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ビーストウォーズ 超生命体トランスフォーマー

登録日:2009/05/29 Fri 01:43:23
更新日:2024/12/18 Wed 17:01:23
所要時間:約 8 分で読めます


タグ一覧
20代ホイホイ 23年春アニメ 97年秋アニメ AV(アニマルビデオ) CG TF WAR!WAR!STOPIT いい大人の悪ふざけ まだマトモな頃 ←あくまで当社比 やりたい放題 アドリブ アニメ イボンコ カオス カナダで作ってんだよカナダで! ギャグアニメ コンボイ サイバトロン スパロボ参戦希望 タカラ タカラトミー ダイノボット チータス テレビ東京 デストロン トランスフォーマー ビーストウォーズ ビーストウォーズアゲイン ブラックウィドー ホントはシリアス ラットル ロボットアニメ ワスピーター 三木眞一郎 上級者向けアニメ 下町兄弟 世界初のフルCG 伝説の始まり 全ての始まり 全てはここから始まった 公式が病気 動物 動物番組 千葉トロン 千葉繫 台本通りに演じるのは手抜き 吹き替え 声優無法地帯 声優無法地帯←割と控えめ 変形 変身 子安武人 山口勝平 岩浪美和 序盤はギスギスシーン多し 愛すべきバカ達 敵も味方も変な奴 柚木涼香 海外アニメ 獣戦争 玩具 自由過ぎる 蜘蛛ねーちゃん 衝撃のラスト 計算ずくのカオス 豪華声優陣 飛田展男 高木渉



さぁ、よい子のみんな元気だったかな?

ビーストウォーズが始まるぞ!

では、行ってみよう!!



「ビーストウォーズ 超生命体トランスフォーマー」とは「トランスフォーマー」シリーズの1作である。


概要

世界初フル3DCGロボットアニメーションシリーズの1つで、カナダのメインフレーム社にて制作された『BEAST WARS:TRANSFORMERS』第1シーズン。

その日本語吹替版である本作は、1997年~1998年にテレビ東京系列と一部独立UHF局で放送された。全26話。

現在と違っていかにも3DCGと言った質感が強いが、アニメーションという強みを活かしたテンポの良い変形シーン*1などは魅力的。

時系列上では、初代G1から数百年後の世界(あるいは400万年前の過去と言うべきか)が舞台となっている。
そのためG1を髣髴とさせるセリフが出てきたり、ニューリーダーが霊体としてだがゲスト出演している。
また、物語終盤ではエイリアンがユニクロンの姿で登場している。

放送終了後、ストーリーは『ビーストウォーズメタルス』へと引き継がれる。

タカラトミー公式のYouTubeチャンネルでは全話無料公開されていたが、OP&ED&次回予告はカットされる仕様であった。

そして2023年4月2日(日)、映画『トランスフォーマー ビースト覚醒』の公開を記念して、テレビ東京系にて『ビーストウォーズ 超生命体トランスフォーマー アゲイン』が放送開始される。
セレクション方式で、各話15分の前後編となる。
ナレーションにはラットル役の山口勝平氏が担当。
最終回まで放送することはなく、アニメ新作の『トランスフォーマー アーススパーク』につないだ。



【ストーリー】

サイバトロン(オートボット)とデストロン(ディセプティコン)、そしてユニクロンをも巻き込んだ戦争が終結してから数百年後が経過し、両者の和平によって平和が訪れていた。

ところが『サイバトロン(マクシマルズ)』が極秘に保管していたエネルギー『エネルゴン』の在りかが記憶されている『ゴールデンディスク』が、破壊大帝メガトロン率いる『デストロン(プレダコン)』の反乱分子に奪われてしまう。
コンボイ率いるサイバトロン戦士達はデストロンを追うも、宇宙空間で激しい戦いになり両軍の宇宙船は未知の惑星エネルゴアに墜落してしまうのであった。

