恋愛は頭で考えるものではないことがよく表されている。やめた方がいいと思ってもはまってしまって、一日その人のことを考えてしまい、会話もなんだか楽しくて。
そんな燃え上がる恋と対照的に、大切なものが燃えてしまう。
でも、彼がいることが全て。
目の前のことに一生懸命、ちょっと抜けているところがアンバランスな魅力をもつヒロイン。計算せずにお色気を彼に振り撒いて虜にしてしまう。
どちらかというと男性に警戒心さえあったヒロインが目覚める。彼がハンサムに見える。
彼は痛い目に遭った過去を教訓に堅物として生きてきたのに、目の前に現れた彼女に感じるものがあり、意思とは正反対に魅了されて恋人関係に。彼が生まじめ顔であれこれ思い巡らすのがなかなか突っ走り気味で、可笑しくて笑ってしまう。特にうなじの毛の場面!
大富豪や大企業CEOに並ぶロマンスのお相手に割となっている銀行頭取だが、この話は単なる肩書で終わらない。成り行き上自ら一担当者のように出会うため、融資決定者視点での応対、担保の査定の説明等々、融資案件の進行の描写もある。それはロマンスが小気味良いスピードで本格進行する前段階では、妙にリアル。
まともな企業経営者としての彼の姿、ヒロインにのめり込んでいく生身の人間としての姿、そのどちらもにヒロインの状況に変化を与えるキーパーソンとして重要性が不自然無く与えられている。
二人の急接近に大波乱を期待しなくてよい。
ヒロインが彼と出会うきっかけとなった物事が無になっても、彼が居てくれる、との、その最大にして最高の大切な存在が、そのことこそ何物にも代えがたいことを示す。テーマが王道。
「わたしは何も失っていない それどころか この世でたった一人しかいないあなたに出会えたの」
出会いと愛する人の存在との素晴らしさを味あわせてくれるロマンチックストーリーだ。
ただ、セクシー場面過多が少し引っ掛かる。もっと描写に工夫が欲しかった。
気になり出してから一緒に過ごす時間が増え始めているときのフワフワした高揚の描写が、出会ってしまった二人の心境の盛り上がりを見届けさせてもらえるようで楽しかった。
憎めない無邪気なママも幸せになり、このお話は、家計破綻の淵からをも立ち直らせる明るい愛のパワーを歌っている。
一番最後のコマに三つのモノローグがあるが、一番目だけで他は要らなかった気がしてならない。
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