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米選挙で死者が投票したとの情報拡散、実際に調査した結果

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デトロイトの選管当局者が不在者投票を仕分けする様子=4日/Elaine Cromie/Getty Images

デトロイトの選管当局者が不在者投票を仕分けする様子=4日/Elaine Cromie/Getty Images

(CNN) 米大統領選で民主党員は死者を使ってミシガン州の選挙人団の票をトランプ氏から奪った――トランプ氏の家族やギングリッチ元下院議長、グレネル元国家情報長官代行といった共和党の著名人が流す情報を見て、それを信じる人もいるだろう。

だが、トランプ氏支持者が最近オンライン上で流した偽情報の多くと同様に、この主張も詳しく調べると誤っていることがわかった。CNNがこの主張やその根拠を分析した結果、1つの実例も見つけることができなかった。

一例が5日夜にツイッターで拡散されたミシガン州の登録有権者の氏名と生年月日、郵便番号を記したとされるリストだ。その出どころやそれを公開した人物の身元は不明だ。

CNNはそのリストに記載された1万4000人あまりのうち、最初から順に25人、あとはランダムに25人の計50人を調査した。まずはミシガン州の有権者情報データベースを通じて氏名を照合し、その後その人々が死亡しているかどうかを公的に入手可能な情報と照らし合わせた。

その結果、50人中37人は死亡していて投票もしていないことが分かった。残りのうち5人は生きていて投票もし、8人は生きているが投票していなかった。

CNNが調査したサンプルはリスト全体を表すものではないが、その傾向は明らかだ。たった1つのサンプルも死者が投票した例には該当しなかった。

CNNが調査したバージョンのリストはその後、掲載していたサイトから削除された。

動画も拡散

ミシガン州で死者が投票したとの偽情報は4日夜遅くにソーシャルメディアに投稿された動画を通じて広まった。

典型的な例は、氏名と生年月日、郵便番号をミシガン州が運営する有権者検索サイトで検索してみせる動画だ。動画には110歳を超えているにもかかわらず投票用紙を請求し、その返送に成功しているという投票者の検索結果が示されている。

ネット上で「フレッカス」の名前で知られる右派の著名人、オースティン・フレッチャー氏はそうした動画のいくつかを作成し、拡散させた。

5日未明に投稿されたフレッチャー氏の最初の動画は、1902年3月生まれのウィリアム・ブラッドリーという名の有権者を検索する画面を表示。「ミシガン州ウェイン郡で118歳の『ウィリアム・ブラッドリー』が不在者投票で投票したことがわかった」と述べている。

公的記録を調べたところ、ウィリアム・ブラッドリーという人物は1902年3月生まれで、1984年にミシガン州ウェイン郡で死亡している。だが公的記録は同時に、その息子もウィリアム・ブラッドリーという名前で、同じ住所に住み、生存していて、有権者でもあることを示していた。

デトロイト市の法律専門家、ローレンス・ガルシア氏はCNNに対し、「(死亡しているブラッドリー氏と)ほぼ同じ名前の男性が予備選挙、一般選挙とも投票用紙を請求し適切に投票している」「ただ、最初にその投票用紙が記録されたとき、事務的なミスでその票が118年前に生まれたウィリアム・ブラッドリー氏のものと誤って記録された」と語った。

息子のブラッドリー氏は政治関連の情報の信ぴょう性を確認するサイト「ポリティファクト」に対し、フレッチャー氏の動画が投稿された後に市に問い合わせたところ、署名の合致や生年月日をチェックしているから心配しないでと言われたと明かした。

フレッチャー氏の一連の動画は、トランプ大統領の長男ドナルド・トランプ・ジュニア氏や活動家のカンダス・オーウェンズ氏などがシェアし、合計で数百万回視聴されている。

他にはホワイトハウス政策顧問のフアン・アドレ・カロ氏のように、フレッチャー氏の検索する様子を模倣して動画を作成する人々もいる。前述のグレネル氏はカロ氏の動画をリツイートし、100万回以上再生された。