墜落した両軍宇宙船は飛べなくなってしまったが、彼らは助かった。
だが、この惑星はエネルゴンの力が大き過ぎて長時間ロボットモードではいられず、ロボットモードで戦闘が行えるのはわずか3分間のみ。

そこで両陣営はコンピューターを起動しその星の生物をスキャン、環境に合わせた動物の変身体(ビーストモード)を手に入れることで順応した。

こうして惑星エネルゴアでサイバトロンVSデストロンのビーストウォーズが開始されたのである。


【主題歌】


OP:WAR WAR! STOP IT 歌:下町兄弟

ED:FOR THE DREAM 歌:MICKEY

前者はアニソンでは珍しいラップ。だが内容はしっかりとした反戦歌である。

最終回ではOPをサイバトロンみんなで歌い、EDは一人一人メッセージを送った。
「私は大丈夫だ!」


【用語】

  • 惑星エネルゴア
サイバトロンとデストロンが辿り着いた未知の惑星。
その環境は地球とよく似ているが、月が二つある。
惑星中に大量の天然エネルゴンが埋蔵されており、天然エネルゴン下ではトランスフォーマーの体に悪影響を及ぼしてしまう為、両軍は姿のリペアを余儀なくされた。
地球の生物そっくりな生物が生息しており、人類に該当する知的生命体はいないようだが、その各地に謎の遺跡があり…?

サイバトロンの宇宙調査船。
デストロンのテラクラッシャー号のワープスピードに付いて来れるのはこの船だけらしい。
調査船でありながらも、主砲「プラズマキャノン砲」は強力。
惑星エネルゴアに於けるサイバトロン側の基地となった。
墜落のショックで航行不能になるが、動力部以外はまだ生きており…

  • テラクラッシャー号/デストロン基地
デストロンの宇宙戦艦。
メガトロンがゴールデンディスクを盗んだ際、脱走の時に強奪したもの。
墜落の際に片翼が破損し、火山地帯に墜落した事で溶岩に侵食されてしまい、こちらは完全に航行不能となってしまった為、デストロン側の基地として使われる事に。
周辺はオートガンでガードし、基地内はホバーボードで移動するなど、施設面ではサイバトロン基地よりも充実している。あとついでにネズミも住んでいる

  • 再生カプセル
サイバトロン・デストロン両軍の基地内にある、トランスフォーマーの肉体を修復・リペアできる施設。
サイバトロンはカプセル型、デストロンはプール型となっている。
ちなみに、サイバトロン側の再生カプセルは一つだけしかないようにも見えるが、これは単に司令室に置いてあるのが一つだけという事であり、実際は多くの再生カプセルが存在している。

  • 救命ポッド
アクサロン号が衛星軌道上に投機した、サイバトロンのプロトフォーム(素体)が一体ずつ収容されたポッド。
この中のプロトフォームはサイバトロンでもデストロンでもない状態な為、敵にも味方にもなりうる。
これの争奪戦も物語の軸となった。
なお、条件によっては1人乗りの簡易宇宙船としても機能するらしい。

  • ゴールデンディスク
サイバトロンが極秘に保管していた金色のディスク。
エネルゴンのありかが記録されているとの事で、エネルゴンを目当てにメガトロンはこれを盗んだ。
最終的には地球にも来れなかった事で用済みとなってしまった。が…?


【主な登場キャラクター】

ビーストモードはサイバトロン側が哺乳類メインで、デストロン側は恐竜と虫がメイン。
玩具にはビーストマスク(ミュータントヘッド)というギミックがあり、CGではキャラによってどちらが素顔か異なる。

大部分のキャラクターには「ダーッ!」や「ぶ~ん」などと特徴的な語尾や口癖が設定されている。
これにより低年齢層の視聴者にも親しみやすくなり、何人もいるキャラクターを覚えやすくなっている。

また、OPの冒頭では「やあ、みんな!〇〇の××だ!(中略)ビーストウォーズの始まりだ!」などと視聴者に呼びかける演出が取られており、様々な面で子供向けが強く意識されている。


