「サイロ」や「マスターズ・オブ・ジ・エアー」など──Apple TV+のおすすめドラマ24選【2024年最新】

「コンステレーション」、「ディスクレーマー 夏の沈黙」や「窓際のスパイ」など、話題作から隠れた名作まで充実のラインアップを誇るApple TV+のドラマシリーズ。このなかから、あなたの新しいお気に入り作品が見つかるかもしれない。
「サイロ」より。
「サイロ」より。Photograph: Rekha Garton/Apple

Apple TV+は、いまやストリーミング業界で揺るぎない地位を確立した。サービス開始時には『WIRED』から「奇妙で、悩ましく、欲求不満を感じさせるサービス」と厳しい評価を受けたこともあったが、現在では状況が大きく変化した。ドラマドキュメンタリー、コメディなど、幅広いジャンルにわたって質の高いコンテンツを提供し、充実したライブラリを構築するまでに成長。その進化は目覚ましいものがある。

初めてApple TV+を利用する人は、豊富なコンテンツのなかから何を観るべきか迷うかもしれない。そこで『WIRED』が厳選した、特におすすめのシリーズを紹介したい。

「サイロ」

『WIRED』は以前、このシリーズが高品質なサイエンスフィクション作品であること評価した。1年以上経ったいまも、その事実は揺るがない。ヒュー・ハウイーのディストピア小説三部作を基にしたこのシリーズは、世界的な大災害後に人類が地下シェルターに隔離され、そこで次々と謎が繰り広げられる様子を描いている。シーズン2ではさらに物語が加速することが予想されている。

「ディスクレーマー 夏の沈黙」

アルフォンソ・キュアロン(『ゼログラビティ』)がケイト・ブランシェットを主演に迎えた7部作のシリーズ。キュアロンの映画的な才能が小さなスクリーンに見事に移植され、その魅力を存分に発揮している。ブランシェットが演じるのは、著名なジャーナリスト・キャサリン。ある日、彼女は謎めいた小説を手に入れるが、それが彼女の過去を暴露し、人生を崩壊される危機に襲われる。キャサリンは自らの命運を取り戻すため、その小説の著者を追い詰めることを決意する。

「シュリンキング : 悩めるセラピスト」

妻を亡くした後、娘や患者と再び繋がろうと苦しむセラピスト、ジミー(ジェイソン・シーゲル)の姿が描かれている。暗いテーマが中心にありながらも、職場でのコメディとジミーと共に働くポール(ハリソン・フォード)やギャビー(ジェシカ・ウィリアムズ)とのやり取りが楽しませてくれる。

「窓際のスパイ」

ジョン・ル・カレ風のスパイ小説と『ザ・オフィス』的なドライユーモアの絶妙なバランスが取れた作品だ。落ちぶれたMI5のエージェントたちが集められたスラウ・ハウス(泥沼の家)を舞台に、銃撃戦やカーチェイスから、ユーモラスで変わった会話や仲間達との絆が描かれている。シーズン4からは少し控えめだが、もしいままで見逃していたなら「窓際のスパイ」は要チェックだ。

「バッド・モンキー」

「ジュリンキング」と同じく、ビル・ローレンスが手がけたもうひとつの傑作である。元刑事(ヴィンス・ヴォーン)を主人公に、ダークなユーモアと心温まるストーリーが絶妙に融合している。物語は、突然切断された腕が発見されるところから始まり、その事件の背後に隠された複雑な人間模様を巧みに掘り下げていく。

「サニー」

AppleTVのヒット作、「セヴェランス」の次のシーズンが待ちきれないファンには、このシリーズがぴったりだ。家族を失った女性スージー(ラシダ・ジョーンズ)が、AIロボット「Sunny」との絆を深めながら、墜落下飛行機で亡くなった家族の謎を追うサイエンスフィクション・ドラマである。

