婚約破棄に至ったものの、逃がした魚は大きかったと後悔したその直後の双方の視点が斬新でいいと思います。だいたいぼんくら皇太子が頭空っぽそうな令嬢を掴まされてワーワー騒ぐ頃にはヒロインはもっと大物とくっついて何かしら成功させていそうなものですが
、こちらの作品はヒロインが大事業を成し遂げる前のタイミングでいざこざ開始です。まず乗り越えるべき大きな山はぼんくら皇太子の婚約者の扱いなのに棚ぼたスタイルで物語はさくっと次のステップへ…。ええー、ここでぼんくら皇太子が見事な采配でぼんくらの不名誉な称号を返上しつつヒロインの信頼も手繰り寄せる手がかりになるところじゃないのー?なんかラッキーすぎて勢いで会いに来ちゃった!では、手を抜きすぎでしょう。その後一生懸命だったからめでたしめでたしの急展開でぶっ込まれたTLに驚いてるうちにあんなに力を入れていたヒロインの事業も詳しく語ることなくさらっと触れて終わりでした。もっと知りたかったなぁ。個人的に気に入っているのはデキる婚約者に嫉妬してニコニコしているだけの令嬢の方に癒されて笑顔を向けたとかいう陳腐なエピソードがなかったところですね。
ここぞというところで肩透かしは食らいましたがぼんくらの思考の動きをじわーっと読めたし、ヒロインが長年の執着と抑圧に苦しめられた経験があるからこそ気持ちをなかなか断ち切ることもなければ逆に簡単に絆されるようなこともない防衛本能みたいな矛盾も人間らしくて良かったと思います。
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