《サイバトロン(Maximals)》

CV:子安武人
探査船アクサロンのキャプテン及びチームリーダー(正確には総司令官ではなく一部隊の指揮官)。
経験は浅いが、どんな困難にも立ち向かう優秀な戦士。部下達からの信頼も厚い。

大人の事情でアドリブは少なく、真面目キャラになっている。
ロボットモードでは背中のコンボイジェットによって飛行できる。
本作のサイバトロンでは貴重な航空戦力としても活躍。つまり空飛ぶゴリラ。

バナナ大好き。この頃はまだイボンコではなかった。
「話し合えば、分かりあえるはずだ!」

CV:中村大樹
チームの副司令官で、温厚で思慮深い性格。
「〇〇ダナ」「××しなサイ」という口調が特徴。
発明が得意で物凄い怪力を持つ縁の下の力持ち。足は遅い。

一度捕まって無理矢理デストロンにされたが、野心に満ちた危険な人物に豹変して基地内で大暴れ。
結局サイバトロンに戻されたんだな。
「コンボイさん?デブっちょゴリラ!鼻の穴デカいよ!」

CV:高木渉
陸上では最速のスピードを誇るサイバトロン戦士。
「〇〇じゃん!」という口調でしゃべる。

少年のような性格で好奇心旺盛。
1人で突っ走りやすく、自ら危険に陥る事もしばしばじゃ~ん。校長先生ネタは以降も定番。
「撃つべし!撃つべし!」

CV:山口勝平
最も小さなサイバトロン戦士で、その小柄な身体を活かしスパイ活動を務める。
臆病な性格で戦うのも好きじゃないが、やる時はやる子。
日本版では山口氏の吹き替えで少年キャラとなっているが、実は原語版では経験豊富なベテランである。
爆発物の扱いはお手の物。

ちっこいので飛行するコンボイの背中が定位置。しりとりが好きなのかチータスとよく遊んでいる。淫獣。
アドリブがカオスでサイバトロンで一番フリーダム。デヤーッ!
「タッタカタッタッタ~タ~タ~♪時限爆弾、セット~♪」

CV:藤原啓治
元々デストロンだったが、メガトロンを倒す為にサイバトロンに寝返った。
好戦的かつ凶暴で気が短い。だが、戦士としての誇りは高く、仲間思い。
口癖は「ダァーッ!」であり、何かにつけて口にする。

ラットルからは当初警戒されていたが、様々な戦いを経るにつれ友情が芽生えていく。
犬猿の仲ならぬ鼠竜の仲ダーッ!
「たいした民主主義だ。引き分け一つ、解決出来ねぇたぁな!」

CV:遠近孝一
プロトフォームから誕生した6人目のサイバトロン戦士。
途中加入した最初の人物である。侍風のござる口調でしゃべる。

自然を愛し、ロボットモードよりビーストモードを好むでござる。
「やむを得ん…サイバトロンである以上、歌は逃れられん…ごぉー、ごぉー、ござござござる♪」

CV:岩永哲哉
プロトフォームから誕生した7人目のサイバトロン戦士。
数少ない空を飛べる戦士で、穏やかかつ純真な性格。
口癖は「ハイヤー!」であり両腕から放つアローショットの連射で敵を射抜く。

原語版では女性キャラだったが、日本版では男性キャラ。でものちの漫画では美少女に。
「バラエティじゃないんだからテロップ出すなよ…」


《デストロン(Predacons)》

CV:千葉繁
デストロン軍のリーダーで、自称初代破壊大帝メガトロンの末裔。
ゴールデンディスクと戦艦テラクラッシャーを強奪した。

曲者揃いのデストロンを力で抑え込んでいる。コンボイとは対照的に部下への愛着や仲間意識などは持ち合わせていない。
ギャグめいた台詞を発することが非常に多く、一見するとひょうきんなオッサンという印象を受ける。
その一方で誰よりも知略に長け、その研ぎ澄まされた頭脳で常に謀略を巡らせている。

