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ジュラシック・パーク(映画)

登録日:2015/07/26 Sun 22:34:38
更新日:2025/01/04 Sat 19:49:39
所要時間:約 14 分で読めます





映画の歴史が変わる。

スピルバーグが変える。




概要


ジュラシック・パーク(Jurassic Park)』とは、93年に公開された米映画。

原作はSF作家マイケル・クライトンの同名の小説*1
脚本についてはマイケル・クライトン本人も脚色を担当しており、原作とは大幅にストーリーが異なる。
監督は『ジョーズ』、『インディ・ジョーンズ』シリーズ、『E.T.』等、数々の傑作映画を生み出したスティーブン・スピルバーグ
製作はユニバーサル映画。
音楽は「映画音楽の巨匠」ことジョン・ウィリアムズ
壮大で力強いメインテーマは、あなたもどこかで一度は耳にしているかもしれない。

遺伝子操作によって現代に蘇った恐竜が生息するテーマパークで起こった事故により、従業員が次々と襲われていくパニック映画の傑作。
これは、序盤で肉食恐竜を登場させず焦らしに焦らした、サスペンス映画で培ったスピルバーグ監督の演出力の高さもその高い評価の理由の一つ。
勿論、単なる恐竜パニック映画としての一面だけでなく、恐竜を通して生命の在り方にも焦点が当てられており、特に登場人物の1人であるマルコムの数々の名言には考えさせられた人も多いのでは?

そして本作の最大の特徴は、アメリカの映画で初のフルCGアニメーション合成が使用された事である。
当初はアニマトロニクス(機械仕掛け)とストップモーションアニメを中心に撮影する予定だったが、スピルバーグがVFX担当のインダストリアル・ライト・マジック(ILM)の仕事に興味を持ち、恐竜のシーンの大半で使用する事が決定。
そして、フルCGによる、作り物とは思えないほどのリアルな恐竜の動きに、世界中が熱狂。
このILMの働きは『スター・ウォーズ』に続く「映像革命」として映画史に残っている。

2024年現在、続編が5本製作されている。
飼育用の島「サイトB」を舞台とした『ロスト・ワールド』と『ジュラシック・パークⅢ』。
再オープンしたパークを舞台とした『ジュラシック・ワールド』、さらにその続編の『ジュラシック・ワールド/炎の王国』、完結作にして集大成である『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』がある。
『新たなる支配者』以外の各作品については個別項目があるので、詳細はそちらへ。

その他コミカライズもされており、何と日本でも公開時期に合わせて『デラックスボンボン』で漫画版が連載されていた。


物語


古生物学者のアラン・グラント博士と助手のエリー・サトラーは、大企業インジェン社の社長にして、稀代の億万長者のジョン・ハモンドに自身が設立した新しいテーマパークのモニターとして、もとい箔付けの為に招待される。

そのテーマパークは、コスタリカの西方の太平洋沖の孤島のイスラ・ヌブラルを貸し切った所にあった。
そしてその「ジュラシック・パーク」最大の目玉は、6500万年前に絶滅したはずの、本物の生きた恐竜。
ハモンドは最新鋭の遺伝子技術を用いて、古代の蚊が吸った恐竜の血液から恐竜のクローンを生み出したのだ。
「最新型の厳重セキュリティ」、「遺伝子組み換えにより子孫を作れない恐竜」等、絶対安全の革命的テーマパークを前に期待に満ち溢れたハモンドだったが、パークを共に訪れたカオス理論の専門家であるイアン・マルコムとグラント達はそれを懐疑的な視点で見る。

そして、初のパーク周回ツアーが開かれた時、最悪の事態は起こってしまった!
ハリケーンの到来によるツアー客の遮断、ほとんどの従業員が本島に帰宅、そして従業員の一人の造反によるセキュリティシステムのダウン……。
そして高圧電線に流れる電流が止まった事が原因で、恐ろしい恐竜達が解き放たれてしまう…!


登場人物


アラン・グラント
演:サム・ニール/吹き替え:富山敬
古代生物学の博士で、恐竜を中心とした古代の生物の権威として有名。
子供に好かれる性格で、発掘現場でも人気がある。
しかし当の本人は子供は苦手で、「鳥と恐竜は近縁」という持論を「でっかい七面鳥みたーい!」と嗤った子供に、ラプトルの爪の化石を突きつけて恐竜の恐ろしさを半ば脅すような形で教える大人げない一面も。
その時は当然あんな目に遭うとは想像もしていなかっただろう。
本作及び後の恐竜研究で、この持論が半ば正しい事として扱われており、一部の恐竜の動きに表れている。

