イギリス財務省のチューリップ・シディーク経済担当政務次官が14日、辞任を発表した。同氏に対しては、バングラデシュで進んでいる汚職捜査の影響で、辞任を求める圧力が強まっていた。
シディーク氏は、昨年バングラデシュで解任され亡命したアワミ連盟の指導者、シェイク・ハシナ前首相のめい。
シディーク氏は先に、ハシナ前首相との関係について疑問の声があがったことを受け、キア・スターマー英首相の規範顧問を務めるサー・ローリ・マグナスに調査を依頼していた。
サー・ローリーはその後、「不正行為の証拠は確認されなかった」としながらも、シディーク氏がおばとの関係の「潜在的な評価リスク」にもっと敏感でなかったことは「遺憾だ」と述べた。経済担当政務次官は、イギリスの金融市場における汚職対策を担当する。
シディーク氏は、自分が職務にとどまることが政府にとって「阻害要因」になると述べた一方、自分は何も悪いことをしていないと主張した。
シディーク氏の辞任を受け入れる書簡の中でスターマー首相は、「同氏にドアは開かれたまま」だと述べた。
贈与されたロンドン中心部のアパート
シディーク氏の家族は、バングラデシュ政府のインフラ支出から最大39億ポンドを横領した疑惑で操作を受けており、その中でシディーク氏の名前も挙がった。また、ハシナ前首相の側近が関連するロンドンの不動産の使用についても、厳しい精査を受けた。
英紙フィナンシャル・タイムズは先に、ロンドンのキングス・クロスにあるアパートの一つは、最近解任されたバングラデシュ政府に関係する人物からシディーク氏に贈られたものだと報じた。
日曜紙サンデー・メイルも、シディーク氏が2022年、このアパートが贈り物であることを否定し、両親が購入したものだと主張。記事の公開を防ぐために法的措置を取ると脅したと報じた。
その後、労働党の関係者は、このアパートがハシナ前首相に関連する不動産開発業者から贈られたものだと、同紙に語った。
一連の報道を受け、シディーク氏は自ら規範監視機関に連絡。サー・ローリーは8日間にわたって調査を行った。
サー・ローリーは書簡の中で、シディーク氏は、キングス・クロスのアパートの所有権の由来を長期間知らなかったと認めたと説明。同氏は両親が購入して贈与されたものだと思っていたが、この見解が、前所有者について世間が誤解した理由だと述べた。
そのうえで、記録の欠如と時間の経過により、報道内容との包括的な確認はできなかったとサー・ローリーは結論付けた。
サー・ローリーはまた、シディーク氏や夫の行動に不正行為の証拠はなく、アワミ連盟やバングラデシュ国家が関与した異常な財務取引も見つからず、財務資産が正当な手段以外から得られた証拠もなかったと結論付けた。
ロシアとの関係にも指摘
他方バングラデシュでは、ハシナ前首相に対する一連の告発に基づく汚職調査が進行中だ。
BBCが確認した裁判書類によると、ハシナ前首相の政敵であるボビー・ハッジャジ氏は、シディーク氏が2013年にロシアとの間で、バングラデシュに建設する新しい原子力発電所の価格を過剰に引き上げる取引を仲介するのを手助けしたと非難している。
シディーク氏はこの原子力発電所の署名式に出席し、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と共に写真を撮った。
これについてサー・ローリーは、シディーク氏が「バングラデシュ政治に関与する主要な家族の一員であり、そのために不正行為の疑いをかけられることがあった」と述べた。
そのうえで、「シディーク氏の政府関係者としての責任の性質を考えると、同氏が自身と政府の評判リスクにもっと敏感でなかったのは遺憾だ」と述べた。
スターマー首相はシディーク氏への返答の書簡で、同氏の辞任を「悲しみをもって」受け入れ、彼女の政府高官としての「献身」に感謝の意を表した。
また、サー・ローリーが「閣僚規範の違反や、シディーク氏による財務上の不正行為の証拠は見つからなかった」と保証したことを伝えた。
一方、最大野党・保守党のケミ・ベイドノック党首は、首相がシディーク氏を守るために対応を「ためらい、遅れた」と述べた。
「バングラデシュがチューリップ・シディーク氏に対して刑事訴訟を起こしている今でも、スターマー首相はシディーク氏の避けられない辞任に『悲しみ』を表明している」
「弱い首相からの弱いリーダーシップだ」
