第10回震災10日後の死「避けられた」 父が訴えた異変、悔やむ医師はいま

日本では、いつどこで大地震が起きるかわからない。能登半島地震の被害全容は今も明らかになっていない。首都直下地震は今後30年以内に70%の確率で起こるとされる。どうすれば被害を減らせるのか。都市部が襲われ、6434人が犠牲となった1995年の阪神・淡路大震災の遺族や消防士、専門家のメッセージを伝える。

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 「父の死が病死で、自然な運命だと認定されるのは、ちょっと違うだろう、と。避けられた死だと思った」

 震災から10日後に、父親の豊さん(70歳で死去)を呼吸不全で亡くした神戸市の医師、妹尾栄治さん(63)は、父の死を震災関連死と認定してもらうことにこだわった。震災がなければ、あのとき父が亡くなることはなかったはずだから。医師の感覚としても、その確信はあった。

 同市須磨区にいた父は無事だったが、自宅は全壊。若い頃に肺結核で片方の肺を切除した父は、酸素濃縮器からチューブを通して酸素を吸入する在宅酸素療法が必要だった。避難所生活は「とても無理」と、約50キロ離れた兵庫県姫路市の親戚宅に身を寄せることになった。妹尾さんはそこで父に会えた。

 「足が腫れているんだ」

 父はそう訴えた。詳しくみてやればよかったが、「酸素も行っているし、急に悪くなることはないだろう」と、そのときは重く受けとめなかった。

記事には、阪神・淡路大震災の遺族や消防士らの証言を元に、被災状況を再現した詳細な描写が含まれます。

 その後、父は別の親戚を頼り…

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