ジュラシック・パークのモニターとして選ばれ、さらに日給2万ドルの顧問手当に釣られてノリノリで参加してしまう(発掘に必要な資金3年分に相当)*2
当初は初の生恐竜に興奮していたが、徐々に明らかになるパークの「穴」を知り、否定的な意見を寄せる*3
そして、T-レックスの襲撃で子供客2人と共に島を彷徨する冒険に出ることになるのだが、彼らと共にしているうちに父性と心優しさが芽生えてゆく。

原作では映画とは正反対で子供好きであり、かつ奥さんに先立男やもめ。
イケメンだった映画とは異なり、髭面でがっしりした胸板のおっさんとして描かれている。
またエリーはただの教え子に過ぎず、彼女には婚約者がいる。
なお、小畠郁生氏によると、モデルは古生物学者のジャック・ホーナーとロバート・バッカー、グレゴリー・ポールとの事。


エリー・サトラー
演:ローラ・ダーン/吹き替え:弥永和子
古代植物学の博士で、グラント博士とは映画では恋人同士。
劇中では植物の知識を生かして、毒草を食べたトリケラトプスの検診をし、糞の山にまで手を突っ込むほどの男気を見せる。
その際にグラントとは離れ、ビジターセンターで彼らの救助の為に手を尽くす等、終盤でも男気を発揮していたが、電源復旧後は衝撃の事態が畳み掛けてきたので、流石に一時的に挫けてしまう。
このように、様々なパニックに見舞われて踏んだり蹴ったり散々な思いをしながらも芯の強さを見出していくと共に、危機的状況をグラント達と乗り越えていく事となる。

原作では前述の通りグラントとは恋仲ではなく、別の婚約者がいる。


イアン・マルコム*4
演:ジェフ・ゴールドブラム/吹き替え:大塚芳忠
黒ずくめの数学博士で、カオス理論の専門家。
軽薄な皮肉屋で、自身も家庭を持っているにもかかわらず、エリーにナンパするほど。
ハモンドとは犬猿の仲で、その言動から彼に「ロックスター」と皮肉られていた。
だがそれは表面上の態度に過ぎず、実際は名言と正論しか言わない男でもある。

自然生物の複雑性に重きを置いており、パークの方針には「恐竜が人間のスケジュールなんかに従うもんか」「自然界へのレ○プ」等と批判的。
だが徐々に明るみに出るパークのセキュリティの破綻が、マルコムの主張が正しかった事を証明する。
当初こそは、どこか変人臭が漂うチャラ男と言った印象ではあったが、ハモンドやパークの方針や実態を知る事で懸念するようにもなり、パークが悲劇に見舞われた際には、襲われている子供達2人を救う為にティラノサウルスの囮役を自身が買って出る等、真面目かつ勇敢な一面を見せるようになる。

誤解のないように付け加えるが、マルコムが批判してるのは恐竜を無理強引に現代に甦らせた人間(ハモンド達)の方針であって、決して恐竜の存在そのものを批判してるわけではない。
実際に初めてブラキオサウルス等の恐竜の群れを目の当たりにした際は、驚愕しつつも喜びの表情を浮かべており、絶滅について述べる際も「誰のせいでもない」と同情もしていた。

小説版では原作者の代弁者のような立ち位置で、マルコムの口を通して語られた遺伝子工学への警鐘や科学者のモラルの問題といったテーマは、娯楽性を優先した映画版でも活かされている。

原作では当初死亡扱いだったが、映画では中盤からはずっとベッドで寝たきりだった(足を負傷していたので致し方ないが)。
そして続編で実は生存していた事が明かされるばかりか主人公になる等、大出世を果たしている等、地味に扱いは悪くない。
作者の投影だからか。

ちなみに、『獣電戦隊キョウリュウジャー』の主要人物の一人であるイアン・ヨークランドの全体的なキャラ設定は彼を元ネタとしているらしい。
なお、負傷後のマルコムはなぜかシャツのボタン全開で妙にセクシーだが、演者によると「あのシーンは台本にはなかった」との事で、さらにこの状態で寝そべっている姿は、なんとロンドンで再現されたマルコムの巨像が設置されており、おまけに6作目ではそれをネタにしたセルフパロディ的なシーンも存在する。




ジョン・ハモンド
演:リチャード・アッテンボロー/吹き替え:永井一郎
大企業インジェン社の社長で、ジュラシック・パークの創設者。スコットランド出身。

明るい性格の好々爺だが、一代で成功したとの自信があるゆえか、一応はマルコム達の反論こそしっかり聞く姿勢こそはあるものの、人の"警告"には素直に受け入れられない頑固な悪癖がある。
相当年を喰っているにもかかわらず、子供のように熱く夢を語り、ジェナーロがパークをセレブ(金持ち)向けに宣伝しようした際は「ここは誰もが楽しんで来れる場所であるべきだ」として一蹴する等、パークの開業で来客達を喜ばせようとするその情熱は間違いなく本物