「推定無罪」

作家スコット・トゥローの1987年のベストセラー小説『推定無罪』をドラマ化したApple TV+の新リミテッドシリーズ。34年前、ハリソン・フォードが主演した映画版が公開されたが、今回はジェイク・ギレンホールが主演を務め、8部構成のシリーズとしてストーリーが新たに生まれ変わった。ギレンホールは、同僚を殺害したとして告発されたシカゴの検察官ラスティ・サビッチを演じ、犯行を巡る謎が解き明かされていく。

「スティーヴ!(マーティン)ふたつのドキュメンタリー」

この2部作のドキュメンタリーは、単なるシリーズにと言うよりは、スティーブ・マーティンの人生とキャリアを深く掘り下げた、映画のような作品である。第1部では、彼がスタンドアップコメディの世界で成し遂げた成功を追い、第2部では、数々のドラマで演じた役を通じてそのキャリアの軌跡をたどる。ドキュメンタリーの最大の魅力は、マーティン本人の意外性とユーモアが溢れるサプライズの数々にあり、彼の人間性と才能を新たな視点で楽しむことができる。

「マネー ~彼女が手に入れたもの~」

テック業界の億万長者の夫と別れた女性モリー(マーヤ・ルドルフ)が、慈善活動に情熱を注ぎ、新たな人生を歩む姿を描いた心温まるコメディである。クリエイターのアラン・ヤとマット・ハバードは、マケンジー・スコットとジェフ・ベゾスの離婚にインスパイアされた可能性があり、リアルな感情とユーモアが絶妙に融合したストーリーが展開する。豪華なキャストには、ジョエル・キム・ブースター、MJ・ロドリゲス、アダム・スコットなどが揃い、思わず笑顔になるような温かい瞬間を届けてくれる。

「ビッグ・ドア・プライズ」

クリス・オダウドがついに主演として輝く瞬間を迎えたシリーズだ。この作品では、小さな町に現れた魔法の機械によって、住民たちが自分の人生の可能性を知り、それがどんどん人々の人生を変えていく様子が描かれる。奇妙な展開が続く中、ダスティ(オダウド)は、果たして自分の人生に満足しているのか、人生の変化にどう向き合うのかが問われる。

「ディック・ターピンのデタラメ大冒険」

『ディック・ターピンのデタラメ大冒険』は、18世紀イギリスの実在の強盗ディック・ターピンを題材にした、事実を超えるユーモア溢れる冒険シリーズである。ノエル・フィールディング(「ブリティッシュ・ベイク・オフ」)がターピン役を務め、彼がどのようにしてアウトローの伝説的なリーダーとなったのかが描かれている。全6話にわたるこのシリーズは、ターピンの荒唐無稽な冒険や奇想天外な戦略を、軽妙でコミカルに展開している。史実をもとにしつつ、フィクションならではの色彩豊かな描写がターピンのキャラクターを引き立てており、視聴者を夢中にさせる作品だ。

「コンステレーション」

このシリーズこそ見れば、Apple TV+が「新しいHBO」と言える存在に位置している理由がよくわかる。トリッピーで時空を超えたサイエンスフィクションをリリースし続けているAppleTV+だが、今回の作品の内容は、宇宙での災害後に地球に帰還した宇宙飛行士(ノオミ・ラパス)が、何かの異変に気づくというスリラーだ。頭をひねるような展開のサイエンスフィクションは、視聴者をぐっと引き込む。

「マスターズ・オブ・ジ・エアー」

スピルバーグが戦争ものをつくるとなったら誰もがクリックしたくなるだろうが、このシリーズはその期待を上回る仕上がりだ。作者ドナルド・L・ミラーの本に基づき、このシリーズは「ブラッディ・ハンドレッド(血の第100隊)」として知られる第100爆撃隊の空軍兵たちの生涯に深く迫る。彼らは、ナチス・ドイツに対して空から戦うために命をかけるパイロットの集団だ。スティーブン・スピルバーグとトム・ハンクスがエグゼクティブ・プロデューサーを務め、キャストには『エルヴィス』のオースティン・バトラー、『Saltburn』のバリー・コーガン、そして「ドクター・フー」の最新のドクターを演じるンクーティ・ガトワが登場する。