ギャグキャラでありながら冷酷な本性を併せ持つという意味では、吹き替えを担当した千葉氏の本領がよく発揮されている。
ついたあだ名はアドリブ帝王にして腹筋破壊大帝。

「犠牲が無駄になりそうだな、残念だが!!」
「ふはははは、悪者は意味もなく笑いながら登場するものだ、ふはははは!わたしが破壊大帝メ~ガトロンだ~!」

CV:遠藤雅
デストロン軍の副司令官。
性格は良くないが悪くもなく、数少ないメガトロンに忠実なデストロン戦士。
「愚直に従うアホだから」というあんまりな理由で副司令官にされている。

気が弱く泣き虫なオラオラ不良少年。序盤はこれでも結構強かった。
なぜか全国のお母さんからの人気を気にしている。
「サソリは気持ち悪いってお母さんに嫌われてんだぞ!オレも正義の味方になりたかった~!」

CV:加藤賢崇
性格はのんびり屋であまり好戦的ではなく、よく的にされたりバラバラにされる。
気の抜けるようなゆるい喋り方が特徴。口癖は「ぶ~ん」
デストロン最弱であるが、やられてもすぐに復活するため不死身ではないかともいわれる。
後半じゃスタースクリームの幽霊に憑依されちゃったこともあるぶ~ん。
「ぶ~ん、わ~やられちゃった~」

CV:長島雄一(チョー)
陰湿な性格の技術者。単独行動が多く、各地の地下に研究所を設けている。
常に何かを企み、クモ女のハーレムを作ろうとしているッスよ〜!
「ウヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ~ッ!」

CV:飛田展男
飛行コンビのワスピーターとよく行動し、イヤミが多く気取った性格。
隙あらばメガトロンを出し抜かんとする野心家ザンス。しかし中の人はのダヨーンである。
「カカカカカ、おバカァーッ!」

CV:永椎あゆみ(現:柚木涼香)
記念すべき蜘蛛ねーちゃん第1号。
サイバトロンのプロトフォームをタランスがプログラムを書き換えてデストロンとして誕生させた。
口癖は「シャーッ!」
ずる賢く自惚れ屋で、味方からも警戒されているっシャ!
女っ気の少ない日本語吹替版ではこれでも貴重な女キャラ。
「な~に、夢みたいなこと言ってんのよ」

CV:三木眞一郎
サイバトロンのプロトフォームをタランスがプログラミングチップを交換してデストロンとして誕生させた。
アリの思考と本能が人格に大きく影響を与えており、好戦的で単純な性格。
生まれた直後は自分のポッドをアリの巣だと認識し、何が何でも守ろうとしていた。

黄門様(女王アリ)として認識したメガトロンには忠実で戦闘能力も高い。ロボット時は飛べる。
後期の参加だったこともあり無印では出番が少なく、巻数の都合上仕方ないとはいえ、彼のみVHSのケースの表紙を飾っていないごっつんこ!
「ごっつんこ~!」

  • ナビ子
CV:永椎あゆみ
デストロン戦艦のナビゲーションシステム。ちょっとシノラーっぽい陽気な女性の性格。
2014年に日本で開催された『トランスフォーマー博』のコミックではメカイルカのボディを手に入れた。
デザイン:坂本ハヤト、通称:横浜ナビ子。
後に『トランスフォーマーレジェンズ』のクロミアのコミックにもこの姿で登場している。
「どうする?メガちゃん〜?」


【玩具オリジナルキャラクター】

アクサロンのポッドに入っていた戦士たち(プロトフォーム)の残り。続編の「メタルス」やアメコミに登場している。
一部はリデコされて続編「II」「ネオ」に登場した。
※以降、日本で販売されたもの以外は海外版準拠。「メタルス」以降に販売されたキャラは含めないものとします。([]内は海外名。)

サイバトロン(マクシマルズ)