最新鋭の技術を投入したジュラシック・パークは絶対安全な施設であると豪語していたが、全く予期していなかった事故に動転してしまうが、もっとも、その事故の元凶でもある為、割と自業自得とはいえる。
事態が深刻化してもパークの開業を最後の最後まで諦めず、「ディズニーランドも最初はトラブル続きだった」と例えに出してみるが、マルコムから「カリブの海賊は故障しても人を食ったりしない」と皮肉られる。
全てが終わった後、アランからも「(色々検討してみたんですけど)推薦状は書けません!」ときっぱり一蹴されてしまった。
頑固ではあるが根は悪い人物ではないので、最終的には本人も自分の過ちを認め、アランの言葉には「わしもだ」と返した。

一方の原作版では、映画以上の金利主義者の銭ゲバと化し、かなりのクソジジイとして描かれている。映画版の続編におけるピーター・ラドローに近い人間性と言えばイメージしやすいだろうか。
そのドケチさ加減たるや、客の安全の為に有毒恐竜ディロフォサウルスの解剖をする事も許さなかったばかりか、「アミューズメントパーク成功の秘訣は、人件費をとことん削りまくってオート化をはかる事」という、今の目で見ればヤバすぎる理念まで掲げるほど。
……あのパークが失敗した原因は、まさにこの理念にあると断言していいだろう。
事実、原作においてパークは二度崩壊しているのだが、その原因は全て人災である。

1回目……セキリュティシステムの大黒柱たるネドリーの造反
2回目……不眠不休でパーク復旧にあたったアーノルドの、過労による不注意が招いたヒューマンエラー

そう、ハモンドは経営者としても人としても、重要な事を失念していたのだ。
どれだけ盤石なシステムを築き上げても、それを管理・維持する人間を軽視してはいけないという事を……。

ちなみに映画版では上記の通り、最終的に自らの過ちを認めた彼だったが、原作では多数の人命が失われたにもかかわらず、反省も哀悼もしなかったばかりか、あろうことか全ての責任を部下に転嫁した上に、次のジュラシック・パーク建設まで目論んでいた
……ここまで来るとアンブレラ社ユタニ社も顔負けのゲスさである。
だが最終的には事故で身動きが取れなくなったところを、皮肉にも自らの“高価な財産”たるプロコンプソグナトゥスの群れに襲われて死亡した。
ついでにインジェン社も事件の煽りを受けて倒産した模様。ざまぁ

原作とのこのキャラクターの違いは、映画版ではスピルバーグが自身を投影しているからではないかと言われている。


レックス
演:アリアナ・リチャーズ/吹き替え:坂本真綾
ハモンドの孫娘であり、タンクトップが眩しい。

年頃らしい生意気な小娘で、恐竜には疎いがパソコンのプログラムが得意であり、また、自称ビーガン。
Fsnというかなりマイナーなソフトを使っている為、園内のシステムのパッと見UNIXだと分かりにくい画面を見て、一目でそれだと見抜くシーンはよくネタにされた。
劇中ではねばねばした液体をぶっかけられる。※恐竜のクシャミの事です。

ちなみに原作ではレックスが妹。

ティム
演:ジョゼフ・マゼロ/吹き替え:大島一貴
レックスの弟。
恐竜が大好きで、グラントに懐いており、劇中では何かと酷い目に遭う。
恐竜の知識に長けている大人びた子かと思いきや、車の転落に遭った際に嘔吐してしまった事を気にしつつ、グラントに「誰にも言わないでほしい」と頼む等、年相応な少年でもある。

原作ではティムが兄で、コンピューターの扱いが得意なのもこちら。

ちなみに、後述の字幕の誤記と並んで、よく物議をかもすのが、アランと木の上で一夜を明かす時のやり取り。

ティム「目の見えない恐竜の名前は?」
アラン「……難しいな、なんだろう?」
ティム「メガミエンドンだよ!!」
アラン「ははっ!」
ティム「そいつが飼ってる犬の名前は?」
アラン「降参だ」
ティム「メガミエンケンだよ!!」

ご覧の通り、本来は英語じゃなければ成立しないなぞなぞを単純に直訳してしまっている為、全くなぞなぞの体をなしていないのである*5
ここは原語を無視してでも、日本語で成立するなぞなぞに変更すべきだっただろう(「Q:毎朝家の裏口にやってくる恐竜は? A:マイアサウラ」とか)。
これについては今に至るまで修正されていない。

