Netflixで加速する「アカウント共有の禁止」について、知っておくべきこと

アカウントの共有によって“ただ乗り”しているユーザーを減らすべく、ネットフリックスが各国で対策を始めている。先行して規制が始まった南米や欧州の一部の国での事例から、その具体的なルールや共有が適用できる範囲などについてまとめた。
Overhead view of red remote controls in a pattern forming a mosaic on a blue background
Juan Moyano/Getty Images

ストリーミングサービスのパスワードを共有して楽しんでいる人々にとって、Netflixは長らく頼みの綱だった。家族や仲間、恋人などの親しい誰か1人がアカウントをもっていれば、みんなで『ストレンジャー・シングス 未知の世界』を楽しむことができたのだ。

ところが、こうしたパスワードの共有に対する取り締まりをネットフリックスが始めている。規制の対象となる国を次々と増やし、あわよくば料金を払わせようというのだ。

ネットフリックスは2023年2月、南米、カナダ、ニュージーランド、ポルトガル、スペインを対象に、アカウント所有者と同一世帯に住んでいる人のみ共有を可能とする新方針を打ち出した[編註:日本や米国での適用は2023年3月時点で未定]。つまり、同じ屋根の下に暮らす親と子、ルームメイト、恋人同士は共有しても構わないが、親元を離れた大学生の子どもや同居していない恋人同士は共有不可というわけだ。少なくとも、それが方針だという。

この方針はNetflixだけでなく、ほとんどのストリーミングサービスを視聴する多数のユーザーの利用方法にどう考えても矛盾している。利用規約で共有が許されている範囲内であろうとなかろうと、親しい友人や恋人、親戚などとパスワードを共有している人は少なくない。

その一因には、1つのアカウントに複数のプロフィールを作成できることも挙げられる。アカウントは1つでも各自が個別にプロフィールを作成し、マイリストに好きな番組を登録したり、レコメンド機能を使ったりしているのだ。

1カ所の「ホーム」からのみアクセス可能に

これまでネットフリックスは、異なる世帯に暮らす人とアカウントを共有しないでほしいと、やんわりとクギを刺してきた(一方で「愛とはパスワードを共有すること」とツイートしてアカウントの共有を奨励したこともある)。同時視聴が可能なデバイスに上限数を設けているのは、そのためだ。低価格プランで同時視聴できるデバイスは1台のみで、料金が上がるにつれて数が増え、最大4台のデバイスで同時視聴できるようになっている。

今後はデバイス数の上限だけでなく、一部地域のユーザーには「ネットフリックスが定義する同一世帯」という制限も加わる。ネットフリックスが定義する同一世帯とは、アカウント所有者が居住する家であり、その位置情報が重要になってくる。

新方針を発表したものの、ネットフリックスは実装方法についてあまり口を開こうとしていない。それでも大まかには1カ所が「ホーム」として指定され、その場所のWi-Fiに定期的に接続されるデバイスなら問題なくアカウントを共有できるようだ。

この新方針では、ホーム以外の場所でアカウントにログインしようとすると、IPアドレスやデバイスのIDに基づいて、異なる場所でのログインであることをNetflixが識別する。このため、何らかの方法でデバイスを認証する必要が出てくる。

この仕組みについて詳しく説明したガイドが以前は公表されていたが、そのほとんどがいまではヘルプセンターから削除されてしまった。チリ、コスタリカ、ペルーのみに適用される内容だからというのが、ネットフリックス側の言い分である(以降、この新方針の適用対象はカナダ、ニュージーランドなどにも拡大されたが、米国はいまのところ免れている)。

用意される2つの認証方法

普遍的な仕組みや他国に適用された場合の条件に関しては、デバイスの認証方法に関する説明が削除されたうえ国による違いもあるので、何も断言はできない。しかし、以前に公表されていた内容やユーザーからの情報を基にすると、どうやら認証手段は主に2つある。

そのひとつは、ユーザーをイラっとさせる方法だ。デバイスを認証するには、アカウントの所有者から送信されてきた4桁の認証コードを15分以内に入力しなければならない。要するに、コードの送信くらい同じ家に住んでいればそれほど手間にならないだろう、というわけだ。

これにより、家族で旅行に出かけていてホテルやコテージに滞在しているときでも、アカウント所有者がいれば滞在先のテレビを簡単に認証できる。しかし、町の反対側に住んでいるパートナーからすぐにコードを送ってもらえない場合は、認証できない可能性がある。

