第4回ビブリオバトル@春日町図書館
visit:2014/10/13
ビブリオバトルというゲームをご存知ですか?…という前振りももはや不要かもしれないくらい、普及が広まった書評合戦ビブリオバトル、練馬区立春日町図書館でも2014(平成26)年10月13日の回が第4回を数えるというお馴染みのイベントとなっています。その第4回が発表者応募大盛況、過去の春日町図書館ビブリオバトルとは違う展開でまた楽しかったので、その様子をお伝えしようと思います。あ、読むにあたって、もしビブリオバトルが何だかわからない方は、ビブリオバトル公式サイトをご覧ください。
春日町図書館会議室で15時の開催に際して、バトラーは14時集合だったのですが、その時間に入ってみたら中学生の皆さんが多数集結していてびっくり!私、咄嗟に日時を間違えたかと思いました(笑)。
というのも、過去3回では1人の女の子が第2,3回に出てくれたのを除いてバトラー参加は皆大学生以上。特に第2回では、「中高生へのおすすめ本」というテーマにしたにも関わらず、ちょうど中間試験前にあたる日に開催してしまったがために観覧者にもあまり中高生がいなかったという苦い経験もありました。
それが会場についてみたら、一般のバトラー応募が4名、対して、中学生の応募が10名という中学生の集まりの多さ。詳しくは聞かなかったけど、互いに違う学校から来た付き添いの学校司書さんらしき方が3名ほどいらしたので、区内の複数の学校から応募してくれたのではないかと思います。見知らぬ人が集まる前で話すのって大人でも度胸がいると思うのですが、中学生にして参加するとは、それだけでも皆さん私の中学生時代より勇気あります。
残念ながら中学生のうち1人は体調で来られなかったようで、ゲーム構成は、第1ゲームが一般の部4名、第2ゲームが中学生の部その1で4名、第3ゲームが中学生の部その2で5名となりました。それぞれで発表→質疑応答を発表者の人数分繰り返した後に、挙手で投票してチャンプ本を決定。つまり、今回のイベントで3冊のチャンプ本が生まれるというわけです。
春日町図書館ビブリオバトルは、発表者が観覧者の前でくじを引いて同時に開くなど、順番決めもエンターテイメントの一つにしていたのですが、今回は発表者多数につき時間節約のために事前に順番は決めてのスタートです。
まず先陣を切って、私を含めた大人たちによるビブリオバトルです。今回は特にテーマがなかったのですが、1番手の本と2番手の本がイタリア繋がり、1番手の本と4番手の本が世界史繋がり、1番手の本と3番手の本がキリスト教繋がりと、1番手の本を通じて全てが繋がっているような不思議なラインナップ。そのせいか、チャンプ本に見事選ばれたのも1番手の『旅涯ての地』でした。
第1ゲーム | |
1人目 | ★『旅涯ての地』坂東眞砂子 |
2人目 | 『イタリアでうっかりプロ野球選手になっちゃいました』八木虎造 |
3人目 | 『沈黙』遠藤周作 |
4人目 | 『オリガ・モリソヴナの反語法』米原万里 |
私は2番手で『イタリアで〜』を紹介したのですが、私の紹介本以外は比較的じっくり読ませる小説本。そんな本を紹介する皆さんだけあって、互いの発表内容もしっかり聞き込んで感想をおっしゃっていたのが印象的でした。私の紹介本だけはタイトルからも察せられるようにノリが違うのですが(笑)、小説好きの読書家さんがそれぞれ読み込んで面白かった本を紹介してくれて、秋の夜長の読書にちょうどいい選書でした。
10分の休憩を挟んで、第2ゲームへ。今思い返しても、皆落ち着いて発表していました。一般の部のバトラー同士でも、私たちよりうまく5分を使っているという感想で一致したくらいです。
第2ゲーム | |
1人目 | 『ドラゴンラージャ』イ・ヨンド |
2人目 | 『カラフル』森絵都 |
3人目 | 『楽隊のうさぎ』中沢けい |
4人目 | ★『窓ぎわのトットちゃん』黒柳徹子 |
ただ、発表の上手さと感情の伝わり方が比例するとは限らないのが、ビブリオバトルの面白さ。例えば、第2ゲームで『カラフル』を発表した女の子は、私が見たところ、発表しようと用意してきた内容を4分30秒くらいで話し尽くしてしまったようだったのですが、残り30秒で強くお勧めしたい部分を違う説明でもう一度言っていたときの方が、彼女の感情が強く伝わってきました。ビブリオバトルは、発表後の質疑応答時間でもアドリブを必要とされますが、そうしたところで用意されたのではない強い思いが伝わってくることがあるんです。