レイ・アーノルド*6
演:サミュエル・L・ジャクソン/吹き替え:梁田清之
パークのチーフエンジニアで、愛煙家である為、登場するシーンではほぼ必ずスパスパやっている。
聖書の一節を引用したり謎解きゲームに参加したりはしない。

技量はあるが怠惰な部下に頭を悩ませ、さらに最悪な事態を引き起こされた事により苦悩する。
今でこそ名俳優のサミュエルだが、今作では驚くほど地味な役。
終盤、エリーと再会できた事はできたが、既に恐竜に食い殺されたらしく、腕のみが出てきた

原作ではカオス理論にもある程度の知識を持っていたが、彼に言わせれば「理論屋が唱える机上の空論」。
パークはいずれ破綻するというマルコムの主張を一蹴し、自身が携わるシステムに絶大な自信を抱いていた彼だったが結果は……上記の通り。

ロバート・マルドゥーン
演:ボブ・ペック/吹き替え:田中信夫
パークの恐竜監視員。
猛獣の扱いのベテランで、パークの管理面において火力がかなり不十分である事を嫌というほど理解しており、対戦車用装備の配備を要求していた。
T-レックスに追跡されている最中でも冷静で、ハモンドから孫達の救助を頼まれてもふたつ返事で受ける等、頼れる男。
本来の脚本であれば、クライマックスで、ラプトルに囲まれたグラント達を助けに来る予定だった……が、T-レックスにそのお株を奪われてしまった。
ある意味、脚本の犠牲となってしまったキャラクターである。
終盤で武器を完備してエリーの護衛に参加したものの、囮と不意討ちを仕掛けたラプトルに食い殺されてしまう。
生き延びてほしかった……。
コミック版では「実はなんとか逃げ延びていた」という設定で再登場する。

原作ではウイスキーを煽りながらティラノサウルスやラプトルに対し果敢に戦いを挑む。
恐竜監視員らしく恐竜の恐ろしさを誰よりも熟知しており、現場の状況も知らずに口出しばかりするハモンドの事を「口うるさい小男」と相当嫌っていた。
同様の理由でアーノルドの事もあまり高く評価せず、事故発生後もなお開園を急ぐ彼の事を何かにつけて「バカめが」と罵っていた。
ビッグ・レックスを麻酔弾で倒すという大金星をあげたが、ラプトルとの戦いの最中に脚を負傷してしまう。
しかし、こちらでは最終的に生還している。

ドナルド・ジェナーロ
演:マーティン・フェレロ/吹き替え:納谷六朗
インジェン社の顧問弁護士。
慣れない森の中のパークにあからさまに嫌な態度をとっていたが、パークの開演で見込まれる収益に浮かれ気味になっていた。
しかし、T-レックスにビビって自分だけトイレに逃げるという死亡フラグお約束の行動をとった結果、囲いから逃げ出したT-レックスに頭から噛みつかれて死亡するという最期を遂げた。
さすがに殺される程の非がある人物とは言えないものの、その最期はどこかマヌケで哀れである。

原作でも拝金主義、かつ事なかれ主義者で性格も悪人寄り。
だがマルドゥーンによる遭難客の捜索やラプトル退治に積極的に同行する等、映画よりは勇敢な人物として描かれており、要するに映画版のサトラー博士の活躍は、原作ではジェナーロが担っている。
弁護士らしく頭も切れ、ラプトルが乗り込んだ補給船をデタラメな法律を持ち出して回頭させ、すんでのところで恐竜の本土上陸を阻止するという功績もあげた。
終盤は半ば強引にラプトルの巣の捜索に付き合わされたが、最終的には生還し、グラントからは「無責任にハモンドの事業の片棒を担いだ卑怯者」と指弾されていた彼だが、ぶっちゃけ登場人物と読者の間で評価が真っ二つに割れる人物である。
映画でのキャラクターには、原作のみ登場するエド・リージスの要素も含まれている。

デニス・ネドリー
演;ウェイン・ナイト/吹き替え:桜井敏治
システムエンジニアで、パークのセキュリティシステムの管理を担当。

ズボラで怠惰な肥満体の男で、机の上は常に散らかっている。
ただし、DNA配列を解析するスパコンの処理の効率化を成したのはネドリーであり、エンジニアとしての実力はあった。
しかし性格面がアレだった為、ハモンドや同僚からの評判は最悪であり、雇用条件も実績に見合わない物だったとか。

