2025年1月26日に行われた山形県知事選挙の投票率が過去最低を更新した。政治学者は「候補者の熱量の乏しさ」が有権者の関心が高まらなかった要因と指摘。今後、県政のオール与党化が参院選に影響するのかも注目される。

投票率低下は選挙戦の熱量が影響か

知事選の投票率は39.67%で、これまで最も低かった2001年の48.81%を下回り、過去最低を更新した。

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4年に一度、県政のかじ取り役を決める大事な選挙で、有権者の関心が高まらなかった点について、地方政治に詳しい東北大学大学院の河村和徳准教授は次のように解説する。

東北大学大学院情報科学研究科・河村和徳准教授:
候補者同士の論戦がきちんとかみ合って熱戦になる場合は投票率が上がるが、選挙の雰囲気がそもそもないので投票所に足を運ばない。

17日間の選挙期間中、現職・無所属の吉村氏はそもそも個人演説会を開かない方針で、公務やインフルエンザを理由に街頭に立つ機会も多くなかった。

また無所属・金山氏も選挙ポスターを貼りきれず、街頭演説を限られた場所だけで行うなど、選挙戦全体の温度感は低いままだった。

河村准教授は「選挙の場合、振り向いてもらうことが大事で、選挙に勝ちたいという熱量が有権者を振り向かせる。頑張っているという姿勢に共感してもらわないと票を投じようとしないところもある」としたうえで、「やる気・真剣さを感じさせる選挙運動をできなかったのは、県民にとって非常にマイナス」と述べた。

無効票は抗議・批判と受け止めるべき

また、白票を含めた無効票は前回(2310票)の3倍に増え、6939票だった。

河村准教授は「投票所に行ったけれども、投票する候補者がいないということ。選択肢を立てられなかった政党に対する批判が出る」と指摘し、「『自民党支持者が憤っている』という抗議票だと見る必要がある」と話す。

無投票が回避され、現職の吉村氏が選挙公約を発表するなど、河村准教授はプラスの面もあったと話すが、最大のマイナス点を次のように指摘する。

東北大学大学院情報科学研究科・河村和徳准教授:
県政野党として見られていた自民党の立ち位置が不明確になってしまったことが大きかった。候補者を出すなら出す、もしくは吉村県政に対して、自民党としてどういうスタンスをとるのかをもう少しはっきり押し出す。そうしたことをきちんとやらなかったことが県民にとっての不利益。

河村准教授は、「低い投票率や無効票の多さには、次の世代にバトンタッチすべきという批判が含まれている」ことを肝に銘じるべきと話した。

再選ねらう芳賀氏ももどかしさ

知事選の次に控える大型選挙が2025年夏の参院選だ。与野党の候補者の激突が見込まれる中、相乗りの支援を受けた吉村氏の政治信条である「恩返し」も注目されそうだ。

1月26日、吉村氏の当選の挨拶に続いてマイクを握ったのが、夏に改選期を迎える現職の芳賀道也参院議員だ。

無所属・芳賀道也参院議員:
政府は暮らしていくことの大変さ、庶民の大変さをわかっているだろうか。吉村知事を先頭に、日本の政治を山形から変えていこう。

芳賀氏は、2019年に非自民の統一候補として初当選した。

再選をねらう中、今回の選挙でも精力的に吉村氏を支援したが、県政の“オール与党化”にもどかしさも感じている。
それは芳賀氏を支える連合山形も同じだ。

連合山形・舩山整会長は「『オール与党』態勢になったことで、どう参院選に影響するかはわからないが、芳賀道也氏を推薦するという決定の元にしっかり7月に向けて戦っていきたい」と話す。

自民は吉村氏への“微妙な支援”に

一方、参院選2度目の挑戦となる自民党の大内理加氏。
知事選では吉村氏の事務所開きや出陣式に出席したほか、県議補選の場でも自分の顔と名前の浸透を図った。

大内氏は「個人の戦いではあるが、一騎打ちの補欠選挙。必ず自民党が総力を挙げて1議席を勝ち取らなくてはいけない」と意気込む。

2021年の知事選で大内氏を擁し吉村氏に挑んだ自民党だが、今回の知事選では独自候補を擁立せず、吉村氏の支援・相乗りという道を選んだ。

自民・遠藤利明衆院議員は「必ずしも同じ方向を向いていない場合もあったと言いながらも、県政を進めるということについては協力しなければできないことが数多くある」という。

しかし、選挙戦で自民の議員が実際にマイクを握ったのは、吉村氏が公務やインフルエンザで選挙を離れた時など限定的なものだった。吉村氏側からの要請はほとんどなかったという。

その背景にあったのは、やはり参院選。
吉村氏からすると、議席奪還をねらう自民から「恩返し」を求められる可能性がある一方で、芳賀氏を支える非自民の側に配慮する必要があることが、今回の「微妙な支援」につながった。

自民党県連・森谷仙一郎幹事長は「参院選においては知事に期待ということよりも、普通通り政策を訴えていく。大内氏は党の公認ですから」と話した。

夏の参院選まで約半年。
県選挙区には、このほか参政党が自営業の佐藤友昭氏の擁立を明らかにしている。

(さくらんぼテレビ)

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