ポケッタブルフルフレーム、これがSIGMA fpの最大の特徴の一つだ。フルサイズセンサーを搭載したカメラなのにこんなに小さいなんて、僕自身初めて手にしたときは衝撃を受けた。
しかしながら、この小ささを生かすためには大きな障害がある。いくらボディが小さくてもフルサイズのイメージサークルをカバーするレンズは大型になってしまうということだ。僕が以前使用していたSONY α7IIも充分に小さかったのだが、レンズが大きすぎてAPS-Cのカメラに買い換えてしまった過去がある。
その反省を生かすべく、僕はSIGMA fpにレンジファインダー用の小型レンズばかりをつけて使用している。その究極系ともいえるレンズを紹介したい。それがGIZMON Utulensだ。
- 単焦点 f=32 mm F16固定
- レンズキャップ並みの小型軽量
- ファインダーを覗いた時点でローファイな写真が出来上がっているのが逆に新鮮
- 写ルンですのレンズを再利用しているだけあって安価
上記のような特徴があり、かなりお気に入りのレンズだ。
理系男子によるコスパ算出
大手メーカー勤務の筆者が、その経験をもとに製品の本当のコストパフォーマンスを評価するコーナー
価格の手頃感 | |
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生活への影響度 | |
長く使えるか | |
スペックに現れない価値 | |
所有する高揚感 |
総合コスパ:
小型で特徴的な写り!そして安い!レンズキャップ代わりにとりあえず持っておいて損はない
>同じコスパ評価の製品一覧
「価格の手頃感」、「生活への影響度」が高ければ高いほどコスパも高くなり、逆に「スペックに現れない価値」が高くなるとコスパは低くなります。なお「所有する高揚感」はコスパ算出の対象外。
GIZMON Utuensの作例
写ルンですの写りを思い出してもらえば、それに近い描写をしてくれるレンズだ。描写の特徴を挙げるとすれば下記。
- 強烈な周辺減光
- 周辺の描写の乱れ、色かぶり
- 糸巻き型収差
色再現性も乏しく、正直にいえばひどく破綻した描写だ。しかし写ルンですだと思うと許してしまう。むしろこのローファイさが愛おしくすら思える。
GIZMON Utulensでは近所など、自分のよく知っているエリアでスナップをしてみてほしい。自分の知っている街がまた違っておもしろく再発見できるはずだ。
よく収差が補正されたレンズで撮った後に、写ルンです風に加工することは難しくはない。しかしレンズキャップ並みに小さいレンズを取り回して、ファインダーを覗いた時点で出来上がったローファイさという撮影体験にGIZMON Utulensの真価があると感じている。
写ルンですのレンズを再利用したUtulens
UtulensはGIZMONが販売しているレンズだ。レンズ付きフィルムである「写ルンです」のレンズを再利用してミラーレスカメラで使用できるように加工したものだ。詳細はギズモショップ公式サイトを参照してほしい。
同梱されているのは、以下の6つ。
- Utulens本体
- Leica Lマウントアダプター
- ポーチ
- スキンシール
- 六角レンチ
- 説明書
六角レンチはLeica Lマウントレンズの指標合わせのためのもので、Utulensのみを使用するのなら不要。
Utulens本体はざらざらとした質感の樹脂製。マウント部のネジ溝から、樹脂の削りかすが発生することは(今のところ)ないので安心してほしい。また前面にも49mmのネジが切ってあるので、対応するフィルターやレンズキャプも使用可能だ。
なお筆者が購入した2020年2月の段階では、Lマウント用は販売されていなかった。しかしUtulens自体はLeica Lマウントで作られているので、別途Leica Lマウントを使用できるアダプタを用意していれば、SIGMA fpでも使用可能だ。ただし、GIZMONのサポートは受けられなくなるので注意。
僕は上のLeica MマウントアダプターにL/M変換リングを噛ませて使用している。ヘリコイドがついたアダプターなので、写ルンですで禁断の近接へのピント合わせも可能だ。ヘリコイドで近接撮影した作例が下記。
SIGMA fpとGIZMON Utulensで「デジタル写ルンです」に
