クリエイターの祭典「Adobe MAX 2018」が10月15日(現地時間)、アメリカ・ロサンゼルスで開幕する。今年のAdobe MAXは、15日〜17日の開催期間に全世界60以上の国や地域から、のべ1万4000人以上のクリエイターが参加するとアドビは見込んでいる。
この祭典にあわせて、アドビはクリエイター向けツールの多数のアップデートや、独自のAI「Adobe Sensei」を駆使した次世代アプリが複数登場する予定だ。
なかでも注目は、待望のiPad版フォトショップを含め、iPadやiPhone(iOS)版などの強力なクリエイター向けアプリが複数登場することだ。
ついに登場、フル機能版「Photoshop CC on iPad」
まさに「待望の」と感じている人も多そうなiPad版フォトショップがついに2019年、登場する。「Photoshop CC on iPad」は、基本的に機能がデスクトップ版と同じ。iPadでも使える、“完全にフル機能のフォトショップ”としてデビューする。つまり、PSDファイルそのものを完全サポートし、レイヤー機能やマスク機能などフォトショップに欠かせない機能がそのままiPadでも使えるということだ。
またアプリ名に「CC」とあるように、アドビのCreative Cloudを通して、デスクトップ版とiPad版、それぞれのアプリを行き来しながら作業を継続できる設計(アドビは“ラウンドトリップ”と呼んでいる)が特徴だ。
AdobeMAX2018では、このプレビュー版が公開される予定だ。
まさに次世代、YouTuber向けの動画編集ソフト「Premiere Rush CC」
次の1本も強力だ。6月にプレビュー版を発表していた、まったく新しいクラウドベースの動画制作ツール「Premiere Rush CC」(以下、Rush)の正式版、Ver.1.0を投入する。
RushはYouTuberやビデオブロガーを強く意識した仕様で、デスクトップ、スマートフォン、タブレット(iPad)のマルチデバイス対応が特徴。クラウド上の動画ファイルをどのデバイスからでも最新の状態で編集でき、簡単な操作で本格的な動画作品がスピーディーに制作できることを重視したアプリになっている。
Rushはプレミアの流れをくむ、いわゆるオールインワンソリューションであり、カット編集作業、カラーやオーディオ調整、動画の一部に別の動画を埋め込むPinP編集などもできる。こう書くとごく一般的な動画編集アプリのように見えるが、驚くのはこうした高度な編集機能を、iPhoneやiPadでも使えるという点だ。
フレーム単位で細部にこだわる編集だけではなく、スマホで撮影、スマホで編集、ナレーションをその場で被せてTwitterやYouTubeへ投稿する……といった、新しい世代のクリエイターを強く意識した設計になっている。
新たなプロ向けお絵かきツールと、注目のAR制作ツールの開発版も披露
このほか、iOS対応のまったく新しいクリエイティブツール2つの開発版などの披露も予定される。
完全新作のプロ向けお絵かきツール「Project Gemini」
1つめは、「Project Gemini」(アドビ関係者はジェムナイと発音していた)。ペンタブレットで使う、プロ向けのいわゆるお絵かき(ドローイング)ツールとして開発が進んでいる。フォトショップと同様のビットマップ形式でも、イラストレーターのようなベクター形式でも描けることが特徴だ。
アドビによると、フォトショップのブラシが適用できるほか、新機能のブラシも用意され、油絵や水彩画のようなトーンの表現もできるという。
ファイル形式はPSDファイルになる見込みで、CreativeCloudを使ってフォトショップと行き来しながら制作が行える。
まず2019年のiPad版の提供を予定しているが、製品のビジョンとしてはiPad(iOS)に限らず、SurfaceのようなさまざまなWindowsタブレットなどへの対応も視野に入れているという。
ノープログラミングでARコンテンツが制作できるツール「Project AERO」
2つめは、6月のアップルの開発者カンファレンス「WWDC2018」でその概要が発表され、「プログラミングのスキルがなくても、ARコンテンツがつくれる」ということから注目を集めているクリエイティブツール「Project AERO」(エアロ)。こちらも、より詳細な情報が公開される。アドビによると、AdobeMAXの講演のなかで、ある程度時間を割いて解説がなされるという。
これ以外にも、アドビのAI「Adobe Sensei」のパワーを使ったAI系の機能や、ほとんどすべてのクリエイティブ系アプリについて、非常に広範なアップデートが発表される予定になっている。
数多くの話題がありそうな基調講演など注目の講演の情報は、現地から追ってお届けする予定だ。
(文、写真・伊藤有)