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人類の世界観をひっくり返す「7つの哲学的思考実験」が意識高すぎる!快楽機械、メアリーの部屋、沼男… あなたの答えは?

 今回は意識高い系ニュース「Big Think」から、あなたの常識を一変させる7つの思考実験をご紹介しよう。

■無知のヴェール

人類の世界観をひっくり返す「7つの哲学的思考実験」が意識高すぎる! メアリーの部屋、快楽機械、沼男… あなたの答えは?の画像2
画像は「Big Think」より引用

 1971年、アメリカの哲学者ジョン・ロールズが、著書『A Theory of Justice』(邦題『正義論』紀伊国屋書店刊)で提示した思考実験。同書は正義論の古典的名著として今日でも名高い。

「あなたとあなたが所属する集団の人々が、新しい社会を築く上でのルールを決めようとしている。しかし、あなた方は誰もその新しい社会で誰になるか、たとえば、その人物の人種、収入、性別、宗教、嗜好は事前にわかっていないものとする。ルールが決定された瞬間、あなた方はそのルールに則った社会の一員になる」

問い:そのような社会はどのようなものか?また、そのことは今日の我々の社会にどんな意義を持つか?

 ロールズは、このような状況では、個々人がどんな利益を追求すれば良いかわからないため、最悪の状況を見越して、各人に平等な権利と経済的安定を保証する公平な社会を建設するよう試みるだろうと考える。転じて我々の現実の社会を見てみると、自己利益の追求が公平な社会の実現を妨げていると言えるだろう。

■快楽機械

 1974年、アメリカの哲学者ロバート・ノージックが著書『Anarchy, State, and Utopia』(邦題『アナーキー・国家・ユートピア』木鐸社刊)で提案した思考実験。同書はリバタリアニズム(自由至上主義)の代表的著作として知られる。

「天才科学者が、残りの人生の快楽を全てシミュレートできるマシーンを発明した。その快楽は極めてリアルで、本物の快感と区別がつかない。副作用もないし、好みに応じた快楽をプログラムすることも可能だ。あなたの体は常にモニターされているため、快楽機械を使用中も健康に過ごすことができる。一回経験したのち、マシーンはあなたに数回分の人生以上の快楽を与えることもできるとオファーしてきた」

問い:マシーンのオファーを断る理由はあるだろうか?

 ノージックは、もしこのオファーを断る合理的な理由があるのならば、快楽にのみ倫理的価値を定める快楽主義的な功利主義は間違いになると主張する。そして、ノージックは、多くの人は本物の経験に価値を置き、快楽を夢見るだけでなく、実際にそれを経験することを望むと考え、多くの人は快楽機械のオファーを断るだろうと推論している。つまり、快楽だけが唯一の倫理的価値ではないということだ。

■メアリーの部屋

イメージ画像 Created with DALL·E

 アメリカの哲学者フランク・ジャクソンは、1982年の論文で「メアリーの部屋」と呼ばれる思考実験を提示した。

「メアリーは白黒の部屋で、白黒の本を読み、白黒のスクリーンであらゆる生物学・物理学の知識を身につけていた。だが、ある日、スクリーンに青色が表示された。メアリーは初めて、白黒以外の色を見たのだ」

問い:この時、メアリーは新しい知識を学んだだろうか?

 答えがYESだとすれば、主観的な経験であるクオリア(感覚質)の存在を認めることを意味する。というのも、彼女は全ての科学的な客観的知識を色を見る前に学んでいたからだ。

 この思考実験は知識と心理状態について問題を提起している。なぜなら、もし彼女が色を見ることで新たな知識を得たとすれば、そういった心理状態を物理学的な事実では記述することができない、ということになるからだ。

 答えがNOだとすれば、物理学的な事実は経験と一致することになる。たとえば、水泳をすることや自転車をこぐことは、身体の構造や働き、流体力学などの物理学的知識を身につければ、実際に泳いだり自転車をこぐことと全く同じ、ということになる。

 ジャクソンは後に、この思考実験だけからクオリアの存在を導出することはできないと主張するようになるが、現在も哲学界では広く議論されている思考実験の1つである。

■ビュリダンのロバ

人類の世界観をひっくり返す「7つの哲学的思考実験」が意識高すぎる! メアリーの部屋、快楽機械、沼男… あなたの答えは?の画像5
画像は「Big Think」より引用

 14世紀フランスのスコラ哲学者ジャン・ビュリダンにちなんで名付けられた思考実験。決定論や行き過ぎた合理論に対する反論として提示されたが、出典は定かではないそうだ。

「ここに自由意志を持たず、常に合理的な選択しかできないロバがいる。今、このロバから同じ距離の2地点に全く同じ量の干し草が置かれている。どちらの干し草を選んでも、合理的に得したり、損したりすることはない」

問い:ロバはどちらの干し草を選ぶか?そもそも、このロバは選択することができず、餓死するまで悩み続けるだろうか?

