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2025年1月5日(日)

教養としての中東情勢

2025年1月3日

 シリアのアサド独裁政権の突然の崩壊は戦火にまみれた2024年の中東を象徴する出来事となったが、新年も地域の平和と安定は程遠いものになりそう。その台風の目は1月20日に就任するトランプ米大統領だ。シリアでは暫定政府が武装組織を国軍に統合するなど新たな歩みを始めたが、トランプ氏は「シリアを切り捨てる」考えとみられ、混迷が深まるのは必至だ。

シリアのアサド政権崩壊により、中東情勢はより混迷を極めている(AP/アフロ)

厄介事には手を染めない

 米紙などの報道によると、トランプ次期政権はシリアへの関わりから手を引く公算が高い。米国は現在、過激派イスラム国(IS)の台頭を阻止し、ISから同国の石油資源を守るためとの理由で、約2000人の部隊をシリア国内に駐留させ、折に触れてISの拠点を爆撃するなど作戦を展開している。

 駐留軍のもう一つの狙いはアサド政権を支援していたイラン革命防衛隊の動向を監視するためだ。しかし、イランはアサド政権を見限り、部隊を本国に撤収させており、監視任務は棚上げ状態になっている。トランプ氏はかつて、テロとの戦いでISを掃討した後、米軍を撤退させようとしたが、国防総省の反対で900人の残留を渋々認めた経緯がある。

 部隊はバイデン政権で2000人程度にまで増強されているが、トランプ氏は大統領就任直後に駐留部隊の撤退を命じる可能性が高い。「トランプはとにかく、儲けにならない中東やアフリカへの関与を無駄だと考えている。シリアやアフガニスタンはその最たるものだ。厄介事に手を染めて泥沼に引きずり込まれることを極度に恐れている」(米専門家)。

 トランプ氏は一期目当時、シリアからの完全撤退を強く要求したが、ミリー元統合参謀本部議長ら軍部に反対され、駐留には同意せざるを得なかった。同氏は国防総省に強い不満を残した。

 今回は「すぐに撤退を実行させるだろう」(同)という。だが、大きな戦略的ミスだとの批判が出るのは間違いない。


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