アフガンで地雷除去中の英NGOスタッフ10人射殺 ISが犯行声明
アフガニスタン北部バグラン州で8日夜、地雷除去活動にあたっていた英NGO団体「ヘイロー・トラスト」の作業員が覆面姿の武装集団に銃撃され、10人が死亡、十数人が負傷した。
武装集団は8日午後9時50分ごろ、作業員の宿泊拠点を襲った。作業員は1日がかりの地雷撤去作業を終えて拠点に戻っていた。
過激派組織「イスラム国(IS)」は、メッセージアプリ「テレグラム」のアカウントを通じて犯行声明を出した。
事件をめぐり、アフガニスタン当局は同国の反政府武装勢力タリバンを非難したが、タリバン側は関与を否定した。
ヘイロー・トラストのジェイムズ・コワン代表はBBCに対し、アフガニスタン当局の主張とは反対に、タリバンは現地で協力してくれたと述べた。
アフガニスタンでは5月1日に駐留米軍の撤退が始まって以降、暴力行為が急増している。
国際部隊の撤退は、アフガニスタン政府とタリバンとの和平協議が膠着(こうちゃく)するなか進められている。
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「冷酷に」撃っていった
コワン氏はBBCラジオ4の番組「トゥデイ」で、襲撃犯は「ベッドからベッド」へ次々に作業員を「冷酷に」撃っていったと明かした。一方で、タリバンが現場で作業員を助けてくれたとした。
「タリバンがこの事件への関与を否定していること、そして実際に地元のタリバン・グループが我々を助け、襲撃犯を追い払ってくれたことを知っておくのが重要だと思う」
「我々にはヘイロー・トラストとして、このひどい紛争の両者の側で活動する能力がある」と、コワン氏は付け加えた。
コワン氏はその後、BBCアフガニスタン・サービスに対し、犯人は特に少数民族ハザラのメンバーを狙っていたと述べた。
アフガニスタンで3番目に大きい民族集団を構成するハザラは、主にイスラム教シーア派であることから、長年にわたって差別と迫害を受けてきた。近年では、イスラム教スンニ派であるISやタリバンによる拉致・殺害の標的にされている。
「武装した男たちが我々のキャンプにやってきて、ハザラ族のメンバーを探し出し、殺害した」とコワン氏は説明した。「これは予想外だった。(アフガニスタンの)広範囲の治安情勢は理解しているが、こんな冷酷な殺人は予想していなかった」。
タリバンは関与を否定
アフガニスタン内務省の報道官は記者団に対し、タリバンの犯行だと説明した。一方、タリバンのザビフラ・ムジャヒッド報道官は、無防備な人たちへの攻撃を非難するツイートを投稿した。
「我々はNGO団体と正常な関係を築いている。我々のムジャヒディン(イスラム聖戦士)は決してこのような残虐な攻撃はしない」
バグラン州の複数の地区では、タリバンと政府軍の激しい戦闘が起きている。
少数民族ハザラが標的か
バグラン州の警察は、生存者が証言する映像を記者団に公開した。生存者は、銃撃犯が発砲前に少数民族ハザラ出身者がいるか聞いてきたと述べている。
「5、6人の武装した男たちがやってきて、私たちを一室に連れて行った」と、この生存者は語った。「最初にお金と携帯電話をすべて取り上げられ、それからリーダーは誰か聞かれた。男たちは『お前たちの中にハザラ人はいるか』と聞いてきた。私たちは『ハザラ人はここにはいない』と答えた」。
この男性は頭を撃たれたが、窓から逃げ出すことができたという。
イギリスを拠点とするヘイロー・トラストは1988年に設立された。10年近く続いた旧ソ連によるアフガニスタン占領時代に設置されたままの兵器を撤去する活動を行っている。
英王室のダイアナ元妃や息子ハリー王子もこの団体を支援していた。