実はライバル会社・バイオシンに雇われており、培養していた恐竜の胚を提供する産業スパイを働こうとしていた。
雇用条件が悪かった事がこの離反に繋がったらしい。
そして逃げる為に嵐の中、セキュリティシステムをダウンさせて桟橋へ向かい、騒動の全ての発端を作る
しかし、その道中で腹を空かせたディロフォサウルスと遭遇し、顔に毒液をぶっかけられて失明。
車で逃亡を図るも車内に侵入され、無惨にも食い殺されてしまうのだった。
詰まる所、ハモンド達が実績やパークでの功績を「勤務態度を少しは是正してくれたら」程度にでも評価していれば、この惨劇は起きなかったのだ。
実際、ハモンドや同僚達のネドリーに対する態度の方にもかなり問題があったのは紛れもない事実。
何しろ作中描写を見る限り、オープンを間近に控えてもシステム担当はネドリーしか常勤していないのである*7
システムをダウンした際、簡単に復旧できないように細工した挙句ケンカ売りまくりのブラクラを添えた事からも、相当に頭に来ていた事が伺える。
ハモンドェ……。

原作では彼の功績、そしてインジェン社から受けた仕打ちがさらに細かく明かされている。
そもそもDNA鎖を解読する為の技術は劇中世界でも発展途上であり、実用化は世界中の遺伝子研究所が十年がかりで取り組むほどの大仕事。
要するに国家事業クラスの途方もない大仕事を丸投げされたわけだが、コンピュータの天才たる彼はたった一人でなんとか形にしてみせた……が、ハモンドはその功績を正当に評価しなかった。
それどころか、会社都合による追加勤務を課しておきながら、その分の賃金の支払いを拒否&これを不服としたネドリーの悪評を各方面にばら撒き、訴訟までちらつかせる

……と、超絶ブラック企業ムーブまでかます始末。
これで忠誠心を持ってもらおうという方がおかしいというもの。

原作でも映画同様、ディロフォサウルスに襲われ死亡した。
盗みを働いた挙句、結果的に多くの人命を危険に晒した点では悪人の誹りを免れないが、インジェン社に嘗めさせられた辛酸を思えば同情の余地は大いにあり、ある意味悲しき悪役と言えよう。

余談だが、彼のデスクには“原爆の父”ことロバート・オッペンハイマー博士の写真がキノコ雲のイラストと共に飾られていた。
原爆と遺伝子工学は共に科学の発展の産物である事を考えれば、原作者の主張を示唆しているように見えてこないだろうか?

ちなみに件のブラクラは「アッハッハーン、魔法の呪文を言わなきゃダメだよ。アッハッハーン、アッハッハーン」と、白ウサギを模したキャラが延々繰り返すというもの。


ヘンリー・ウー
演:B・D・ウォン/吹き替え:中村大樹
生物科学者で、恐竜の培養を担当する。
容貌とファミリーネームからして東洋系だろう。
事件発生時はまるで予見してたかのように都合良く本島に帰っていた為、危機は逃れていた。

今作ではチョイ役だったが、原作では主要人物として最後まで活躍。
恐竜をソフトウェアのように、より観客ウケする“商品”としてバージョンアップする事を進言していたが、ハモンドからは「それでは恐竜が本物でなくなる」と聞き入れてもらえなかった。
そのバージョンアップ案には恐竜を安全に改良する事も含まれており、映画シリーズのマッドサイエンティストなウーを知る人が原作を読んだら困惑必須。

後に4作目にてまさかのキーパーソンとして再登場を果たすが、同時にハモンド顔負けのトラブルメーカー(死神)体質でもある事も明らかにされた。
裏設定では、琥珀から採取した恐竜の遺伝子がなかなか揃わない中で、カエルの遺伝子で欠損部分を補う事を発案した張本人らしい。
本作の事態はウーにとっても想定外だったが、恐れるどころか生命の可能性に魅了されてしまったとの事……。

ジェリー・ハーディング*8
演:ジェラルド・R・モーレン/
パークのお抱え獣医で、映画版ではトリケラトプスを、小説版ではステゴサウルスを治療していた。
映画ではアラン一行と別れた後の顛末は描かれなかった(一緒に残ったエリーをハモンドの元へ送り届けたに留まる)が、小説版では最後までパークの復旧や負傷したマルコムの治療で奔走していた。

ちなみに恐竜の病気の原因は映画では明らかにされなかったが、小説版では胃石(食物の消化を促進する為に消化管に取り込む石の事)を呑み込む際に西インドライラックの実を誤飲した事が明らかにされている(映画でもシナリオは用意されていたが、カットされた)。
また、続編に登場したトラブルメーカー古生物学者のサラ・ハーディングとは血縁関係にある事が示唆されている。