「ニュールック」

同じく第二次世界大戦の背景を持つ「ニュールック」は、ナチス占領下のパリでクリスチャン・ディオール、ココ・シャネル、ピエール・バルマン、クリストバル・バレンシアガが現代ファッションの礎を築いていく様子を描いている。キャストには、クリスチャン・ディオール役にベン・メンデルソーン、ココ・シャネル役にジュリエット・ビノシュ、キャサリン・ディオール役にメイジー・ウィリアムズなど。サウンドトラックはジャック・アントノフが手掛け、パフューム・ジーニアスやフローレンス・ウェルチなどのアーティストによる20世紀初頭の音楽のカバーが満載だ。

「クリミナル・レコード」

ピーター・カパルディ(元「ドクターフー」役)主演のこのシリーズでは、ふたりの刑事が長年解決されていない事件の真相を追い求める。ダニエルはかつてその事件を担当し、容疑者から自白を得ていたが、ジューンは新たな情報を手に入れ、再びその男が本当に殺人を犯したのかを確かめようとする。一見単純な事件解決の物語に思えるかもしれないが、捜査当局の問題点や、急速に変化する英国社会における人種問題を深く掘り下げ、複雑で多層的なストーリーが展開される。事件の背後に潜む社会的・倫理的な問題が次第に浮かび上がり、視聴者はどんどん引き込まれていく。

「ハイジャック」

「ザ・ワイヤー」のストリンガー・ベル役で見せた完璧な演技が印象的なイドリス・エルバが、最新作でその実力を存分に発揮。エルバが演じるのは、家族のもとへ帰るために乗った飛行機がハイジャックされ、交渉することを余儀なくされる企業交渉人。7エピソードにわたって、飛行機内で繰り広げられる緊迫したドラマの背後では政治的駆け引きが展開され、最後まで目が離せない。

「フォー・オール・マンカインド」

「ファウンデーション」よりもずっと以前から、「フォー・オール・マンカインド」は存在していた。本作はApple TV+が野心的に手がけた高級感あふれるSFの先駆けであり、大手ストリーミングサービスに対する挑戦状でもあった。

もしアメリカが月面着陸で出し抜かれていたら、アメリカとソビエトの宇宙開発競争はどのように展開していただろうか?そんな魅力的な仮定から始まる作品だ。NASAの世界観が満載の歴史ドラマでありながら、「スター・トレック」シリーズで知られるロナルド・D・ムーアならではの見どころとなるシーンが豊富で、豪華な出演陣それぞれの物語も丁寧に描かれている。見逃している人は、今からでも追いつける複数シーズンを楽しんでほしい。

「メッシ、アメリカへ」

Apple TV+のサッカーへのの情熱は明らかだ。「メッシ、アメリカへ」は、リオネル・メッシのインテル・マイアミCFへの移籍に関する6部作のドキュメンタリーシリーズ。まさにメッシ旋風を捉えた作品となっている。

「レッスンinケミストリー」

サイエンスライターのボニー・ガーマスが手掛けたデビュー小説を原作にしたこのシリーズは、科学者としてのキャリアを追い求めるエリザベス・ゾット(ブリー・ラーソン)のユニークな物語を描いている。職場のラボで性別を理由に解雇されたエリザベスが、料理番組の司会者として新たな道を歩み始める。しかし、彼女が始めるのは単なる「6時までに夕食をつくる」番組ではない。エリザベスがどのような行動を取るのか──その先には予想もできない展開が待ち受けている。

