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グーグルがまだ創業から1年にも満たない頃のこと。同社の出資者のひとり、ジョン・ドーアは同社の社員たちに対し、組織をまとめるための「OKR(Objectives and Key Results:達成すべき目標と、目標達成のための主な成果)」という手法についてプレゼンを行った。
ドーアのプレゼンスライドの1枚
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OKRはもともとインテルで使われていたものだ。その後グーグルではすぐOKRが浸透し、今に至るまで使い続けられている。OKRは企業、チーム、また個人レベルでの体系化に使うシンプルな手法だ。あなたの会社がOKRを使っていなかったとしても、プライベートで、または自分個人の仕事において、役に立つかもしれない。
グーグル・ベンチャーズ(グーグルの投資部門)のパートナーであるリック・クラウは以前、OKRの使い方について1時間20分のプレゼンを行った。グーグルがどう運営されているのかを知ることができる、大変興味深い内容だ。どんな会社も、また、シンプルで分かりやすい手法を使って仕事に取り組みたいと思っている個人にも参考になる。
OKRの要素は2つ
さっそくOKRの使い方を説明しよう。
まず「目標」を設定する。そして、その目標を達成する助けとなる、数値化された「主な成果」をいくつか設定する。
目標は明確かつ数値化できるものにすること。例えば、「ウェブサイトの見た目をよくしたい」ではだめで、「ウェブサイトのパフォーマンスを30%速くする」「エンゲージメントを15%アップする」といった目標にする。
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クラウはグーグルで「Blogger」というブログプラットフォームの業務に携わっていた時、四半期ごとにいくつか目標を設定していた。
例えば、ある四半期の目標は「Bloggerの評判をよくする」というものだ。Bloggerは当時かなり大規模になっていたが、Tumblrなど他のブログサービスなどが注目され始めると、人気に陰りが見えてきた。
Bloggerの評判をよくするため、クラウは簡単に測定できる成果を設定した。
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クラウによると、グーグルでは年間OKRと四半期OKRを設定しているという。年間OKRはその年の大きな全体的な考え方を示す。ひとたび設定したら絶対に変更できないというものではなく、その年を通して進化していく。ただし四半期OKRは変更しない。
またグーグルでは、全社OKR、チームOKR、マネジャーレベルのOKR、個人レベルのOKRを設定している。それらが組み合わさることで、会社がブレないように機能するのだ。
クラウによれば、社員が四半期ごとに設定するOKRは4〜6つが適している。それ以上設定すると、疲れ切ってしまうからだ。
OKRの点数は0.6〜0.7が望ましい
四半期が終わるごとに、自分の成果指標を確認する。グーグルでは0から1のスコアを使う。各成果指標について目指すのは1を採ることではなく、0.6〜0.7を採れることだ。
もし1が採れたら、成果指標が簡単すぎたということになる(クラウによれば、「1をいくつも採れるということは、素晴らしい結果を出したというより、本気でやっていないということ」らしい)。逆に0.4未満なら、何がまずかったのかを真剣に考える必要がある。
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クラウの例に戻ると、彼が自分の設定した成果指標についてどれくらい達成できたのかが書かれている。業界向けのイベントで講演をすることは簡単だった。実行もできたので、1となる。DMCA関連の成果指標については苦戦したが、厳しい内容だったので驚きはない。
点数をつけるのに数分以上かけるべきではない、ともクラウは言う。何点をつけるか悩むのに時間を使うのではなく、目標に向かって時間を使うべきだということだ。
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グーグルでは、経営陣を含め全員のOKRが公開されている。社員ディレクトリを見れば、同僚のOKRも社員プロフィールの一部として表示されているのだ。OKRの内容だけでなく、それまで数年間のOKRの点数も見ることができる。
これを怖いと思う人もいるかもしれないが、グーグル社員にとっては、みんなが何に対して仕事をしているのか、こうすることで分かりやすくなるのだ。
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クラウは以前、YouTubeのホームぺージ担当だったと言う。会社の誰かが自身の製品のプロモーションのためにYouTubeで動画を流したいと考えたとしよう。するとその同僚はクラウのOKRを見て、その四半期のクラウの目標を確認する。
こうすることで、ホームページに動画を載せてもらうようクラウを説得するための話法を構成しやすくなったり、クラウが次の四半期のOKRを考えるときのための種まきをしたりすることができるのだ。
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OKRは昇進を決定する目的では使われていない。しかし、社員が自身の達成事項を意識するのに使うことはできる。そろそろ昇進したいと思っている時に、OKRがあれば自分が会社にどう貢献したかをすぐに簡単に確認することができる、とクラウは言う。
簡単で単純に聞こえるかもしれないが、それがこのOKRの魅力でもある。少ない目標を立ててそれに向かっていくことで、ブレずに自分の仕事をできるようになる。
OKRのしくみについてのプレゼンテーションの完全版はこちら。
Startup Lab workshop: How Google sets goals: OKRs
Google Ventures
※この記事は2020年10月28日初出です。