演じたモーレンは本作の製作を兼任している。

ルイス・ドジスン
演:キャメロン・ソア/吹き替え:小室正幸
インジェン社のライバル企業に所属する産業スパイ。
密かにネドリーに造反を促し、胚を持ち出す為にヘアスプレーに偽装した保管器を手渡した。
映画ではこれっきりの登場だが、のちに6作目で再登場し、重大な役目を担う。
原作では黒幕として暗躍し、続編では恐竜の餌食になった。
ちなみに吹き替え版では言語ネタでネドリーから「ドジ」の部分を強調されている。

名前の元ネタはルイス・キャロル*9


登場恐竜


登場する恐竜は、白亜紀の木の樹液が固まった石である琥珀に閉じ込められた蚊の死骸が吸った血液から遺伝子を取り出し、欠けた部分をカエルの遺伝子で補足したクローン体。
ちなみに現実にはこの方法での再現は不可能である。
理由は蚊の消化器官の働きや、たんぱく質の経年劣化といった諸々の要因から、6500万年前のDNAが現代に遺る事は有り得ない為である。
残念なような、ホッとするような……*10

後年、恐竜の生態について考察が進み、本作での描写(外見等)に間違いがあるという指摘がなされたが、前述したようにジュラシック・パークで作られた生物は恐竜をベースに別生物の遺伝子が組み合わされたキメラ体である為、「実際の恐竜とは異なる」という事で説明がつく。

とはいえ、従来怪獣みたいなイメージを持たれていた恐竜という存在に対し、「恐竜もかつてこの星に存在した、すばらしい生きもの」である事を一般層に知らしめたのは今作でまず間違いなく、この映画の恐竜研究への貢献は非常に大きい。
本作以降恐竜研究者、特に女性の研究者が増えたとか。
また本作のヒットにより恐竜を扱った書籍や作品は非常に増えた。

繁殖は行えないよう雌のみになるよう調整されていたはずだったが、
件の遺伝子の出所であるカエルが「周囲の雌雄比率に応じて性転換する」種だったせいで実際は産卵が可能となっていた事が発見される。
最も近縁だと映画開始から伏線が張られていた鳥類でも、当時主流の説だった爬虫類でもなく、両生類のカエルが選ばれたのはおそらくこの繁殖の展開の為。
ちなみに後の『ジュラシック・ワールド』でウー博士より「熱帯での発熱調節の為」だったと説明された。

ティラノサウルス・レックス
肉食恐竜の王者にしてラスボスヴェロキラプトル視点
最初の周回では姿を見せなかったが、後に雨の中、焦らしに焦らし、フェンスを破って堂々と登場する様はまさに圧巻。
そのままツアーに残った一同を車ごと、あるいはトイレごと襲い恐怖のドン底に陥れた。

……が、最後の最後で美味しい所を持って行く。

本作では車に追いつかんばかりの勢いで突っ走ってくる。
これもまたかなりの迫力で、ジープで退避しようとしたエリー一行(特に後部座席で脚を負傷した関係で後ろ向きに座らされてるマルコムは尚更)の恐怖感が思わずこちらにも伝わる勢いである。
ティラノサウルス・レックス(ジュラシック・パーク)の項目も参照。

ヴェロキラプトル
小型の肉食竜。
動きが俊敏で必殺の鉤爪を持ち、さらに大変知能が高く頭が切れ、真っ向から襲う以外に攻め手を変えつつ不意を突き、群れを成して行動する完成度の高いハンター。
終盤ではある意味T-レックス以上の強敵として一同を苦しめた。
なお、本来のラプトルは白亜紀後期に現れたしっぽの先までの長さが2m台で、山猫サイズの小型恐竜だがこの作品では上記の通り中型クラスの身体になっている。
スピルバーグが見栄え重視で近縁種(ドロマエオサウルス科)のデイノニクスやユタラプトルをモデルにしたのが理由らしい。

ディロフォサウルス
二枚のトサカとエリマキトカゲに似た襟巻を持った小型恐竜。
一見無害だが、実は汚い声で鳴き口から粘液を吐く肉食恐竜。
なお、本来のディロフォサウルスは5~6mはある、ジュラ紀前期としては大型な肉食動物。
まだ生まれてちょっとしか経っていない幼体の可能性もあるが、後のシリーズでもこのサイズで登場している為、どうやらジュラシック・パークの世界ではこの大きさが最大なのかもしれない。
特徴的な襟巻な毒は化石からは見つかっておらず、映画中での創作(当時は顎が貧弱で狩りができない腐肉食者だったと思われていた為であり、後にこの説は否定された)。
「それにしても、本来威嚇用のものである襟巻をこれから獲物を襲う時に広げるのがおかしい」というツッコミが多数寄せられた。まあ、本作に登場するのはあくまで恐竜っぽいキメラなので……。

