公立学校で伝統衣装アバヤ禁止 じつは平等重視?フランスの論理とは

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聞き手・岩田恵実
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 フランス政府は9月に始まった新学期から、アラブ諸国でよく着られる女性の伝統衣装「アバヤ」の公立学校での着用を禁止する通達を出しました。政府は学校での政教分離の原則に沿った措置としています。イスラム系フランス人からは差別だとの反発があり、日本でも「やり過ぎでは」と懸念する声があります。なぜアバヤは禁止されたのか。フランスの政教分離に詳しい東京大学の伊達聖伸教授に聞きました。

 ――公立学校での「アバヤ」禁止はどのような背景があるのでしょうか。

 アバヤは中東やアラブ諸国でよく着られている女性の長衣です。フランスではアバヤを着て登校する生徒が増え、教員から着用に関する明確な基準を設けてほしいという声が上がっていました。

 禁止に至る経緯には三つのポイントがあります。一つ目は、2010年代にフランスで頻発していたイスラム過激派によるテロ事件と、20年にイスラム教の預言者ムハンマドの風刺画を授業で扱った中学教員が斬首された事件です。この影響は大きいと思います。学校の先生にしてみれば、明日は我が身という恐怖感やトラウマがあるのでしょう。

 二つ目は、アバヤが、家父長的なイスラム社会で男性側から「かぶらされているのだろう」という見方をされ、ジェンダー問題などの文脈の中で語られていることです。アバヤと同時に男性用の長衣「カミス」の着用も禁止されたのですが、アバヤばかりに注目が集まりカミスについてはあまり語られていません。

 三つ目のポイントは、アバヤ…

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この記事を書いた人
岩田恵実
国際報道部
専門・関心分野
中国、事件、災害