に伏せるだけで、嫌がりはしない。秋生は生白い脚をグイと拡げた。黒髪が白いシーツの上で恥ずかしそうにゆれ、肢体が震えた。
「あ、あきお……」
母の呼び声が聞こえた気がした。辺りに漂う温泉とひのきの香を押し退け、突然爽やかな母の肌の匂いが、秋生の鼻腔にふわっと甦った。
「ママ……」
秋生は太ももの間に頭を突っ込んだ。付け根に唇を押し付ける──。
(な、なにを考えてるんだよ)
口愛撫を施す直前で、秋生は我に返った。なまの女性器を見たこともない少年には、その先の妄想は不可能だった。湯で顔をザバザバと洗った。
(僕がママを慰めるなんて……ママは絶対に拒否するに決まってる。下らないこと考えていないで、落ち着かないと)
膨れ上がった勃起が痛かった。男性たちの猥談を聞かぬようにして、秋生は深呼吸を繰り返した。
(いい加減、上がろう。のぼせそうだ)
陰茎の充血が幾分収まるのを待って、秋生は湯船から出た。さりげなくタオルで股間を隠して、足早に脱衣室へと向かった。
「でもなあ、三十路の熟れた肉体はこってりしてていい味だから、やめられんわ」
「若い女とは違った良さがあるものねえ」
浴場のドアを閉める秋生の耳に、露骨な会話が届く。秋生は手早く身体を拭き、浴衣を着て大浴場を後にした。
(湯あたりしたかな。なんかふらふらする)
キスさえ経験のない童貞の少年には、過ぎた刺激だった。秋生は部屋へと戻りながら、肌身離さず持ち歩いている携帯電話を開いた。こっそり撮った貴和子の写真が、メモリーされていた。
(いつ見てもかっこいいなママ)
背筋を伸ばして正座し、書をしたためている姿だった。小さな画像だというのに、張り詰めた空気が伝わってくる。筆を運ぶ時の、貴和子の集中した横顔は凜々しく、また気品があった。
(ママが欲求不満な訳がないし、オナニーなんかしないよ。変な目でママを見るようなことだけは、しちゃダメだ)
血の繋がりがないとはいえ、貴和子は秋生に残された唯一の家族だった。母の品位を損なうような想像はしてはならないと少年は思う。
(……あれ?)
秋生は脚を止めた。周囲を見回す。見慣れぬ廊下だった。母子の泊まっている離れの個室は、他の泊まり客と出会わずに済むよう温泉宿の奥まった位置にあった。長い通路をどうやってきたか、記憶はおぼろげだった。
(もしかして迷ったとか。えっと確かこっちだったような)
秋生は携帯電話を畳んで、入り組んだ造りの廊下を勘に任せて幾つか曲がった。
(あーよかった。こんな感じの襖の模様だった気がする)
じきに見覚えのある部屋の入り口へと無事に辿り着き、秋生はほっと胸をなで下ろした。襖を開けて、室内へと入る。和室のテーブルに向かい合って座る二人の女性が、秋生の目に飛び込んだ。
(え、誰?)
一人はサーモンピンクのスーツ姿で、もう一人は浴衣を纏っていた。どちらも母の貴和子ではない。テーブルには料理や酒が並べられていた。疑問符が秋生の頭のなかに浮かんだ。室内を見回した。部屋の広さが違う気がした。掛け軸や床の間に生けられた花の色も異なっていた。
(いけない。部屋を間違えた?)