「ザ・モーニングショー」

視聴者を引きつけるために、どのストリーミングサービスも一流俳優陣を揃えた話題作が必要不可欠だ。Apple TV+の「ザ・モーニング・ショー」はその代表格と言える。ジェニファー・アニストンが演じるのは、朝のニュースキャスター・アレックス・レビー。ある日、番組の相棒であるキャスター、ミッチ・ケスラー(スティーブ・カレル)が性的不正行為の告発を受け、キャスターを辞めることに。テレビネットワークの裏事情や現代メディアのあり方を鋭く描き出すストーリーは、まさに#MeToo時代のドラマだ。

第2シーズンではコロナウイルスの影響に焦点を当て、そして第3シーズンでは架空法消極であるUBAがサイバー攻撃の余波に苦しむ様子が描かれる。おそらく2025年に新シーズンが公開されるだろうから、いまが追いつく絶好のタイミングだ。

「シャイニング・ガール」

エリザベス・モス主演の心理スリラー/殺人ミステリーは2022年に公開されたが、その実力に見合うほどの話題性を得られなかったかもしれない。モスが演じる主人公カービーは、シカゴで起きた最近の殺人が数年前に自分が受けた暴行との間につながりがあると確信する。シカゴ・サンタイムズの記者と共に調査を始めるなかで、現実が次第に揺らぎ始めるという内容だ。ローレン・ビューケスの小説を基にしたこのシリーズは、単なる殺人ミステリーにとどまらず、サイエンスフィクション的なひねりを加え、観る者を一歩先へと引き込む。

「ファウンデーション」

『WIRED』は「ファウンデーション」のシーズン1を「欠点がありつつも傑作」と評し、その評価した。アイザック・アシモフの広大で複雑な小説シリーズを映像化する難しさを考慮すれば、作品の持つ魅力は十分に感じられる。ジェラルド・ハリスが演じるハリ・セルドン教授は、銀河帝国の終焉を予測したことで忠実な信奉者たちとともに追放される。作品はその壮大なスケールゆえに時に重みを感じさせるものの、リー・ペイスの圧巻の演技や、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡に触発された美麗な映像美は、視覚的にも楽しませてくれる。SF大作が好きな人々にとって、これはまさに宇宙版「ゲーム・オブ・スローンズ」とも言うべきもので、必見の作品だ。

「クラウデッド・ルーム」

1970年代後半を舞台にした「クラウデッド・ルーム」では、トム・ホランドがニューヨーク市で起きた凄惨な銃撃事件の後に逮捕された青年、ダニー・サリバンを演じる。全10話のリミテッドシリーズは、尋問官ライア・グッドウィン(アマンダ・セイフリッド)が事件の背後に潜む謎を追い、サリバンの過去に絡む奇妙な出来事との繋がりを解き明かしていく。プロデューサーとしても参加したホランドは、この作品の撮影で「精神的に限界に達した」、結果的に1年間の演技休止に追い込まれたことを明かしている。その理由を知りたければ、視聴してその衝撃を自分の目で確かめるべきだ。

「ハイ・デザート」

パトリシア・アークエットの復活は、マシュー・マコノヒーやキアヌ・リーブスほど話題にはならなかったが、ストリーミング時代の到来とともに確実に実を結んでいる。「ジ・アクト」や「セヴァランス」での演技は、彼女の長いキャリアの中でも最高の評価を獲得。「ハイ・デザート」も、その流れを途切れさせることはなかった。

薬物依存の過去を持つペギー(アークエット)は、母親の死を乗り越えようとする中で、私立探偵として人生をやり直すことを決意する。思いがけない形で雇用主兼メンターとなるブルース・ハーヴィ(ブラッド・ギャレット)と出会うが、几帳面な姉(クリスティーン・テイラー)をはじめ、周囲は彼女の新たな選択に懐疑的だ。本作は一風変わったドラマだが、それはアークエットの神秘的な演技スタイルにぴったりとはまっている。彼女は悲劇的な場面から爆笑を誘うコメディまでを軽やかに行き来し、観客はその展開についていくのに必死になる。

(Originally published on wired.com, translated by Miranda Remington, edited by Mamiko Nakano)

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