WIRED WHITE LIST:ファイブ(またはシックス)センスを刺激するニュース:WWL #003

イノベーションとアイデアのタネはどこにある? もちろんフィジカルな世界にある。バーチャル空間でアーカイブされてしまう前に、五感、あるいは6つの感覚を総動員して体感しよう。『WIRED』がキャッチした、テクノロジーとカルチャーとライフにまつわるグッドニュース。【2024年10月】
ファイブ(またはシックス)センスを刺激するニュース:WWL 003
PHOTOGRAPH: NAOTO KOBAYASHI

Table of Contents

  1. EAT: Regenerative Organic Pasta by PATAGONIA PROVISIONS
  2. COLOR: Refillable Lipstick by DRIES VAN NOTEN
  3. DIGITIZE: Coffee Scale POLARIS by HARIO
  4. EXPLORE: Tokyo’s Citywide Initiative for Contemporary Art by ART WEEK TOKYO
  5. JOIN: LAYBACK Collection by THE NORTH FACE
  6. CARRY ON: Eco-Drive One by CITIZEN

EAT

Regenerative Organic Pasta / PATAGONIA PROVISIONS

ファイブ(またはシックス)センスを刺激するニュース:WWL 003
DAIGO NAGAO

「リジェネラティブ・オーガニック」という革命のためのパスタ

パタゴニアが食品を事業化したのは2012年だった。後に創業者のイヴォン・シュイナードは記している。「実際、可能性があるように思われる唯一の革命は農業にあると考える。そして私はその革命の一部になりたい」(「なぜ、食品なのか」patagoniaprovisions.jp)。

アウトドアウェアやギアを革新し、地球への愛情をビジネスと直結させる気骨ある起業家で活動家は、着実に社会をひっくり返そうとしている。「リジェネラティブ・オーガニック」という農業によって。

例えば17年には研究機関や企業など複数の団体とともに認証制度(RO認証)を確立。土壌の健康、動物福祉、労働者の公平性という3つの柱からなる厳格な基準を設け、農作物を栽培すればするほど土壌や自然環境を回復させる、つまりネットプラスの農業を地球規模で推し進めている。

この秋より登場するパスタはその成果である。RO認証を取得した有機デュラム小麦(カナダ産)と多年生穀物の有機カーンザ(米国産)を使用。滋味深く、香気あり。食卓から革命に参加しよう。

原料の有機カーンザは近年注目の穀物。多年生で毎年の植え替えが不要なため二酸化炭素の排出を抑えられ、長い根は土壌の再生や地下水の保全に寄与する。オーガニックパスタ「ペンネ」「フジッリ」「シェル」(各340g)...

原料の有機カーンザは近年注目の穀物。多年生で毎年の植え替えが不要なため二酸化炭素の排出を抑えられ、長い根は土壌の再生や地下水の保全に寄与する。オーガニックパスタ「ペンネ」「フジッリ」「シェル」(各340g) 各¥994〈すべてPatagonia PROVISIONS/パタゴニア日本支社 カスタマーサービス ☎0800-8887-447〉

DAIGO NAGAO

COLOR

Refillable Lipstick / DRIES VAN NOTEN

ファイブ(またはシックス)センスを刺激するニュース:WWL 003
DAIGO NAGAO

あの大胆な色彩感覚を 唇と手のひらに

ドリス ヴァン ノッテン ビューティーのリフィル式リップスティックに、新色と限定ケースが登場した。リップのラインナップに加わったのは、鮮やかな「アブストラクト レッド」とナチュラルな「クール ブラウン」の2色。

ケースはヒョウの斑点をまとったヴァイオレットとオレンジを組み合わせた「アンバー ジャングル」と、グラフィカルな模様が印象的な黄色とパープルの「アメシスト シャドウ」だ。

2024年、自身の名を冠したブランドのデザイナー職を退任することを発表したドリス・ヴァン・ノッテン。絵画や音楽、映画といった人工物から、アントワープ郊外の自宅の庭に咲く花々まで、身の回りのあらゆるカラースキームを落とし込んだ彼のコレクションは、相いれないように思えてなぜかしっくりくる、文字通り異色の組み合わせで世界を驚かせてきた。

そんな彼の過去の作品に着想を得たというリップスティックは、ドリス・ヴァン・ノッテンの大胆な色彩感覚を手のひらサイズに凝縮した1本。手に持ったとき、鏡を見たとき、色彩をまとう喜びを教えてくれるだろう。

「ドリス ヴァン ノッテン ビューティー」のリフィル式リップスティック。内側にはリサイクル可能なザマックという合金が使われている。リップスティックリフィル 各¥6160、リップスティックケース 各¥6160〈すべてドリス ヴァン ノッテン...