ちなみに原作では、雌しかいない&蛙のDNAを使われていない為、性転換できないにもかかわらず、何故か求愛動を行うという不可解な描写があった。ま、まさか……

ブラキオサウルス
パークに来場したメンバーが初めて目にした恐竜。
大型の竜脚類で、人間にも懐きやすく、大人しい草食恐竜。
前肢が長く頭部が盛り上がっているのがあるのがトレードマーク。
前夜にティラノサウルスに襲われたトラウマからか、間近で対面したレックスは「怪物」呼びしつつ悲鳴を上げてたが、グラントから「理由もなく嫌ってはいけないよ」「大きな牛だと思えばいいのさ」と諭され、ティムからも自分より怖がりだとからかわれつつブラキオサウルスと触れ合っていた。

冒頭の後ろ足で立ち上がるシーンが恐竜オタにツッコまれまくったが、一方でそのツッコミに対して、「立てないならどうやって交尾するんだ?」と逆にツッコまれてもいるが、確かにそれもそう。
実際のところ真偽は不明ではあるものの、本作に登場するのはあくまで恐竜ry

また、映画では哺乳類のように咀嚼するシーンがあるが、これも現実には顎の構造や歯の形等から不可能である。
まあ、本作に登場するry

ガリミムス
雑食性のダチョウ恐竜で、草原に生息し、群れをなしている。
見せ場はあまりないものの、グラントと子供2人が迷い込んだ草原で、ティラノサウルスから逃れようとするガリミムスの群れに紛れて一緒に走る姿は必見である。

あの一糸乱れぬ動きを見ろ……! 鳥に進化したっていうのも頷けるだろう?

トリケラトプス
角の生えた大型草食恐竜。
グラント曰く、「子供の頃から一番好きな恐竜だった」との事で、対面した際は子供のように大喜びで抱きついた。
ツアーでは毒の実を食べて体調を崩していたので、トリケラトプスを診てたハーディングから危害はないという事で、グラント達は安心して触れさせてもらった。
小説版ではこの顛末が詳しく描写され、胃石を飲み込む際に誤って本来は食べない(映画でエリーが困惑していたのはこの為である)毒の木の実を飲み込んでしまったとされている。

パラサウロロフス
最初にブラキオサウルスが登場するシーンで一瞬だけ遠景で映る。登場時間約5秒
本作ではこれだけではあるが、その活躍は次作に持ち越しとなる。

その他の恐竜
ネドリーが胚を盗むシーンで、ステゴサウルス(スペルが「STEG"A"SAURUS」と誤記)やメトリアカントサウルス、プロケラトサウルスなどの名前が登場する。
このうちステゴサウルスは続編にて存在感を存分にアピールした。
なお戸田奈津子氏の字幕版だと、「メトリントサウルス」とアカン誤記がされている事は一部界隈では有名であり、ウキウキで恐竜図鑑のページを繰り、「あれ?」と首を傾げたちびっ子観客も少なくないだろうアルファベット表記通りに和訳すればいいのになぜ……そりゃあ某ベトナム戦争映画の担当外されるわな。*11

この他にも、設定上バリオニクスやセギサウルス、ヘレラサウルス等も島で飼育されているようである(パークの地図に名前が登場する)。
ちなみに映画の裏側を描いたスピンオフ的なゲームである「Jurassic Park: The Game」では、ティロサウルスやトロオドン等も登場。

原作には他に、ケアラダクティルスやアパトサウルス、ハドロサウルス、マイアサウラ、ヒプシロフォドン、オスニエリア、プロコンプソグナトゥス、ミクロケラトプス*12、スティラコサウルスとエウオプロケファルス(この二種は名前のみ)、さらに石炭紀の生物であるはずのメガネウラまで登場。マイナーなヤツらが多すぎる。
このうちアパトサウルスとマイアサウラはブラキオサウルスに、ハドロサウルスはガリミムスにそれぞれ役割を譲った。
プロコンプソグナトゥスは続編にて、より知名度の高いコンプソグナトゥスに改名し、ついでに凶暴さもマシマシにして銀幕デビューしており、続編の冒頭で描かれた幼女襲撃という暴挙は、もともと原作の序盤の展開なのである。

