出版大手のKADOKAWAは、25日に発売する予定だった新作小説『からくり同心 景 黒い好敵手』の発売を中止すると24日、発表した。
同社によると、作家の谷津矢車(やつ・やぐるま)さん(29)から「原稿の改変が行われているのではないか」との指摘を受け編集部で調査したところ、担当編集者が無断で原稿を変えていたことが判明した。あわせて、8月に刊行された同シリーズ第1作『からくり同心 景』にも、改変があったため、初版1万部を回収して絶版にするという。
同社は「原稿の無断改変は、決して行ってはならないこと。チェック体制の厳重強化、編集者の指導、教育を徹底し、2度とこのようなことを起こさぬよう再発防止に努める」と話している。
谷津さんは同社の公式ホームページで「ゲラチェックの際、明らかにわたしのものではない文章が混入していました。しかも、中にはキャラクターの台詞などの小説にとって核である要素にさえ手が加えられていた形跡がありました。何者かが、わたしの文章を大幅に改竄していたのです」と憤りをあらわにした。「改竄者が担当編集者であったこと、さらにはその改竄範囲が広範にわたることも併せて判明するに至り、もはやわたしの著作物と胸を張れる代物ではなくなっていたことが判明したのです」として、印刷段階に入っていた第2作の発売中止を申し出たという。
谷津さんは平成24年に「蒲生の記」で歴史群像大賞優秀賞を受賞。喜多川歌麿や写楽を世に送り出した江戸時代の出版プロデューサー蔦屋重三郎(つたや・じゅうざぶろう)の波乱に満ちた半生を描いた「蔦屋」(学研)など歴史小説を多く手がけている。