[go: up one dir, main page]
More Web Proxy on the site http://driver.im/

【2023年独身の日セール】日本ブランドには逆風も、消費低迷で過去最高の商戦か

インサイド・チャイナ

独身の日セールで注文された商品を梱包する倉庫の従業員。今年のセールは節約志向を追い風にGMVが伸びると見られている。

Reuter

「独身の日(ダブルイレブン)セールはアマゾンのブラックフライデーや楽天スーパーセールのように定番のセールになっていくのではないか」

同セールを2009年に始めたアリババグループの関係者が筆者にそう告げたのは2年前だった。毎年11月に行われる中国最大のECセール「独身の日」は、世界最大の規模を誇り、2010年代半ば以降は「セール」の位置づけを超え、中国の経済成長の象徴であり、消費のお祭りであり、世界で報道されるニュースになっていた。

だが2年前の時点で、アリババの関係者は「祭典色が薄れ、海外で取り上げるようなニュースでもなくなっていく」と話していたのだ。実際、今年は日本でも同セール関連の情報が激減している。

ただ、さまざまな理由でセールのニュース価値が薄れても、今年の独身の日セールは消費者の節約志向を追い風に、過去最高のGMV(流通総額)になるとの予想もある。セールの長期的な「変化」と今年の傾向を掘り下げてみたい。

「祭典」から「定番セール」へ

2023-11-02T083344Z_1930359611_MT1SIPA0007ZIHQX_RTRMADP_3_SIPA-USA

独身の日セールでライブコマースを行う出店者。

Reuter

独身の日セールの「ニュース価値」は、11月12日に日付が変わった瞬間にアリババが発表するGMVだった。毎年倍々ゲームで増えていき、「ヤマダ電機の1年分の売上高を〇時間で超える」「(セールのピークである)11日午前11時に、前年のGMVを超えた」など、分かりやすい言葉に置き換えられ、中国の消費の勢いが説明されてきた。

勢いの裏にはからくりもあった。11月11日の1日限りだったセールは、ずいぶん前から期間が延び、実質的には10月下旬から始まっている。京東商城(JD.com)、拼多多(Pingduoduo)など他のEC大手や家電量販店もそれぞれ独身の日セールを行っており、アリババのGMVだけが独身の日のGMVというわけでもない。海外で速報されるアリババのセールのGMVは、シンボル的な数字になっており、数字をつくる側もプレッシャーにさらされていた。

アリババ

独身の日のGMVは2010年から10年で530倍になった。

アリババグループのプレスリリースより

独身の日セールへの参戦プラットフォーム・企業が増えると競争が激しくなり、「結局どこで買えば一番お得なのか」も分かりにくくなった。安さを求めるなら「iPhoneならクーポンを組み合わせれば拼多多が最安値」「でも上位機種だと京東が安い」と研究が必要で、攻略ゲームのようになっていた。

こうした手法に転機が訪れたのは2021年。アリババはそれまで午前0時だったセール開始時間を午後8時に変更し、11月11日の1日限りだった決済・発送日も前倒し・分散した。各プラットフォームのキャンペーンが複雑化し、消費者にとって分かりにくくなった反省に基づき大幅に改善したわけだが、習近平政権が格差を是正する「共同富裕」を掲げ、データと富を独占するメガテック企業を敵視していたことも、アリババの“自主的な改革”と無関係ではなかった。

アリババは毎年、11月11日から12日への日付の変わり目にカウントダウンイベントを行い、熱狂を演出していたが、2021年にはそれも取りやめた。そして2022年にはGMVの発表も中止した。祭典との決別である。

京東などライバル企業は変わらずGMVを発表しているが、海外で注目されるのは、セールの創造主であるアリババの数字だけなので、同社が数字を出さなくなることでセールのニュースとしての価値は大きく下がった。

企業分割で情報発信一元化できず

Popular

あわせて読みたい