また、これは次に続く第3ゲームも含めてですが、コリアン・ファンタジーノベルの『ドラゴンラージャ』、ライトノベルの『ミカグラ学園組曲』『問題児たちが異世界から来るそうですよ?』などは、少なくとも私はその作品の存在さえも知らず、自分と違う世代のお薦め本を聞くとそうした情報が得られるのも面白いです。ライトノベルを紹介した女の子のどちらか(どっちか忘れてしまってごめんなさい)が、「ライトノベルだからって偏見で読まない人も多いのでは」と言っていたのですが、確かに私もその一人。それが、こうしてストーリーなどを説明してもらい、ちょっとハードルを下げてもらった気分です。
第3ゲーム | |
1人目 | 『人間失格』太宰治 |
2人目 | 『ミカグラ学園組曲』Last Note. |
3人目 | 『問題児たちが異世界から来るそうですよ?』竜ノ湖太郎 |
4人目 | 『ピーコの祈り』濱井千恵 |
5人目 | ★『MOMENT』本多孝好 |
そうそう、これはビブリオバトル後に職員さんから聞いた話なのですが、実は中学生の応募で『人間失格』を選んだ人が2人いて、そのうち1人に発表本を変えてもらったそう。大人のバトラー同士で話していたとき、中学生で『人間失格』がお薦めだと友達の前で言えるのはとても勇気があるという話になったんです。特に思春期だと、たとえ作品に共感しても友達にそうだとは打ち明けにくい内容の小説ですよね。特に『人間失格』を発表した女の子は、ゲーム前に休憩時間でも「こんな暗い小説だし、どうしよう~」と自虐的に友達と話していたのですが、それでもこの本を選ぶほどこの作品にいろいろ感じるところがあるんだろうと思います。
これは私の個人的な偶然ですが、ちょうど2日前にプチ中学同窓飲み会があり、何人か卒業以来初めて会った人もいて、実は中学のときにこんなことがあった、こんなことを考えていた、というようなことをいろいろ話したんです。それからまだ2日しか経っていなくて、私の中にある中学時代の感情の記憶の引き出しが開きやすくなっていた。だから余計に、お薦め本の発表というかたちを取りながら、中学生の皆が日々感じていることを聞いているような気分になり、どれもいい発表でした。
3ゲーム終了後には、チャンプ本に選ばれた人への表彰式。こうして振り返ってみると、第1ゲームに限らずじっくり読むにふさわしい本が並んでいるように思います。同じ場所で開催しても、参加者によって発表本もチャンプに選ばれる本も違うのも興味深いです。過去のビブリオバトルの様子はこちらに書いているので、よかったらそちらもご覧ください。
また、チャンプ本に選ばれなかった人も含めて、バトラー参加賞としてピンバッジをいただきました。第1ゲームのチャンプ本を発表した方に言われて気づいたのですが、「かすがちょう」と韻を踏んで「ありガチョウ」になっているんですね。とぼけた表情が可愛いです(笑)。
そして、館長代理さんからの最後のご挨拶のなかで、春日町図書館ビブリオバトル部の部員募集も発表されました。2,3ヶ月に1度程度、部員同士でビブリオバトルをしようという試みだそうで、私はビブリオバトル申込時から参加表明しています。この日のバトラーさんのなかでは、第1ゲームで『沈黙』を発表した遠藤さんも入部するということで、今のところ図書館職員さん以外の部員は遠藤さんと私の2名なのかな。
図書館のビブリオバトルは、この第4回ビブリオバトル@春日町図書館のように、少数の発表者に多数の観覧者というケースが多いですが、本来のかたちは全員が発表者というスタイルで、個人的には本来のかたちの方が突っ込んだ話を聞けたりして面白いと思っています。大勢の人の前で話すのが苦手な人も参加しやすいと思うので、ご興味ある方はぜひ一緒に部活動をしましょう。
こんなふうに図書館利用者同士で本の話ができるイベント・部活動をしてくれて、図書館って本当に楽しい場だと思います。私もこうしてイベントに参加することで、図書館を盛り上げたいなあ。春日町図書館の皆さん、ご参加いただいた皆さん、楽しい時間をありがとうございました。