マイク・マニャラックさん。
Courtesy of Mike Manalac
- 経理部長のマイク・マラニャックさんは、野心的なキャリアと家庭生活の両立に苦労していた。
- マラニャックさんは報酬よりもワーク・ライフ・バランスを選んだが、それでも家庭を持つという目標にはまだ手が届かなかった。
- マラニャックさんはサンフランシスコのベイエリアから生活費の安いシカゴに移り住み、ついに家庭を持つことができた。
30代になったマイク・マラニャックさんが望んでいたのは、ワクワクするようなキャリアと家庭を築くことだった。ただ、その両方を手に入れることがいかに難しいか、マラニャックさんは分かっていなかった。
マラニャックさんはシカゴ在住のグーグルの経理部長で、妻と3歳の子どもがいる。これまでPwCやウォルマートなどで働いてきた。 仕事で成功するには、犠牲を払う必要があることをマラニャックさんは分かっていた。ただ、そうした犠牲は"家庭生活を最優先させる"という自分の目標としばしば相反することにすぐに気付いた。
「常に仕事を最優先しなければならず、勤務時間外にやっていることを中断して電話に出たり、ノートパソコンに向かったりしていました」とマラニャックさんはBusiness Insiderに語った。
「パッとしないキャリアと数々の後悔で終わりたくはなかったけれど、働くために生きるワーカホリックにもなりたくありませんでした」
マラニャックさんは11年、複数回の戦略的な転職を経て、ついに念願のワーク・ライフ・バランスを手に入れた。後悔はない。ここに至るまでの"大きな決断"について、マラニャックさんに話を聞いた。
報酬よりもワーク・ライフ・バランスを選択
マラニャックさんのキャリアが猛烈な勢いで動き出したのは2016年、それまで8年間監査部長として働いていたメリーランド州ボルチモアからカリフォルニア州サンフランシスコに移り、PwCに入社し、シリコンバレーのテック企業で働くチャンスに近付いた時だった。ところが、マラニャックさんはわずか5カ月でPwCを辞めた。
「わたしと妻はサンフランシスコに引っ越したばかりで、新しい"地元の街"を探検するのをとても楽しみにしていたんです」とマラニャックさんは当時を振り返った。
「でもわたしが平日は1日12時間、土曜日も半日仕事をしていたので、一緒に探検する時間がほとんどありませんでした。それぞれが別々の生活を送っているような感じでした」
マラニャックさんは昼食と夕食も職場で済ませ、日の光を目にしない日もあったという。自宅に帰る頃には、何はともあれ眠りたいと思う日がほとんどで、自分と妻は夜中に行き交う船に過ぎないように感じていた。
「自分たちがルームメイトのような生活を送っているように感じ始めて、変化が必要だという意見で一致しました」
PwCを辞めた後、マラニャックさんはウォルマートのeコマース部門の仕事に就いた —— ワーク・ライフ・バランスは大きく向上したものの、給料も大幅に減った。それでもマラニャックさんは価値ある決断だったと感じていた。ワーク・ライフ・バランスが大幅に改善されたからだ。
夢の仕事を求め、ついに…!
潮目が変わったのは、マラニャックさんが30歳の時だ。2017年、グーグルから仕事のオファーを受けた。それはベイエリアに引っ越してきて以来、ずっと追い求めていた夢の仕事だった。
マラニャックさんは1年以上、定期的に自身のレジュメを更新して、グーグルのリクルーターにEメールで送っていた。すると、電話面接のオファーがあった。それから2カ月の間、複数回の面接を経て、マラニャックさんは仕事のオファーを受けた。
「グーグルの報酬パッケージには、給与25%アップ、年間ボーナス、株式報酬も含まれていました」
「高いレベルのパフォーマンスが維持できている限り、全てのアメニティーを利用できました」
マラニャックさんが日中にジムに行きたい、自転車に乗りたい、キャンパスの別のオフィスを訪問したい、マッサージを受けたいなどと思えば、許可を得たり、罪悪感を覚えることなく、自分のしたいようにすることができた。
アメニティーや報酬は充実していたものの、サンフランシスコのノブ・ヒル地区にある寝室が1つしかないマンションの家賃はほぼ3000ドル(約45万円)で、毎日4時間の通勤に耐えなければならなかった。また、マラニャックさん夫妻は子どもを持ちたいと考え始めていたが、経済的に準備が整うまで待たなければならなかった。
そこでマラニャックさんはベイエリアを出て、グーグルのシカゴ・オフィスに移ることにした。
もっとコスパの良い街へ
ふたりともサンフランシスコが好きになっていたが、自分たちにとってはシカゴの方が家を持ち、子どもを持つには良い場所だと分かっていたとマラニャックさんは語った。
「シカゴは生活費も安くて、公共交通網も発達しているし、ミシガン州とメリーランド州にいる自分たちの家族にも近くなるので、自ら異動を志願しました」
ふたりはシカゴで3ユニットある家を83万ドルで購入し、自分たちは3つのうち1つのユニットで暮らし、残りの2ユニットを貸して、その賃貸収入で住宅ローンの月々の返済のほとんどを賄っている。
「毎月2242ドル、年間2万6913ドルの保育料を補い、自分が望んでいた家庭生活のバランスを手に入れる上で、これは良い投資であり、ゲームチェンジャーです」
新社会人へのアドバイスは「初めの10年間は戦略的に」
後悔はないものの、理想を言えば、30代前半でこのキャリアに到達するために、もう2、3年早くリスクを取った方が良かったとマラニャックさんは話している。
「2008年の大不況が始まる頃に自分は社会人になったので、キャリア上の決断は慎重にならざるを得ませんでした」
マラニャックさんは最初に就職した会社に7年間勤めたが、さまざまな仕事に挑戦し、幅広い経験を積むのに最も重要な時間だったと考えている。
自分が直面したようなワーク・ライフ・バランスの問題を回避したいと願う新社会人は、人生と職業において自分の求めるものを明確にしておくようマラニャックさんはアドバイスしている。
「特にキャリアの最初の10年間をどう過ごすか、戦略的になってください」とマラニャックさんは話している。
「人生には追いつく方法があるので、計算されたリスクを取って大きくスイングするためにこの最初の10年を使ってください」