「ドリス ヴァン ノッテン ビューティー」のリフィル式リップスティック。内側にはリサイクル可能なザマックという合金が使われている。リップスティックリフィル 各¥6,160、リップスティックケース 各¥6,160〈すべてドリス ヴァン ノッテン 青山店/☎03-5766-8608〉

DAIGO NAGAO

DIGITIZE

Coffee Scale POLARIS / HARIO

ファイブ(またはシックス)センスを刺激するニュース:WWL 003
DAIGO NAGAO

あなたの理想の一杯はデータによって発見される

コーヒーの抽出は科学だ。豆の種類や挽き方、お湯の温度や量、抽出時間などの諸条件で味わいが変わり、おいしいコーヒーにはある程度の方程式もある。

だが、それをいちいち計算するのは面倒かもしれない。そんなときのために、ハリオのスマートスケール「Coffee Scale POLARIS」だ。スケールにサーバーとドリッパー、豆を載せて好みの抽出比率(豆とお湯の割合)を設定すると、必要なお湯の量や1回当たりの投湯の割合、抽出開始後の経過時間などを教えてくれる。

どの抽出比率や時間がどんな味につながるかは説明書に書いてあるが、自分であれこれ試すのもいい。むしろ、それがこの製品の存在理由だ。ボタンひとつで適量を安定して抽出できるマシンがある時代に、このスマートスケールは五感を用いたコーヒーの探究に、数値という新しいツールを与えてくれる。

理想とする味わいを手に入れたら、まるで熟練のバリスタのように再現性も高まるはず。果たしてデータによる技術の民主化は、ドリップコーヒーの世界にも。

...

厚みは28mmとコンパクトでシンプルなデザインだが、抽出の進行状況の%表示や、抽出時間をはかるオートタイマーなど緻密なドリップをサポートする機能が充実していて、こだわるほどに便利なことがわかる。カラーはブラックとホワイトの2色展開。「Coffee Scale POLARIS」 ¥8,800〈HARIO/ハリオ https://www.hario.com

DAIGO NAGAO

EXPLORE

Tokyo’s Citywide Initiative for Contemporary Art / ART WEEK TOKYO

全作品が購入可能な展覧会「AWT FOCUS」の2024年の展示作品。

全作品が購入可能な展覧会「AWT FOCUS」の2024年の展示作品。

TALOI HAVINI, Untitled (ples) and Untitled (kohea) Reclamation Series, 2020. Cane, 86 x 86 cm. Courtesy Silverlens, Manila/New York.

「つながり」を発見できる現代アートの祭典

アートは作品を単体で鑑賞するのもいい。だが、つながりに目を向けるとまた違った一面が見えてくる。11月7日から開催される「アートウィーク東京」は、そうした文脈を発見しながら作品を鑑賞できる現代アートの祭典だ。

通算4回目の今年は都内53のギャラリーと美術館が参加し、それぞれ展覧会とともに参加者を迎える。また、毎年異なる監修者とテーマで開催され、展示作品がすべて購入可能な展覧会(今年の監修は森美術館館長の片岡真実だ)や海外拠点のキュレーターが監修する映像作品プログラム、建築家やパティシエ、アーティストがコラボレーションする特設のバー、老若男女に向けたトークプログラムなど、アートウィーク東京の独自企画も。

会期中に運行する無料のシャトルバスに乗って複数のアートスペースやプログラムを一度に鑑賞すれば、作品同士、作家と作家、ギャラリーと美術館、日本と世界、過去と現在など、いままでとは異なる文脈が見えてくる。そこから生まれる思考や議論が、また新しいアートの文脈の土台となるのだ。

ファイブ(またはシックス)センスを刺激するニュース:WWL 003
THOMAS RUFF, d.o.pe.07 III, 2022. Colarisprint on velour carpet, 267 × 200 cm. © Thomas Ruff, courtesy Gallery Koyanagi
今年は「大地と風と火と:アジアから想像する未来」と題し、現存する日本最古の私立美術館である大倉集古館を会場に開催する(2023年の様子)。

今年は「大地と風と火と:アジアから想像する未来」と題し、現存する日本最古の私立美術館である大倉集古館を会場に開催する(2023年の様子)。

COURTESY OF ART WEEK TOKYO

EVENT DATA
アートウィーク東京
会期:2024年11⽉7⽇(木)〜10⽇(日)
https://www.artweektokyo.com


JOIN

LAYBACK Collection / THE NORTH FACE

ファイブ(またはシックス)センスを刺激するニュース:WWL 003
DAIGO NAGAO

都市から雪山までをシームレスにつなげるような

ザ・ノース・フェイスの「LAYBACK」はスノーウェアの新しいコレクションだ。機能は過不足なし。ゲレンデやバックカントリーなど、積雪のフィールドのための設計がすみずみまで行き届く。

