イノシシ狩りに賞金、かつての保護動物が今や社会的脅威に 中国
香港(CNN) 昨年10月のある早朝、熱探知カメラ付きドローン(無人機)が頭上を飛ぶ中、多数の犬が中国北西部の森を疾走する巨大な動物を追いかけていた。
ドローンの操縦者は、トランシーバーでハンターに「犬が捕まえた! 刺せ! 刺せ!」と叫んだ。
駆けつけたハンターは、体重125キログラムの獣に槍(やり)を突き刺して殺し、2400人民元(約5万円)の報酬を獲得した。
このハンターは、中国北西部の寧夏回族自治区西吉県に雇われ、「賞金稼ぎ」チームで働いている。
彼らの獲物はイノシシである。
中国では近年、農作物に多大な影響を及ぼし、事故やけが、死亡事故も引き起こしている害獣を駆除する試験的プログラムの一環として、賞金稼ぎチームにイノシシの駆除を許可している。昨年2月には、このプログラムは全国的な駆除に拡大された。
ハンターが銃や毒物を使用することは認められていない。だが、野生動物保護が厳しく規制されている中国において、動物の駆除は人々を驚かせた。動物保護団体はこの措置を批判している。
イノシシの襲撃
中国国営の英語放送「中国国際テレビ(CGTN)」によると、イノシシをめぐる問題の要因は、20年以上前にさかのぼる。食用としてあまりにも多くのイノシシが狩られた結果、一部地域では絶滅した。
これを受け、中国政府は2000年にイノシシを国家保護リストに追加。イノシシが多すぎる地域限定で許可された人のみ狩猟を行うことが認められた。
その後、天敵がほとんどいなくなったイノシシの個体数は約1万頭から約200万頭に急増した。
国家林業・草原局(NFGA)は23年1月、34省級のうち八つを除くすべての地域でイノシシが資産や人々に損害を与えていると発表した。
昨年秋に300頭のイノシシを駆除した西吉県では、主にイノシシが農地を荒らすなどの行為によって、23年だけで200万元を超える経済的損失がもたらされたと、中国のネットメディア「澎湃新聞」に語った。
命を落とした人もいる。
澎湃新聞によれば、23年12月、湖北省に住む51歳の村民がイノシシに噛(か)まれて失血死した。3年前には四川省南で村の役人がイノシシに襲われ亡くなった。
イノシシは個体数の増加に加え、急速な都市化により生息地が縮小したため、都市部でも頻繁に目撃されている。
昨年10月には、南京のホテルのロビーにイノシシが入り込み警備員に捕まった。
その2日前には、体重80キロの別のイノシシが杭州市東部の繁華街を暴れ回った。