余談

名作や革新的な作品には面白い裏話が付きもので、当然この作品にもさまざまな逸話がある。

キャンセルされたストップモーションアニメ
先に述べた通り、当初はアニマトロニクスとストップモーションアニメを中心に撮影する予定だった。
しかし監督がCGに興味を持った事で予定を変更し、ストップモーションアニメはキャンセルされてしまう。
これにショックを受けたのは、既に4か月近くかけて映像を作っていたフィル・ティペットという男。
『スター・ウォーズ』旧三部作にも関わっていた彼も、CGで動く恐竜を見て「私は絶滅(失業)だ」とかなり落ち込んでいたらしい。
しかし「恐竜のリアルなCGは作れても、動きがリアルでなければ意味が無い」とCGのアニメーション監修を任される事に。
こうして命を吹き込まれたのが本編の恐竜達である(特にラプトルがキッチンで暴れるシーンは彼のアイデアがかなり盛り込まれている)。

恐竜の鳴き声
今作に登場する恐竜の鳴き声は、実在する生物の鳴き声を合成したり加工したりした物が使われている。
ラプトルは馬、
T-レックスは犬やワニ、ゾウ、
ディロフォサウルスはホエザルや白鳥、ガラガラヘビの声を使っているという。

実物大ティラノサウルス・レックス
一般的にアニマトロニクスでは必要な部分だけを作り撮影を行う(頭・脚・尻尾等)
ところが監督はどうせならフルスケールの機械仕掛けのティラノサウルス・レックス(歩行可能)を作りたいとか考えていた。
(流石に歩行は無理だったが、NASAやらMTIやらから研究者を集め検討していた辺りマジで歩かせようとしていた)
その後2年ほどの月日をかけて1/1T-REXが完成。
流石に腿から下は無いが全長12mを超える巨大な物に。
しかしこれほどの巨体の割にそこまでトラブルも無く撮影は順調に進み、スケジュールが前倒しになるほどだったそうだ。
監督は「『ジョーズ』の時に比べたら夢のようだ」と笑っていたそうな二度と戻ってこないとか言ってたもんね
序盤でティラノが自動車のサンルーフ越しに子供達を食おうとするシーンはこのロボットが使われている。
なおサンルーフが外れてしまったのは実はシナリオには無いトラブルだった為、この時子役達はマジ泣きしていたとか……。

急遽変更された"オチ"
当初の脚本では、グラント博士一行は、ティラノの骨格模型を利用して、マルドゥーンの助けも借りながら、自力でラプトルを倒し脱出するというシナリオだった。
ところが監督が「この映画の看板はティラノサウルスだ。このまま出さないで終わったらブーイングが起きるに決まっている」と急遽脚本を大幅に変更。
そして生まれたのがあのクライマックスである。
これがどれほどの英断だったかは語るまでもないだろう。
だからといってマルドゥーンを殺す必要があったのか疑問符が付くが。


「追記修正を初めてする時はどんな時にもトラブルがある。仮面ライダーの項目もそうだった」
「クウガの項目はミスをしても人を喰ったりしない」

「追記博士、それに修正博士。」
「ようこそ我が…ジュラシック・項目へ!」

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最終更新:2025年01月04日 19:49

*1 映画公開の半年前に放送開始した『恐竜戦隊ジュウレンジャー』の元ネタである。

*2 2万ドルってどんくらい?となると思うが、1993年のドル円だと大体110円くらいなので1日220万円貰える事になるので、払える方もすごい。

*3 それでもブラキオサウルスと間近で対面した際は喜んでいた

*4 媒体によってはマルカム表記。

*5 中学生レベルの英語の知識があれば見当は付くだろうが、本来は前者は「ブラインドン」、後者は「ブラインドッグ」というネタ

*6 原作のファーストネームはジョンであり、おそらくはハモンドとの差別化の為に変更されたのだろう。

*7 ハーバード(映画版ではケンブリッジ)にいるネドリーの仲間に連絡を取れという趣旨のセリフがある為、流石に1人という事はないようだが……

*8 ゲーム版でのファーストネームはゲイリー。

*9 ルイス・キャロルはペンネームで、本名はチャールズ・ラトウィッジ・ドジスン。原作者クライトンはキャロルから多くの影響を受けており、原作の続編でも赤の女王仮説(進化に関する仮説の一つで、『鏡の国のアリス』に由来しており、あらゆる生物種は他種との生存競争の中で、常に持続的な進化を強いられているというもの)に言及している。

*10 DNAには521年の半減期が存在し、実際に血を吸った蚊が琥珀の中に閉じ込められて保存されていた例があったらしいが、その血は鉄の塊になっていたらしい。

*11 2015年にフジテレビ系列で放映された際には「メトリアカントサウルス」と修正されている

*12 ハチの一種と学名が被っていた事が発覚した為、後年に「ミクロケラトゥス」に改名された。