社会疫学なんてものがあったんだ
昨日のエントリにアマゾンの商品情報がくっついていたにゃ。紹介されていたのは、「社会格差と健康―社会疫学からのアプローチ」という本でしたにゃ*1。
え? 社会疫学なんてガクモン分野があるの? などとググってみたら
医学書院/週刊医学界新聞 【〔対談〕「社会疫学」とは何か(Ichiro Kawachi,近藤克則)】 (第2566号 2004年1月5日)
という記事を見つけましたにゃ。引用しますにゃ(関心のある向きにはぜひリンク先を読んでほしいところ)。
「社会疫学」とは何か
ひと言で言えば,健康の社会的決定因子を研究する分野です。
健康に影響する因子には,「遺伝子」,「ライフスタイル」,「医学技術」などがありますが,これら以外に「社会的な因子」もあります。相対的所得仮説で扱う所得の不平等や絶対的貧困以外にも,「労働環境からくるストレス・過労死」,「人種差別・男女差別」など多数あります。心身医学が人間の心も扱い,伝統的な疫学が心の外側の健康行動に着目しました。
分子生物学などのバイオサイエンスは,心を持った人間個人のレベルよりも,目に見えないよりミクロな世界に踏み込むフロンティアです。これに対し社会疫学は,1人の人間よりもマクロな世界に着目し,健康に影響する社会的な因子を明らかにしようとするフロンティアです。
にゃるほど。面白そうだ。
インタビューの前半部には、昨日のエントリで書いた、経済格差が健康に悪影響を与えるという仮説(リンク先によると「相対的所得仮説」)にも触れられていますにゃ。
日本の医療のコストパフォーマンスの高さはつとに有名ですにゃ(マスコミはなかなか触れようとしにゃーのだが)。
【遠言近言】国民健康達成度は世界一であるが……。果たして医師と患者の信頼関係は!‐星恵子|薬事日報ウェブサイトから引用すると
WHOは乳児死亡率の低さや世界一の長寿国であることなどを総合的にみて、日本の国民健康達成度は世界第一位であると評価しています。その一方、日本の総医療費は先進5ヵ国のうちでは最も少なく、日本の医療費の対国内総生産比は先進国の中でも平均以下です。それにも関わらず、世界でも最高水準の医療が受けられるのは、皆保険制度と医師の慢性的な過剰労働、そして、医療に携わる人々の献身的な態度によって成り立っているように思えます。
日本の医療のハイコストパフォーマンスの原因として、「皆保険制度と医師の慢性的な過剰労働、そして、医療に携わる人々の献身的な態度」の他にも、栄養状態の改善とか公衆衛生のレベルが高いとかあるだろうけれど、「経済格差が少なかった」という原因も、もしかしたら大きなものであったのかもしれにゃー。
経済格差の拡大は、低所得者層だけでなく高所得者層においても健康水準の悪化をもたらす、という「相対所得仮説」が説得力をもって示されれば、現在進行している種々の格差拡大政策に対する有力な論拠のひとつになりえるかもしれにゃー。社会疫学の研究がすすむことを期待したいところですにゃ。
ところで
昨日のエントリで紹介した「寿命を決める社会のオキテ」は小冊子程度の内容しかなくて、詳しいデータは入ってにゃーのですね。この問題に興味のある向きは、アマゾンで「社会疫学」とググって出てきた書物を読んでみるとよいのではにゃーでしょうか?(特に>id:T-norf) 僕もとりあえず図書館にいって調べてみますにゃ。いつになるかわかんにゃーけど、読んだらここでも取り上げますにゃー。
厚生経済学や進化心理学と相補的であり、かつ実践的な分野のガクモンであると思えるので、個にゃん的にも突っ込んでみたい分野ですにゃ。
さらにところで
昨日のエントリは他者をdisるものだったので、ブクマコメでもっとdisられることを覚悟していたのだけど、幸か不幸かあまりdisられてにゃーな。
ちょっと応答しておく
>ochame-cool 社会疫学の研究で相転移について考えられているかどうか確認したいところですにゃ。確かに十分ありそうな話だし。
>maxcof アレでナニなのは語尾だけではにゃーです。にもかかわらず記事内容に納得してくれてアリガトウ。
>sichimin たった100字だからこそ、その立ち位置が明確になるということもあるのではにゃーでしょうか>
>toward_to_terrada 平均余命でわかるのは、ガキや赤ん坊の死亡率「だけ」ではにゃーはずだが。まあ、記事ではわかりやすい指標として平均余命をあげているわけで、実際にはそれなりの統計的処理がなされたうえで語られているはずだにゃ。
>fuck-yama にゃーにゃー言うのは猫かぶりですにゃー。ちゅうか、10年以上このスタイルなんで、なんか恥ずかしくて変えられにゃーのよ。
>読みにくいと言ってくれたヒトタチ うーん、そんなに読みにくいかー。ご指摘はありがたく拝聴しておきますにゃ。
*1:アマゾンの商品紹介も結構役にたつ