自動車の保有者が加入する自動車損害賠償責任(自賠責)保険の運用益の扱いをめぐり、財務省と国土交通省の綱引きが激しくなっている。国交省は20年以上前に自賠責保険の運用益を財務省に貸し付けたが、平成29年度まで約6千億円が未返済のまま。国交省は返済期限が30年度に迫る中で返済を求めるが、財務省は財政難を理由に慎重姿勢を崩しておらず、年末の決着に向け攻防激化が必至だ。
そもそも国交省から財務省への貸し付けがあったのは6、7年度の予算編成にさかのぼる。旧大蔵省は赤字国債発行を抑えるため、旧運輸省の特別会計から自賠責保険の運用益計約1兆1千億円を、政策目的を限定しない一般会計に繰り入れた。財務省は15年度までに、利子分を含めて約7千億円を返済したが、その後は景気悪化などで29年度まで返済が停止。国交省は再三にわたって返還を求めたが、財務省は応じず6100億円が未返済のままだ。
両省は過去4回、返済期限を定めた覚書まで交わしているが、延長が繰り返されてきた。国交省は4度目となる期限が30年度に迫る中、「今回が正念場」と見て返済を強く求めている。