  • アマゾン戦士 コンボバット[オプティマス・プライマル](コウモリ)
  • 戦闘員 レイザービースト(イノシシ)
  • 砂漠戦闘員 アルマー[アーマーディロ](アルマジロ)
  • 戦士 ハウリンガー[ウルファング](オオカミ)
  • 歩兵戦司令官 ホワイトクロー[ポーラクロー](シロクマ)
  • 海洋攻撃員 サイバーシャーク(シュモクザメ)
  • 水中攻撃員 クロージョー(ダイオウイカ)
  • 奇襲攻撃員 スナール(タスマニアデビル)
  • 先制攻撃員 ボーンクラッシャー(バイソン)
  • 警備員 K-9(シェパード犬)
  • 戦闘スペシャリスト グリムロック(ヴェロキラプトル)
  • ゲリラ戦スペシャリスト バブーム(マンドリル)
  • 司令官 プラウル(ライオン)/空中司令官 シルバーボルト(オオワシ)/陸上司令官 アイアンハイド(アフリカゾウ)/戦闘司令官 マグナボス


デストロン(プレダコンズ)

  • アマゾン帝王 メガリゲーター[メガトロン](クロコダイル)
  • 破壊工作兵 イグアナス(エリマキトカゲ)
  • 潜入兵 スナッパー(カミツキガメ)
  • 空中監視兵 バズソー(キラービー)
  • 空中攻撃兵 クワガイガー[インセクティコン](クワガタムシ)
  • 兵士 パワーピンチ(ハサミムシ)
  • 突撃兵 ドリルビット(ゾウムシ)
  • 隠密攻撃兵 レイザークロー(シオマネキ)
  • 奇襲攻撃兵 スピッター(ヤドクガエル)
  • 空襲攻撃兵 レーザービーク(プテラノドン)
  • 空中哨戒兵 ジェットストーム(ムカシトンボ)
  • 奇襲兵 マンテラー(カマキリ)
  • 砂漠破壊兵 リトラックス(ダンゴムシ)
  • 空中強襲兵 トランスキート()
  • 空軍将軍 シケータゴン(セミ)/陸軍将軍 ラムホーン(カブトムシ)/海軍将軍 シークランプ(ロブスター)/戦将 トライプレダカス


【日本語版について】

・企画の発足

本作の特徴として、ひょうきんな掛け合いや世界観にそぐわないようなギャグが非常に多いが、これは日本版の話である。
原語版は低迷していたトランスフォーマー人気を一気に復活させたヒット作ではあったものの、作風はハードで設定もやや複雑。
さらにセリフも少なく、G1時代の魅力であったキャラ同士の軽快な掛け合いがほとんどなかったことから、日本の子供に受け入れられないのではないかと危惧されていた。

そこで、日本版の制作に当たっては様々なテコ入れが行われた。
まず話の大筋に影響しない範囲で設定にアレンジされた。(組織名をマクシマル、プレダコンから、旧シリーズと同じくサイバトロン、デストロンに変えるなど)

続いて音響監督の岩浪美和による裁量で台本を大幅にアレンジし、さらにキャストのアドリブをある程度自由にすることで作風を和らげる事が試みられた。
吹き替えアニメであったためアフレコ時に映像が全て完成しており、アドリブを入れやすかったと言う事情もある。*2

ただし当初はタカラから「真面目な作風でお願いします」とオーダーを受けていた。
しかし岩浪美和はあえてこれに応じなかった。氏には先に同社の作品で担当したミュータント・タートルズにおける成功経験と、
その次に担当した海外アニメ*3での苦い失敗の経験があったのである。

前者のタートルズはタカラから期待されていなかったためほとんど任されていたようで、
岩波は「日本でこれはウケない」と察知して、台本をビーストと同様(というかこちらが先)にアレンジ。
さらに声優のアドリブによって日本流に大幅アレンジした。それまで成功していなかったタートルズのアニメは岩波主導で大成功を収めた。

一方でその次の作品はシリアスに、というオーダーであった。しかし作風がこれまた日本向けではなかった。
岩浪はこのオーダーには最初こそ反対したものの、この時はスポンサーの要望に折れた。しかし結果は大惨敗だったため、その判断は失敗だったと深く後悔した。