初めからこうなることが決まっていたような収まりのよさ。GIZMON Utulensの発売時点ではSIGMA fpの開発発表すらなされていなかったので、そんなはずはないのだが。
レンズ付きフィルム「写ルンです」のレンズを再利用したGIZMON UtulensをSIGMA fpに装着すれば、それはさながらレンズ付きフルサイズセンサーだ。
この塊感が気持ちいい。使用感はコンデジそのもの。いや、レンズが沈胴しないので、コンデジより身軽かもしれない。
写りもさることながら、撮影体験が他では味わえない快感
写りに関しては冒頭で作例を見てもらった通り、ローファイ感がなんともいえない魅力だ。しかしこのGIZMON Utulensの最大の魅力はその撮影体験にある。
- カメラを向けてシャッターを切るだけで撮れる速射性
- 絞りもフォーカスも固定だから他に集中できる
- こんな光学系でちゃんと結像し解像するのか、という感動
このレンズだからこそ味わえる体験というのは上記の通り。それぞれ深掘りしてみよう。
カメラを向けてシャッターを切るだけで撮れる速射性
この速射性は写ルンですそのもの。撮りたいと思った瞬間を絶対に逃さない。
ISOオート、シャッタースピード下限1/125秒くらいに設定しておけば大抵のものは撮れる。多少被写体ブレしていても、被写体が近すぎてピンボケしてもGIZMON Utulensならそれすらも愛おしく思えるから不思議だ。
GIZMON Utulensは日常の中で使うのがちょうどいい。その速射性ゆえ、メインの活動を邪魔することがないからだ。
例えば家族や友人と出かける際に使えば、スナップのために立ち止まる必要すらなくなる。通勤や出張の時にもさっと取り出してさっと撮ることが可能。電車に乗り遅れる心配もない。
普段よく見慣れた景色だからこそ、万が一ミスショットになってもダメージは小さいし、上手く撮れれば新たな発見があるかもしれない。プラスしかないのだ。
絞りもフォーカスも固定だから他に集中できる
絞りは固定だし、フォーカスもパンフォーカス(1m〜∞)になるように設定されていて基本的に調整できない。もちろん単焦点なので画角も32mm固定だ。設定できるパラメータが少ないからこそ、他に集中することができる。
「他に集中」というと構図などと考えがちだ。確かに構図にも集中できるだろう。しかし僕の考える「他に集中」とは写真撮影以外を指す。前項とも重複するが、友人との会話だったり肉眼で見るその瞬間だったり。
逆説的ではあるが写真以外に集中できることによって、シャッターチャンスを見逃さなくなる。そんな効果がGIZMON Utulensによって得られると感じている。
そういう意味では、小型で存在感の薄いSIGMA fp + GIZMON Utulensの組み合わせは最高だ。
こんな光学系でもちゃんと結像し解像するのか、という感動
カメラ用の交換レンズといえば複数のガラスで構成されたものをイメージする人がほとんどだろう。しかしGIZMON Utulensはたった1枚のプラスチックレンズで構成されている。
こんなのでちゃんと写るのかと不安に思ったが、意外や意外(ちゃんと写る評価に個人差はあるものの)ちゃんと写る。
中央部ならきれいに結像してそこそこ解像もしている。もちろんSIGMA fpの約24MPで等倍表示すれば甘さはあるが、スマホくらいの大きさでの表示なら十分すぎるほど。
これは素直に驚きだし、大口径化やAFモーター搭載、収差の補正のためにあんなにレンズが大型化してしまうのも面白いなあと思った。
今日のぐうの音
本日は変わり種のレンズを紹介してみた。非常に安価で癖の強い描写なのでオールドレンズ入門としてもおすすめできるし、オールドレンズファンこそレンズキャップがわりに持っておいて損はないと思う。
これ、薄すぎるのでレンズキャップとして使うのもアリだな、と思ってきた#Utulens #SIGMAfp https://t.co/KY5UegOLbJ
— るびこ@理系男子のぐうの音 (@ruvico_gunone) February 13, 2020
- 周辺部の特徴的な描写と
- ピント合わせすら不要な撮影体験
を味わえるレンズとしてGIZMON Utulensは第一候補となるのでチェックしてみてほしい。
ちなみに写ルンですのファインダーを再利用した外付けOVFや、17mmの超広角でAPC-Cに適したWtulensも用意されている。