第2世代の「Apple TV 4K」は便利に進化したが、その価格は妥当なのか?:製品レヴュー

アップルのストリーミング端末「Apple TV 4K」が第2世代モデルへと進化した。リモコンが刷新され機能も充実したことで使いやすさに磨きをかけたが、日本での価格が20,000円を超えるなど他社製品と比べてかなり高い。その価格は機能に対して妥当と言えるのだろうか──。『WIRED』US版によるレヴュー。
進化した第2世代「Apple TV 4K」レビュー:その価格は妥当か?
PHOTOGRAPH BY APPLE

紹介した商品を購入すると、売上の一部が WIRED JAPAN に還元されることがあります。

アップルには熱烈なファンによる分厚い顧客基盤がある。ストリーミングサーヴィス「AppleTV+」のオリジナル作品を鑑賞し、「Apple Music」の音楽をiPhoneで聴き、「Apple Fitness」でワークアウトに励んだ記録を「Apple Watch」で管理しているような人なら、すぐにでも第2世代の「Apple TV 4K」を手に入れてコレクションをさらに充実させたいと思うことだろう。

操作しやすいメニュー画面や新しくなったリモコンに加え、音声コントロールの機能も非常に優れている。だが、アップルの熱狂的ファンではなくストリーミング端末が欲しいだけの人にとって、Apple TV+ 4Kはおそらく価格に見合う価値をもっていない。その場合、ほぼ同じ機能ではるかに安いデヴァイスは、ほかにたくさんある。

便利な機能が満載

Apple TV 4Kの最新モデルは、その他のストリーミング端末にできることなら何でもできる。主要な配信サーヴィスすべてに対応しており、好きな番組や映画を視聴可能だ。アップルの陣営に囲い込まれたユーザーなら、Apple Fitness+、Apple Music、Apple Arcadeといったサーヴィスにテレビ画面から直接アクセスできる(Apple TV 4Kの第1世代モデルや「Apple TV HD」には、これらのサーヴィスにアクセスできる機能がすでに備わっている)。

アップルのほかのハードウェアすべてと同じように、Apple TV 4Kは際立って優れた機能をいくつも備えている。例えば番組を鑑賞中にせりふを聞き逃してしまったら、リモコンの「Siri」ボタンを長押ししながら「いまなんて言ったの?」と尋ねればいい。すると画面は、その人物の直近のせりふの冒頭まで巻き戻され、字幕が表示される。その後、字幕は再びオフになる。

こうした機能が必要とは思っていなかったが、いまではすっかりお気に入りだ。また、話しかけるだけでアプリを開いたり映画や音楽を楽しんだりもできるし、さまざまなサイトの閲覧やパスワードなどの面倒な入力も可能になった。

すべてのストリーミングサーヴィスを横断してユーザーの知りたいことを検索してくれるこうした機能は、「Chromecast with Google TV」にも搭載されている。例えば、テレビドラマ「アメリカン・ホラー・ストーリー」の新作といった特定の番組名を音声検索すると、Huluで配信中のタイトルが表示される。また、ホラー物を見たいがタイトルが思いつかないときなど、ジャンルを指定して検索することも可能だ。

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さらに、ストリーミングサーヴィスごとにコンテンツを見て回るだけでなく、利用履歴や最新の人気ランキングを基におすすめを提案してもらうこともできる。これもGoogle TVで気に入っている機能のひとつだが、ストリーミング端末「Roku」にこうした機能はない。ただし、家族全員の好みにぴったり合うおすすめ情報が欲しい場合は、各自が個別にApple IDを取得する必要がある。

必ずしもApple TV+に加入する必要はないが、加入の有無にかかわらずApple TV+を含むあらゆるストリーミングサーヴィスのアプリから、膨大な数のおすすめタイトルが表示される。わずらわしくはあるが、特定のサーヴィスに加入するか決めかねている人にとっては、ヒントになるかもしれない。Apple TV+を試したことがない人向けに、購入の際に3カ月間のトライアル視聴が特典としてついてくる。

新しくなったリモコン

2017年に発売されたApple TV 4Kの第1世代モデルをもっていてその性能に満足しているなら、第2世代に買い換える必要はない。とはいえ、製品の中身はそれなりに改善されている。最新の4Kテレビをもっているなら、第2世代モデルならではの利点を享受できるだろう。