さてそれを経たうえでのビーストを見てみよう
やや暗いストーリー、無骨な3DCGによる鉄面皮のキャラクター達、日本のアニメに比べて少ない会話…明らかに日本向けでない作品であった。
先の経験則を見ても、またスポンサーのオーダーを平然と通せばまず成功しない。監督の岩波にはその確信があった。

よって岩波は自身が考えたおふざけ台本をギリギリまで提出しなかった。そしていざスポンサーの目に触れると呼び出しを食らい、大目玉を食らう。
オーダーに猛反対だった岩波は2時間程度激論が交わされる程かなり揉めたそうだが
岩波は「こうしないと絶対受けません!」「僕が責任取りますから!!(取れるわけないんだけど※本人談)」と言い切り、なんとか自身の意見を押し通したのだった。

・アフレコ

キャスティングは当時としては正統派なようでいて、なかなか奇抜であった。
サイバトロンサイドこそ一目でわかるように、当時における若手、中堅、ベテランとバランスの良い構成であった。
が、敵のデストロンの配役は大ベテランの千葉繁や飛田展男等を筆頭に、
  • 吹き替え声優としていくらかの経験はあるが、本業は別のジャンルでしかも超大物の加藤賢崇。
  • セクシーアイドルで戦隊で言うところのアダルト女優枠に近かった柚木涼香(当時は「永椎あゆ美」名義)。
  • 超若手俳優だった遠藤雅。
と、当時としてみれば声優としては無名の人物がいくらか現場に入っている。
特に加藤賢崇は自身がキャスティングされた理由を理解していたようで、声優がアドリブで笑いを取れるのか懐疑的だったらしい。
しかしベテランの音響監督だった岩波の目に狂いはなく、立派にアフレコが出来るタレント声優として番組で活躍した。

が、発足までの経緯から、当初アフレコを見学に来たスポンサーサイドはかなりピリピリしていた。
岩波は自分の方針を通す考えであったが、そうは言ってもスポンサーあっての番組であり(特に玩具を出すタカラ)、
すぐに作品の雰囲気を自分の望む通りに崩せる空気ではなかった。

そこで岩波*4が、メガトロン役の千葉に
「いきなりアドリブをかますと後ろ(スポンサー)が怒るから、千葉さんはシロアリになって屋台骨をジワジワと壊してください」
とオーダーした。
これを受けた千葉繁が「全力で壊します」と言いつつ、スポンサーの様子を見ながら少しずつアドリブをかましていった。*5
やがてスポンサーにもウケるようになったのを見て千葉も手応えを感じ、後輩もそれに続いてかますようになっていた。

結果としてこの手法は大成功した。旧作、原語版のファンからは賛否両論とはなったものの、一番のターゲット層である子供達には大歓迎された。
玩具も飛ぶように売れ、スポンサーであるタカラの最大目的である商業的大ヒットを遂げる。
どれくらいかと言うと、番組終了後に岩波が「1億くれ!!」と飲みの席で言って笑って流された程、それはもう莫大な利益を叩き出したそうである。

G1シリーズは作画や展開的な意味でのカオスに対し、こちらは音響監督である岩波の脚色をベースに、声優のアドリブが混ざり合いカオス化したと言える。
なお、再三記すが本作は大前提として岩波の脚色により台本の時点でおふざけを入れているため、全てがアドリブという認識は完全に誤り
回によってはほとんど台本通りやっている回もあるといい、そんな認識になったのは岩波曰く「それらを全てアドリブに見せてしまう声優さん達の話芸の賜物」とのこと。
とはいえやりすぎた回については台本のどこを読んでいるかわからなくなったこともあったらしい。
本気でアドリブの自由度が大幅に増したのは、恐らくスポンサーから元々おふざけが求められていたリターンズくらいだと思われる(実際台本にフリートーク◯秒という無茶振りが増えたらしい)。