 およそ決定というものが、合理的になされるならば、このロバは合理的にどちらの干し草も選べずに飢え死にする。だが、そんなことは実際起こらないだろう。ロバはどちらかの干し草を食べることを決定するはずだ。だとすれば、決定には合理性以外の何らかの要素やランダムな偶然性、あるいは自由意志が含まれていなければならないだろう。

 この思考実験の回答は決定論者の間でも意見が分かれている。たとえば、決定論者の1人であるスピノザは、このロバは餓死しないとしているが、ロバはそのまま餓死すると言い切る決定論者もいる。他にも、選択肢にはそれぞれを分ける差異が必ずあると主張する者もいるようだ。

■あなたが救える命

イメージ画像 Created with DALL·E

 2009年、オーストラリアの哲学者ピーター・シンガーは、著書『The Life You Can Save: Acting Now to End World Poverty』(邦題『あなたが救える命: 世界の貧困を終わらせるために今すぐできること』勁草書房刊)で提示した思考実験。

「道を歩いていると、湖で溺れている子どもが目に入った。あなたはその子どもから十分に近い場所にいたので、すぐに泳いでいけば助けることができる。ただ、この子どもを助けると、あなたは買ったばかりの高価な靴を台無しにしてしまうことになる」

問い:あなたには子どもを助ける義務はあるか?

 シンガーはYESと答える。あなたは溺れている子どもの命を救う義務がある。靴の値段など関係ない。シンガーのこの回答に同意した人は、次の質問にはどう答えるだろうか?

問い:目の前にいる子どもの命と地球の裏側にいる子どもの命に違いはあるか?

 シンガーは両者の間には道徳的な違いがないと主張する。ここで高価な靴は、寄付のアナロジーになっている。靴の値段が命を救う上で問題にならないならば、貧困や疾病に苦しむ子どもたちの命を救うために寄付をするべきだというのだ。近くの命を救う義務があるならば、遠くの命も救う義務があるとシンガーは考える。

 一方、目の前で溺れている子どもと地球の裏側で餓死しそうな子どもたちの状況は違っているため、異なる義務を課す異なる解決策が必要だという反論もされている。

■スワンプマン

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 1987年、アメリカの哲学者ドナルド・デイヴィッドソンが提示した思考実験。

「ある日、ある男が沼地を散歩していると、突然雷が彼に落ちた。この時、雷は同時に沼にも落ち、沼の分子構造を変化させたことで、瞬く間に落雷を受けた男と同じ身体組成を持つ人物が沼から生まれた。この“スワンプマン(沼男)”は、脳、記憶、振る舞いまで全て落雷を受けた男と同じだ。仕事に行って、同僚と話しても、誰も彼がスワンプマンだと気付かない」

問い:スワンプマンは落雷を受けた人物と同一の人物か?

 デイヴィッドソンはNOと答える。物理的に同一で、誰も違いに気付かないとしても、スワンプマンと落雷を受けた男では因果的な歴史を共有していないため、同一ではあり得ないという。たとえば、スワンプマンが落雷を受けた男の友人たちを知っているとしても、スワンプマンは実際に彼らを過去に見たことがあるという事実を持たない。スワンプマンと落雷を受けた男は、それぞれが持つ個人的な歴史が異なるのだ。

 一方で、物理的に同一の身体であれば、同一人物と見なす哲学者もいるようだ。さらに、アメリカの哲学者で認知科学者のダニエル・デネットはこの思考実験があまりにも現実離れしているため、意味を成さないとまで語っているという。

 とはいえ、脳内情報のコンピューターへのアップロードやテレポーテーションといったものが夢物語ではなくなってきた現代においてはむしろ極めて意義深い思考実験と言うこともできるだろう。

■トムソンのバイオリン奏者

 1971年、アメリカの哲学者ジュディス・トムソンが、論文「A Defence of Abortion」(「妊娠中絶の擁護」)で提示した思考実験。

「ある朝、あなたが目を覚ますと、意識を失っているバイオリン奏者とベッドでつながれていることに気付いた。その有名なバイオリン奏者は、致命的な腎臓病を抱えており、音楽愛好家協会があらゆる適合ドナーを探した結果、あなただけが適合した血液を持っていることがわかった。そのため、音楽愛好家協会はあなたを誘拐し、バイオリン奏者の循環器系をあなたにつなぎ、あなたの腎臓がバイオリン奏者の血中にある毒素を取り除くようにした。もし、あなたがバイオリン奏者のプラグを外したら、彼は死ぬ。彼を助けるためには、9カ月間を要し、それまであなたはバイオリン奏者からプラグを外すことができない」

問い:あなたにはバイオリン奏者を助ける義務があるか?

 トムソンはNOと答える。もちろんバイオリン奏者には基本的な人権が備わっているが、彼はあなたの体と人生に対する権利を持っていないからだ。ここからトムソンは話を胎児にまで拡げ、胎児も他人の体に対して権利を持っていないため、中絶には問題がないと主張する。

 トムソンの議論は極めて微妙な問題をはらんでいるが、確かなことは、あなたにはバイオリン奏者を殺す権利はないということだ。この思考実験においてあなたが持っているのは、バイオリン奏者を生かすためにあなたの体を利用することをやめさせる権利だけである。

イメージ画像 Created with DALL·E

 さて、7つの哲学的思考実験をご紹介したが、いかがだっただろうか?屁理屈のように聞こえるかもしれないが、実際にあり得ないような極限の状況を想定することで、逆に問題の本質がよく見えるということもあるだろう。実際にここで取り上げた思考実験は、今も多くの哲学者を刺激し続けている。また、哲学者でなくとも、それぞれの思考実験に自分なりの回答を考えてみることもできるはずだ。

参考:「Big Think」、ほか

 

※当記事は2022年の記事を再編集して掲載しています。

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TOCANA編集部

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