その一方でエクストリームなアスリート然とした印象は薄い。なにしろすべてのアイテムはフリースタイルのユニセックス仕様(一部を除き8サイズ展開! )で、天候やフィールドコンディション、あるいは気分に応じて、さまざまなアクティビティを楽しむことをコンセプトにしている。

つまり懐の深さというか自由があるのだった。家の扉を開けて一歩踏み出し、雪山へと向かう。アウトドアというフィールドが、その一歩目から始まっているのだとしたら、この「LAYBACK」の自由さこそがふさわしいように感じる。

ましてや都市がリジェネラティブになればなるほどに、雪山とシームレスにつながっていくはずなのだから。リサイクルポリエステルを使用したフリースのセットアップは、とにかく軽くて保温性に優れた雪山のミドラーにして、街のアウター。

「LAYBACK」はフリースジャケットとパンツのほか、GORETEX素材(非フッ素化合物のePEメンブレン)のハードシェルやビブパンツ、インナーシャツなどをラインナップする。レイバックミッドジャケット ¥27500、レイバックミッドパンツ...

「LAYBACK」はフリースジャケットとパンツのほか、GORE-TEX素材(非フッ素化合物のePEメンブレン)のハードシェルやビブパンツ、インナーシャツなどをラインナップする。レイバックミッドジャケット ¥27,500、レイバックミッドパンツ ¥24,200〈ともにTHE NORTH FACE/ゴールドウイン カスタマーサービスセンター ℡0120-307-560〉

DAIGO NAGAO

CARRY ON

Eco-Drive One / CITIZEN

「EcoDrive One」はシチズン独自の光発電技術による、フェイスに設置したソーラーセルが少量の光でもエネルギーに変換。さらに電池やローター、コイルなど80以上の部品を1.00mmという厚みの中に収めている。腕時計「EcoDrive...

「Eco-Drive One」はシチズン独自の光発電技術による、フェイスに設置したソーラーセルが少量の光でもエネルギーに変換。さらに電池やローター、コイルなど80以上の部品を1.00mmという厚みの中に収めている。腕時計「Eco-Drive One」(AR5064-57L/38.8mm径/ステンレススチールケース/ステンレススチールバンド/世界250本限定) ¥495,000〈CITIZEN/シチズンお客様時計相談室 ℡0120-78-4807〉

PHOTOGRAPH: NAOTO KOBAYASHI

100年の歴史と1.00mmのムーブメント

今年、「CITIZEN」というブランドが誕生から100年を迎えた。時計という工芸と工業にまたがる製品にとって、世紀をまたぐメーカーは決して珍しくはない。

それでもなお、市民のための国産時計の開発を目指して設立された、尚工舎時計研究所(現・シチズン時計)の歴史をひもとくと、独特の個性が浮かび上がる。進取の気風、あるいは、時代の2、3歩先を行き過ぎちゃうような感じ。

例えば1982年に発表した「サーモセンサー」(温度計測可能なコンビネーションクオーツ)。または2006年の「アイバート」(Bluetoothによる携帯電話の通信着信の通知)。いずれも「世界初」と称される機能や機構を実装したもので、腕時計の歴史をふくよかにしたのは間違いない。

そして16年に登場したのが「Eco-Drive One」だ。光発電というサステナブルな性能を備えながら、わずか1.00mmという極薄のムーブメントを実現。ミニマリズムの極北たる設計は、当然、CITIZENの技術の蓄積が可能にしている。ふくよかな歴史があるからこそ、薄くなれたのだ。


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イノベーションとアイデアのタネはどこにある? もちろんフィジカルな世界にある。バーチャル空間でアーカイブされてしまう前に、五感、あるいは6つの感覚を総動員して体感しよう。『WIRED』がキャッチした、テクノロジーとカルチャーとライフにまつわるグッドニュース。【2023年10月】

ファイブ(またはシックス)センスを刺激するニュース:WWL 003

雑誌『WIRED』日本版 VOL.54
「The Regenerative City」

今後、都市への人口集中はますます進み、2050年には、世界人口の約70%が都市で暮らしていると予想されている。「都市の未来」を考えることは、つまり「わたしたちの暮らしの未来」を考えることと同義なのだ。だからこそ、都市が直面する課題──気候変動に伴う災害の激甚化や文化の喪失、貧困や格差──に「いまこそ」向き合う必要がある。そして、課題に立ち向かうために重要なのが、自然本来の生成力を生かして都市を再生する「リジェネラティブ」 の視点だと『WIRED』日本版は考える。「100年に一度」とも称される大規模再開発が進む東京で、次代の「リジェネラティブ・シティ」の姿を描き出す、総力特集! 詳細はこちら