・まとめ

こういった経緯から声優無法地帯の代表作として知られたCGビーストウォーズシリーズであるだが、実態は無法地帯という言葉とは程遠い。明確な意図があり計算ずくで作られており、むしろちゃんと裏にはルールが存在する
岩浪美和は地上波に乗せられないネタ、エグいネタなどはNGとして子供番組として最低限のラインを維持するよう努めた。決して声優陣が好き勝手やった訳ではなく、むしろしっかりとルールは存在したのである。

そのためビースト覚醒の裏PV(出演者が一人しか参加していないおふざけPV)の収録で、岩浪からのダメ出しが入ったのを見た山口勝平が冗談で「演出してる…」とつぶやいたところ、当の岩浪からは即座に「当たり前ぇだろ!!」とツッコミが入っている。

こういった経緯もあり、冗談めかすことは多いとはいえ声優無法地帯の代表作として広まっていくことは、関係者目線としてはあまり好ましくない風潮であると言及されている

また、ゲームボーイにて格闘ゲーム『決戦ビーストウォーズ ビースト戦士最強決定戦』が発売された。
タカラのキャラゲーということに加え、こんな前例があるだけに不安がったシリーズファンも多かったようだが、実際は優れた遊び応えを誇り、キャラゲーとしても中々優秀な良作である。

なお、ギャグやアドリブの多さが語られがちな本作ではあるが、主軸となるストーリー自体は真っ当にシリアスである。本作でのギャグは作品が暗くなり過ぎないようにするためのアクセントのようなものであり、決してギャグがメインではない。

キャラクター同士の信頼や絆が描かれたり、戦いによって無関係な生き物が犠牲となり、あるキャラクターがそれに苦悩するというエピソードもある。特にひょうきんな性格で知られるとある人物は、実は冷酷な本性を併せ持っており、終盤において巧妙な策略によって重要なキャラを陥れることに成功していたりする。

一番かましている千葉繁も「本筋(ストーリー)を壊す程のアドリブはしない」と言っており、そういった本作のストーリー自体は一貫している。

こうした互いを引き立て合うギャグとシリアスの絶妙な塩梅こそが本作のヒットの要因であることはいうまでもないだろう。


【その後の展開】

本作の続編にあたるのが『超生命体トランスフォーマー ビーストウォーズメタルス』であり、話がそのまま繋がっている。
しかし、日本でBWが放送されていた頃には本国でメタルスが展開中であり、吹き替え版の製作が間に合わなかった。

そこで『メタルス』が放送されるまでの1年半は「和製ビーストシリーズ」として『ビーストウォーズⅡ 超生命体トランスフォーマー』と続編である『超生命体トランスフォーマー ビーストウォーズネオ』が放送された(なお、日本での時系列では本作・『メタルス』・『マシーンズ(リターンズ)』の後時代に当たる)。

メタルス』では何人かのキャラクターが新たな姿に生まれ変わり、ビーストモード時でも機械的でメタリックな姿となるメタルス化を果たした。
追加戦士も登場し、戦いは激化していく。


海外ではその後、続編として『Beast Machines(ビーストマシーンズ)』が製作された。…が、こちらは全然ヒットしなかった。

せっかく本作で取り戻したトランスフォーマー人気を再び地に叩き落とした大失敗作だったが、『ビーストウォーズリターンズ』名義となった日本版は限界ギリギリのアドリブ大爆発によってコアではあるがアニメとしてはそこそこヒットした。

さらに海外では『トランスフォーマー ユニバース』に、日本では『ビーストウォーズリボーン』にストーリーが続いていく。

また2019年の『トランスフォーマー サイバーバース』日本語吹き替え版では、子安声のオプティマスプライム(コンボイ)と千葉声メガトロンというビースト繋がりのキャスティングがされていた。千葉トロンのアドリブも健在。というかオプティマスも多少アドリブが解禁されている。
さらにシーズン2ではチータス(設定上は別人)が登場。もちろん声優は同じであり、姿、声、「~じゃん」という語尾、校長先生ネタとビーストウォーズそのままといっても過言ではない。

