【上海=河崎真澄】中国の習近平指導部が貧富の格差是正を目的とした「遺産税(相続税)」導入の検討に入った。早ければ2017年3月の全国人民代表大会(全人代=国会)で法制化に向けた審議を行う。複数の当局者が24日までに明らかにした。
相続税がない中国では、高級官僚など富裕層が親の富を子供がそのまま世襲することが可能。富の再配分が行われぬ中、既得権益層の固定化が進んでおり、新税導入には庶民の不満をかわす狙いがある。
法制化の草案では課税対象を主に富裕層に限定。相続額に応じて税率を15〜30%に設定する方向で検討が進んでいる。広東省深●(=土へんに川)市など一部の沿岸都市部から実験導入を始め、22年までに全土に広げる見通し。中国では1949年の新中国成立以来、相続税の制度は導入されてこなかった。
中国国家統計局は2015年に、富裕層と貧困層の家庭の所得格差を示すジニ係数を0・462と公表した。ジニ係数は1に近づくほど格差が開き、0・4を超えると社会不安が広がるとされ、公表された統計でも、すでに中国は危険水域に分け入っている。