第2世代モデルが搭載しているアップルの「A12 Bionic」は最新のチップではないが、全体的なパフォーマンスの底上げには十分だ。試してみたところ、ブラウジングやアプリの切り替えに遅れはまったく感じられなかった。最大60fps(毎秒60フレーム)の高フレームレートのHDR再生にも対応しており、ほとんどの4Kテレビで最高の性能を発揮する。

テレビの色調整(キャリブレーション)に苦労したことのあるユーザーのために、Apple TV 4KにはiPhoneの内蔵センサーを利用したツールが組み込まれている。設定にはiOS14.5以降の顔認証機能付きiPhoneが必要だ。

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まず、Apple TVの設定画面から「ビデオとオーディオ」に進み、「カラーバランス」を選ぶ。iPhoneに内蔵された光センサーの働きで、業界標準に沿って画面の色が自動調整される。新しく購入したテレビで試したので劇的な変化はなかったものの、確かに改善された。ただし、この機能はDolby Vision対応のテレビには使えない。

「HomeKit」に対応するスマートホーム機器をもっているなら、Apple TVのリモコンからSiriに話しかけて操作できるようになる。Apple TVはクラウドでスマートホーム機器を連携させる無線メッシュ通信網「Thread」に対応していることから、家にあるスマートロックや照明器具、防犯カメラも瞬時にApple TVと接続できる。

リモコンも新しくなった。これまでのリモコンに満足していなかったユーザーにとっては朗報である。旧タイプと違ってボタンとリモコン本体の色が違うので、薄暗い場所でもボタンをしっかり見分けられる。

ダイヤル部分は押したり触れたりして操作可能で、電源ボタンとミュートボタンも付いている。一度に複数のリモコンを操作する必要はもうないのだ。Apple TV 4Kの第1世代モデルやApple TV HDをもっているなら、59ドル(日本では6,500円)でリモコンのみの購入も可能だ。

また、ワイヤレスイヤフォン「AirPods」を使えば、隣で寝ているパートナーを邪魔せずに済む。Rokuのようにリモコンに有線のイヤフォンをつながなくてもいい点はありがたい。Apple TV本体はRokuのほとんどのモデルや「Google Chromecast」より大きいが、テレビ台の上に置いても目立たず、黒い外観はたいていの場所になじむはずだ。

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気になる価格

Apple TV 4Kは、これまで試したなかで最も高価なストリーミング端末の部類に入る。それなのにHDMIケーブルすら同梱されておらず、別途購入しなければならない。これはアップルのお決まりのやり方で、アップル製品全般の大きな減点ポイントと言える。

価格は安いほうのモデルが32ギガバイトのストレージ容量で179ドル(日本では21,800円)だが、ほとんどの人におすすめしたいのは容量の大きい64ギガバイト版のほうで、価格は199ドル(同23,800円)だ。ケーブルも別途必要だが、アップルは定価30ドル(同3,828円)の「Belkin UltraHD High Speed 4K HDMI Cable」を推奨している(Amazonのサイトからも購入できる)。

つまり、全部で210ドル(同25,628円)または230ドル(約27,628円)になるわけだ。Rokuの製品なら、申し分のない性能の「Streaming Stick Plus」が50ドル(約5,500円)で手に入る。しかも、こちらには必要な備品はすべて同梱されている。

もし「アップル製品のある生活」を徹底的に実践していて、充実した機能が必要で、さらにテレビ画面でワークアウトやスマートウォッチとの連携を楽しみたいなら、価格に見合う価値はあるだろう。だが、そうでなければ必ずしもおすすめとは言えない。


◎「WIRED」な点
リモコンが大幅に改良された。使いやすい音声認識機能。カラー調整が簡単。ユーザープロファイル機能を搭載。加入中のストリーミングサーヴィスすべてを横断して検索できる。

△「TIRED」な点
他社製のストリーミング端末より高価。HDMIケーブルが別売。配信サーヴィスへの加入の勧誘がわずらわしい。


※『WIRED』によるアップルの関連記事はこちら


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TEXT BY MEDEA GIORDANO

TRANSLATION BY MITSUKO SAEKI