米下院議長、トランスジェンダー議員の女性用トイレ使用禁止を支持
米連邦下院のマイク・ジョンソン議長(共和党)は20日、トランスジェンダー女性の議員が連邦議会議事堂の女性用トイレを使用することを禁止する案を支持した。
ジョンソン下院議長はこの日の声明で、「女性には女性だけの空間が必要」だとし、トイレ使用をめぐる新規則は議事堂と下院のオフィスビルで実施可能だと述べた。
事の発端は、下院選でサラ・マクブライド氏(民主党、デラウェア州)が、トランスジェンダーであることを公表している初の連邦議員として当選したことを受け、ナンシー・メイス下院議員(共和党、サウスカロライナ州)が女性用トイレの使用を禁止する決議案を提出したことだった。
マクブライド氏は声明で、自分は「トイレについて争うために」選挙で選ばれたわけではないと述べた。
「私はデラウェア州民のために闘い、一般家庭が直面するコストを下げるためにここにいる」とし、ジョンソン下院議長による新規則に「たとえ自分は反対だとしても」、それに従うつもりだと付け加えた。
「この国が直面している真の問題から目をそらそうとするこの試みは、私の気をそらすことはできない」
マクブライド氏は来年1月から下院議員として活動する。
民主党の反応
ジョン・フェッターマン上院議員(ペンシルヴェニア州)など、マクブライド氏の民主党の同僚議員の多くは、規則の変更をより厳しく非難している。
「誰かをおとしめることを私に要求するのなら、私には失うことを恐れる仕事は一つもない」と、フェッターマン氏はソーシャルメディアに投稿した。
トイレ使用をめぐる決議案を提出したメイス氏が、同僚議員をいじめていると非難する人たちもいる。
「これはあなたにとっての優先事項だ。彼女(マクブライド氏)をここに迎え入れて私たち全員が米国民に真の成果をもたらせるように一緒に取り組むのとは対照的に、(将来の)議会メンバーをいじめたい、そういうことだ」と、民主党のハキーム・ジェフリーズ下院少数党院内総務は述べた。
連邦議会の男女別設備が対象
新規則は、更衣室やロッカールームなど、議事堂や下院のオフィス施設内にあるすべての、男女で分けられている設備に適用される。下院議員にはそれぞれ専用のトイレがあるほか、議会施設の一部にはユニセックスのトイレもある。
議事堂内の施設管理を担う下院議長には、トイレをめぐる方針を提示する権限がある。
メイス氏は以前、この措置はマクブライド氏を標的にしたものだと述べていた。メイス氏は19日、自分の新たな同僚に対する「絶対的な、そしてそれ以上の」対応だと記者団に語った。
「これは女性に関する問題であり、私たち(女性)のプライバシーと安全に対する権利の問題だ」とメイス氏は述べた。「私は、女性のプライベートな空間に生物学的男性が入るのを認めるつもりはない」。
メイス下院議員とは
メイス氏は20日、すべての連邦政府施設でトランスジェンダー女性が「女性のプライベートな空間」を使用するのを禁止する追加の決議案を提出した。
2020年に初当選したメイス氏は、サウスカロライナ州の激戦区で穏健派の共和党員として選挙を戦った。
2021年の米紙ワシントン・エグザミナーの記事によると、メイス氏はLGBTQ(性的少数者)の権利と平等を強く支持している」と述べていた。この記事は今も公式ウェブサイトに掲載されている。
メイス氏は当時、「誰一人差別されるべきではない」と書いていた。
人工妊娠中絶については穏健な立場で、避妊へのアクセスを全国に拡大することを推進しているとして、党内の社会的保守派からの批判に直面してきた。
メイス氏の現在の行動と過去の発言に矛盾があるのではないかと問われると、メイス氏の広報担当ガブリエル・リプスキー氏は「私たちは同性婚を支持し、婚姻尊重法案について2度賛成票を投じた。女性の保護が差別だと考えるのなら、そう考えるあなた方の方に問題がある」と述べ、連邦議会でのトイレの使用をめぐる決議案を支持すると改めて表明した。
共和党とトランスジェンダー問題
ワシントンや各州議会の共和党は2年以上にわたり、トランスジェンダーをめぐる問題に焦点を当ててきた。これまでに未成年のジェンダー(性自認)関連手術へのアクセスが制限されたり、トランスジェンダー女性のアスリートの女性競技への出場が禁止されるなどしてきた。
2016年の米大統領選で、ドナルド・トランプ候補(当時)はトランスジェンダーの生徒自身が「適切だと思う」トイレを使用するのが認められるべきだと発言したが、共和党内からの批判に直面し、その姿勢を転換させた。
追跡調査会「AdImpact」によると、今年の大統領選の最終段階では、トランプ候補と仲間の共和党員はトランスジェンダーの権利に反対することに注力し、関連広告に2億1500万ドル(約330億円)を費やしていた。
今年の大統領選で投票した約12万人を対象にしたAP通信の調査「VoteCast」によると、有権者の半数以上がトランスジェンダーの権利を支持する動きは「行き過ぎている」と回答した。
ただ、トランスジェンダーをめぐる問題が実際にどの程度、有権者を投票に向かわせたのかは不明だ。複数の世論調査では、有権者はトランスジェンダー問題よりも経済や移民、民主主義、そのほかの重要な政策分野の方を優先的に考えていることが示されている。