靖国神社内のトイレで爆発音がし不審物が見つかった事件で、韓国人の男が警視庁に逮捕されたが、今度はこの事件への報復を示唆した事件が横浜市内の韓国総領事館に向けて起きた。報復事件は汚物を投げ込むという品のないものだったが、日本で起きた泥仕合に敏感に反応した韓国では、日韓摩擦の激化を懸念する意見が出始めている。(ソウル 名村隆寛)
緊急速報の内容は
韓国総領事館で事件が起きた12日、筆者は地方からソウルに戻る長距離バスの中で第一報に接した。スマートフォンに、韓国の聯合ニュースの速報が出ており、「横浜の韓国総領事館に汚物」との1行があった。
その時、事件の詳細はまだ把握していなかったが、嫌な予感がした。事件についてはすでに日本国内で報じられているように、汚物が入った箱の表面に「靖国爆発の復讐(ふくしゅう)です」という言葉とともに、在日韓国人が特権を持っているなどと主張する団体の名前が書かれていたという。
靖国神社での事件に対する腹いせとみられ、こうした「愉快犯」じみた犯罪は起こりうるだろうとは予測していた。「悪い予感」が当たってしまったかたちだ。一部の韓国メディアは「犯行声明」に韓国人を侮蔑する当て字が用いられていたことに加え、団体の名を実名で報じた。同時に、この団体が犯行を否定するコメントを出したことなども伝えた。
投げ込まれたものが爆発物のような危険物ではなく、人的な被害はなかった。しかし、よくない事件であることは間違いない。似たようなことをソウルでされかけたことが体験上あるため、一層そう思う。やられた方としては、気分のいいはずがない。
1年前のある出来事
こうした嫌がらせ、特に日本に対する嫌がらせは事実、韓国では珍しくない。1年あまり前のことだ。産経新聞を批判する複数の市民団体が、本紙ソウル支局のある建物の前に集まり、抗議デモを行った。
事前に当局へ「記者会見」(当地では記者会見の場が頻繁にデモ現場に変わる)として申請されていたもので、事情が分かっていたため、筆者は遠巻きにデモの様子を取材していた。あまりきれいな話ではないのだが、実際に起きたことを振り返ってみる。
産経新聞を非難し、罵倒する大声が響き渡るなか、取材に来ていた某日本メディアのソウル特派員が周囲を気にしながら近づいてきた。そして、こっそり教えてくれた。「彼らは汚物を持ってきている。気を付けた方がいいぞ」とのこと。
「勘弁してくれよ」と思いつつ、わざわざ知らせてくれた友人の忠告に従い、現場からさらに離れて様子をうかがっていたところ、デモ隊の中から、奇声が起きた。デモの参加者が容器に入った汚物を、現場でまき散らしたのだ。あたりは蜂の巣を突いたように騒然としていた。