最近、「防犯カメラ」という単語をニュースでよく耳にします。コンビニや工事現場などに設置された防犯カメラの映像が、有力な証拠となって事実の究明につながっているのです。
さて、防犯カメラを自宅に設置しようとした場合、業者にもよりますが、1台あたり数十万円の設置費、そして利用料や保守費で毎月数千円かかるのだそう。
「自宅を建てた時に、施工業者に言われて驚きました。すごい高いと思ってカメラのスペックを聞いたら、30万画素のもので、1fpsで、画質もVGAで...90年代のガラケーレベルのカメラだった。通信回線も遅くて、外部からアクセスして見ることもできない。それなら、仕事で携わっていた顔認識などの画像処理技術を使って、この分野を思い切り革新できると思いました。もちろん、自分でも欲しかったですしね」
そう語るのは、新興ベンチャー企業「セーフィー株式会社」の代表取締役社長である佐渡島隆平さんです。セーフィーは、ざっくり言うと「スマホとウェブカメラで、格安にセキュリティを整えられるサービス」を手がけている会社です。
Safieなら、2万円弱でセキュリティが整う
使用までの流れは、上記の動画からもわかる通り、とても簡単。接続できるカメラの数には制限がありませんので、設置すれば設置しただけ、さまざまな場所の映像を見られます。
ウェブカメラの映像は専用のスマートフォンアプリ経由でライブ視聴できるほか、クラウド上に保存された録画した映像も見ることができます。クラウドに録画したデータは過去7日間分までさかのぼれます。ライブ視聴だけなら基本料金は無料、録画やアラート機能を使う場合には月額980円の利用料がかかります。データのアップロードはWi-Fi経由で行われますが、およそ500kbp~1Mbps(YouTubeが見られる程度の速度)があれば十分とのこと。
現在、Safieに対応したカメラは、愛知県名古屋市の電機メーカー「株式会社エルモ社」が製造した「QBiC CLOUD CC-1」があり、価格は19800円(税別)。400万画素、170度の超広角レンズを採用しており、映像の見え方はアクションカムの「GoPro」に近い印象を持ちました。防水仕様のため屋外にも設置でき、内蔵マイクで録音もされます。
つまり、アプリとカメラを合わせて2万円弱で防犯カメラを設置することができるわけです。
防犯カメラをもっと手軽に、身近にしたい
佐渡島さんは、Safieの利用シーンと合わせ、防犯カメラをもっと身近なプロダクトにしたいと言います。
ビジネス利用でも、小規模な商店では万引き被害もばかにならないですが、費用面で設置が難しいという話も聞きます。以前騒ぎになった異物混入事故しかり、従業員を守るためにも「原因の特定」は必須になる。いま、商業施設の7割には防犯カメラがあり、全国で少なくとも350万台は稼働しています。ただ、そのデータの99%は店内に保存してあり、多くは外出先から確認もできないケースが多く、データが有効活用されることもありません。
防犯カメラは犯罪の抑止力になっている。けれど、コストなどの面で一般家庭にまでは広がっていない。これらをすべて解決するのが、私たちのSafieです。圧倒的に安く、ネットワーク経由で見られ、専用のサーバーや録画機もいりません。
仮に、災害や事故が起きたときを想像すると、防犯カメラや録画機が故障してしまえば、映像は見られないままです。そんな時でも、クラウドにデータがあれば、「そのときに何が起きたのか」を知るには役立つでしょう。この点だけでも、Safieのメリットは大きいといえそうです。
だけど、いろんなところが「見える」と不安も生まれる
タイムライン上には動画の内容がわかるサムネイルが表示され、秒単位でさかのぼって再生もできます
佐渡島さんが言うように、防犯カメラの映像が役に立つシーンは、たしかにさまざま想像できます。一方で、2つの不安も浮かびます。まずはネットワークやクラウドを経由することでのハッキングの可能性です。
もう1つの不安はプライバシーの問題です。
より「インテリジェント」な見守り番へと進化したい
雨などをよけるアタッチメントをつけてみると、
帽子っぽくも見えて、どこか可愛らしくもある
セーフィーは3名のメンバーがそれぞれの得意分野を持ち寄って創業。前職ではモーションポートレート、ソニー、ソネットなどに勤め、顔認識を用いた画像処理、画像解析、3Dグラフィック、CMOSなどのハードウェア設計、通信技術などを手がけており、「ソフトもハードも見られる強みがあった」と佐度島さん。すでにソネットなどから投資を受け、準備金を合わせて1億円の資本金を用意し、事業を進めています。
将来的には、さらに画像処理やセンサー連携を活用した「インテリジェント」な機能を追加していく予定だそう。たとえば、顔認識技術などを組み合わせ、映像内の指定エリアへ登録者以外が入ったらアラートをスマホに飛ばす。ウェアラブルガジェットのチップと連動し、子供が帰ってきたと感知したらカメラをオンにする。ドアホンのセンサーにSafieのファームウェアを搭載して家のセキュリティを向上するなど、さまざまなものと組み合わせることで、より「賢い」見守り番になるわけです。
佐度島さんは、「防犯カメラの市場としては、警備員が24時間駆けつけるといったハイクラスでお金がかかるものと、Safieによって安価に見られるものとで分かれていくと考えています。『ありそうでなかった』価値を提供して、私たちが市場をつくっていきたい」と意気込みます。
Safieは単なる防犯システムではなく、「これがある」ことによって新しい使い方、新しい暮らし方を想像できるのがユニークだと感じます。クラウドファンディングサイト「Makuake」では目標金額を大きく超える成果をあげていました。現在はAmazonでも対応カメラの販売を開始しています。
あなたにも「見られたらいいなと思うシーン」は、ありますか?
(長谷川賢人)