CNNはフレッチャー氏やカロ氏にコメントを求めたが、フレッチャー氏からは応答がなく、カロ氏はコメントに応じなかった。

ミシガン州州務長官の報道責任者、トレイシー・ウィマー氏はCNNに対し、今回のような誤りはまれに起こりうると説明。たとえば「似た氏名の有権者で、実際にはジョン・スミス・ジュニア氏が投票したのに、ジョン・スミス・シニア氏が投票したとして誤って記録される」ことがあるという。

ウィマー氏はまた、死亡した有権者の投票は却下され、指摘を受ければ地元の事務官が問題を修正できるとも語った。

ウィマー氏は5日遅くにフレッチャー氏のツイートに直接返信し、誤った情報だと記した。だがそのときまでにそのツイートは何万回もリツイートされていた。

誤りやデータベースの癖

死者が票を投じているように見える理由は事務的なミス、データベースの癖、本当に長生きしている人物が投票したことなどが考えられる。

ウィマー氏によると、ときには投票者が生まれた年を誤って登録し投票することがある。それによりまるで死者が投票したように見えるが、「そのようなケースでは、資格がない人が投票しているわけではない」と言及する。

フレッチャー氏が作成した他の動画にはミシガン州の有権者情報サイトで1900年か01年の1月に生まれたとされる複数の有権者が投票を返送したと示されている。

もちろん、これは実際にはそうではなく、もっと単純で悪意のない原因による。

デトロイトの選挙監督者、ジョージ・アズーズ氏はCNNに「1900年1月1日の日付は選挙日直前に到着した不在者投票の一時的なプレースホルダー(代用の文字)としてとして電子的な選挙人名簿で使われることがよくある」「電子的な選挙人名簿で登録を受理するには、プレースホルダーの部分の情報が入力される必要がある」と説明する。

非営利法人「政府説明責任研究所」の二重投票に関する報告書でも同様の説明がある。「いくつかの州の有権者登録システムは、生年月日が欠けている場合に日付を埋める用のデータ、たとえば1900年1月1日や1850年1月1日、1800年1月1日などを利用することがあることは注意すべき重要な点だ」「115歳を超えるような個人が投じた票の大多数はこの3つの誤った生年月日の記録がある」と報告書は記述する。

フレッチャー氏の動画に登場する別の有権者の検索結果もこの説明に合致する。ドナ・ブリッジズという人物は75歳であるにもかかわらず1901年生まれと有権者登録されている。

ブリッジズ氏が暮らす地区の事務官、キャサリン・ルイス氏はCNNに「ミシガン州の有権者で誤って生年月日を1901年1月1日とデータベースに登録されてしまう例は少なくない」と語る。

ルイス氏はさらに「問題とされる有権者は不在者投票を申し込み、その際に州発行の運転免許証を提示し、州法に従って適切に署名と封印をした封筒に入れて不在者投票を返送してきた」「共和党員と民主党員から成る選挙の監視委員会は、この有権者が自分が主張する人物と同一人物であり、署名も一致することについて疑義を持っていない」と述べた。

こうした生年月日が何度も登場してくる点もこの件の手がかりとなるだろう。もし死者からの票を利用してこっそり選挙を盗みたいのなら、同じ月や年に生まれた人ばかりを選ぶ行為はばかげているし、信じがたいほど年を取っていて疑念を生じさせるような人を選ぶのは言わずもがなだ。

死者が投票できない理由

ミシガン州の州務長官事務所は、死者の氏名で投票をすることはほとんど不可能だと説明する。

ウィマー氏は「もし投票用紙を請求したときは生きていてその身分も証明されている人物が投票用紙の受け取り前に死亡し、別の人物がなりすまして投票するという現実にはなさそうなケースであっても、署名の不一致や有資格の選挙人簿にある死亡フラグによってその投票は却下されることになる」と説明する。

実際、CNNはウィスコンシン州の20歳のがん患者の女性が事前投票したものの投票日前に死亡した件で、女性の投票は州法によりカウントされなかったと報じた。

このようなシステムの評価は超党派でリベラル寄りの団体、ブレナン・センター・フォー・ジャスティスなどの独立系組織の調査でも裏打ちされている。

同団体は「信頼できる研究や調査を見ると、違法な投票の割合は極めて少なく、また他の有権者のなりすましといった不正行為の事案はほとんど存在しないという点で一致している」と解説している。

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