2021年にはビーストウォーズがフューチャーされた玩具シリーズ、「トランスフォーマー キングダム」が展開される。
サイバトロン側からはコンボイやチータス、ラットルが、デストロン側からはメガトロンやブラックウィドーのリメイクが決定しており、さらに多くのキャラクターが登場する(商品名は海外準拠)。


『ビーストウォーズ 超生命体トランスフォーマー アゲイン』

先述の通りビースト覚醒の公開を記念したタイアップ番組。1話を15分ずつにわけて2クール分放映された。
放送順はかなり前後しており、作品の核心に関わるエイリアン絡みの内容は全てカット
最終回に至っては中盤に放送されたライノックス大暴れとなる異例の放送順である。
これは、放送枠的にも最初から完全な放送が諦められていた他、
メタルスに繋がるエピソードを出してしまうとかつてと同じ「ロボットアニメ史上他に類を見ないお預けを食らう」ためなので仕方ない。

なお、これに合わせてタカトミがずっと公開したまま放置していたyoutubeのビーストウォーズは全て公開停止となった。
本作に続いて、後番組として久しぶりに地上波の新作「トランスフォーマー アーススパーク」が放送されることが决定。


【関連書籍】

資料本としては2000年にソニー・マガジンズから発売された『ビーストウォーズユニバース』がある。
構成・編集:石川裕人、執筆者:市川裕文・秋山文彦。
キャラクター紹介ページは基本的に原語版の設定準拠となっており、和製BWのキャラクターも独自設定で記述されている。
その他コンテンツは裏設定や玩具のテックスペック、イラストと商品の比較、エピソードガイドや用語集、お蔵入りエピソード、スタッフインタビューなど。

また、1998年に主婦と生活社から発売された『ビーストウォーズ パーフェクトブック』は一見すると子供向けの厚紙絵本だが、一部ファンの間でその内容が有名になっている。
BWⅡまでのキャラクターに加え、未放映シーズン(後のメタルス)のキャラクターも先行して掲載されている(スカベンジャーやラットトラップなど原語名)。
更にはマクドナルドの『ハッピーミール』(日本のハッピーセット)や『ボットコン』の玩具といった海外アイテムまで紹介するという徹底ぶり。
ライオンヘッドのようにこの本で初めて日本名で呼ばれたキャラクターもいる。

当時はネットが普及していなかったこともあり、そのマニアックさからTFファンにとっては貴重な資料の一つだったという。
現在でも貴重であることに変わりなく入手困難でもあるため持っている方は大切に持っておこう。
ちなみにこれを読んでどのキャラクターもアニメに登場するものと勘違いする少年たちが続出したとも。

後ろにユニバースの石川・市川・秋山の諸氏の名前があるため、このようにマニア向けになった理由もそういうことだと思われる。
続きとなる1999年の『ビーストウォーズ パーフェクトブックネオ』は中身がマイルドになっている。

そして2020年、大人になったビーストウォーズ世代に向けて『トランスフォーマービーストウォーズ ビーストジェネレーション』が発売。「無印~リターンズ」のCGシリーズや「Ⅱ」、「ネオ」の和製アニメはもちろん、関係のある「カーロボット」や「ミュータントビースト」、「アニモーフ」といったキワモノまで網羅されている。




「追記、変身!」「修正、変身ッヌ!」

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最終更新:2024年12月18日 17:01

*1 アニメーションは物体の形を自由に変えられるため、細かいパーツを途中で適宜省略しつつ、省略部分を目で追えない程度に動きを速くしている。

*2 普通のアニメだとアフレコの段階では映像が仕上がっていないことが多い

*3 流石に明言はしていないが年代的にX-MENだと思われる

*4 千葉繁はスタッフ・ディレクターとしてしか証言していないが、恐らく岩波

*5 千葉繁は岩波曰く「肝のキャスティングだった」とされており、大御所がまずぶちかましてくれれば、若手もそれに続きやすくなると考えていた。実際その目論見も概ね成功しており、メガトロンの最初の台詞のおかげで方向性が決まったと岩波も語っている。