とはいえ、コスタリカなど一部の国に向けて更新されたヘルプセンターによると、デバイスをアカウント所有者の自宅のWi-Fiに月に1回は物理的に接続しなければ、登録を延長できないようだ。そうなるとさらに不便だし、現在は可能な視聴方法の多くが実質的に排除されてしまう可能性がある。

また、カナダ、ニュージーランド、ポルトガル、スペインでは、上位プランの「スタンダード」か「プレミアム」に加入しているユーザーが追加の月額料金を払ってサブアカウントを作成すれば、同一世帯で暮らしていない場合も視聴できるオプションがある。この追加料金は国によって異なるが、カナダとニュージーランドは約8ドル(日本円では、それぞれ約780円と約660円)だ。

これなら追加料金を払ってサブアカウントを作成するほうが、新規アカウントを作成するよりずっとお得かもしれない。ただし、月に1回の認証コード入力の手間さえ我慢できるなら、追加料金を払わずに済む。

あなたの環境での影響は?

ネットフリックスの新方針がどのように影響を及ぼすのかは、1つのアカウントを共有している人数や居住地、視聴に使うデバイスによって大きく異なってくる。ネットフリックスの説明ではわかりにくいので、以下のようにシナリオを設定して説明していきたい。

シナリオA:あなたは同居人のアカウントを共有させてもらっている。家ではスマートフォンでNetflixにログインしているが、旅行に出かけることになった。

この場合は、旅先でも問題なくログインできるはずだ。使っているデバイス(この場合はスマートフォン)は、自宅にいるときにアカウント所有者の世帯にひも付けされたので、旅先でもアカウントへのアクセスは承認される。これは国を問わずに適用されるようだ。

シナリオB:あなたとパートナーはNetflixのアカウントを共有している。同居はしていないが、互いの家を頻繁に行き来して、スマートフォンやノートPCでNetflixの番組を視聴している。

この場合も、アカウント所有者の自宅のWi-Fiにときどき接続してNetflixにログインしていれば、問題ないと思われる。それぞれのデバイスも当分はアカウント所有者の世帯にひも付けされた状態が続くだろう。ただし、住んでいる国によっては、アカウント所有者に送信してもらった認証コードを入力して再登録するか、相手の家に行ったときにNetflixにログインするか、いずれかの方法が必要になるかもしれない。

シナリオC:あなたとパートナーは同居していないが、ひとつのアカウントを共有している。そしてお互いに、自宅のテレビでNetflixを視聴したいと考えている。

このケースはちょっと厄介だ。外出のたびにテレビを持ち出して、他人の家まで運んでいく人などいないだろう。このシナリオでも、アカウントを共有できる可能性はゼロではないが、住んでいる国によりけりだ。Netflixからはデバイスの認証を、ときどき求められるだろう。つまり、その場合に備えて、アカウント所有者は15分以内に認証コードを送信できるよう心の準備をしておかなければならない。

ところが一部の国では、デバイスをアカウント所有者の自宅のWi-Fiに接続しなければならない。そうなると共有は不可能だ。パートナーの家に行くたびにテレビを持参できなければ(そうする人がいるとは思えないが)、自分のアカウントを開設するしかない。

追加の月額料金を払ってサブアカウントを設定すれば、同一世帯で暮らしていない人でも視聴できる国もある。とはいえ、これにも“ただし書き”がつく。対象の国々でこの追加料金システムが適用されるのは、月額料金の高い上位ふたつのプランのみで、追加できる人数もごくわずかだ。カナダとニュージーランドでは、1人追加するたびに月額8ドルの料金が発生する。この追加料金は国によって異なる。

低額プランに入っている場合は、上位プランに乗り換えて安くサブアカウントを追加するよりも、いっそのこと新しいアカウントを別に開設したほうがいいかもしれない。いずれにせよ、ユーザーにもっとお金を使わせようというのがネットフリックスの魂胆だ。

それに、たとえ認証できたとしても、ゆくゆくは特定のデバイスがブロックされる可能性があるかどうかがわからない。例えば、異なる州に住む者同士のアカウント共有がずっと許可されるのか、家族が本当に市内4カ所に分かれて暮らしているのか確認を求められるのか、いまのところは不明だ。

いずれにせよ、アカウント所有者の自宅にNetflixの視聴に使いたいデバイスを定期的にもって行くか、アカウント所有者が共有相手から認証コードを送ってほしいと何度も頼まれてもひたすら我慢するしかなさそうだ。さもなければ、あきらめて自分のアカウントを開設したい。

WIRED US/Translation by Yasuko Endo/Edit by Daisuke Takimoto)

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