自分のロールモデルを探しているときに、ある企業の存在がまず頭に浮かぶという人は少ないかと思いますが、企業の文化が示す知恵には驚かされることがあります。実際、企業のリーダーから私たちは多くを学びます。以下に紹介する「企業の知恵」は、私たちが良い結果を生み、成功するための方法について多くを教えてくれます。
Google:新しいことに挑戦してみる
Googleは他の企業とはちょっと違うユニークな仕事の進め方をすることで有名です。Google内の各チームはできるだけ小規模で、より管理が行き届きやすいサイズにしています。そして、職場に活気をみなぎらせます。また、「20パーセントの時間」と呼ばれる時間内で、各社員が自由に好きなことをするように奨励しています。そうした方法を取る理由はどこにあるのでしょうか? またその成果とは? ニューヨークタイムズ誌は、以下のようにコメントしています。
Googleのエンジニアは、労働時間の20パーセントを個人的に興味のある、会社に関係することに使うよう奨励されています。つまり、すばらしいアイデアを思いついたときに、それを実行に移すための時間が与えられているのです。
当然のことのように聞こえるかもしれませんが、人は自分が情熱をもっている仕事をするときの方が、より良い成果を残せます。また、多くのすばらしいテクノロジーが、その20パーセントの時間から生まれました。Gmail、Google News、さらにはマウンテンヴューの本社まで社員を運ぶGoogleシャトルバスさえも、その時間からアイデアが生まれたのです。
昨年、Googleは残念なことに、この20パーセントルールに制限を加える決定をしました。ですが、多くの人の予測に反して、そのルールを完全に中止したわけではありません。Googleは社員に実験的な試みを継続するよう奨励し、他の多くのテクノロジー企業も同様のアイデアを職場に取り入れました。20パーセントルールというアイデアは、今後も生き続けるでしょう。実験は重要であり、なにか新しい、すごいことを生み出すきっかけとなるからです。
みなさんの今の生活が、どれだけ同じことの繰り返しばかりで、活動内容が細かく決まっていたとしても、新しいことを試してみる時間は必要です。空いた時間に次のGmailのようなプロダクトを開発すべきだと言っているのではなく、それよりも、これまでやったことのない、ちょっと変わった、もしくは難しいことをやってみてほしいということです。アイデアを得る時間を自分に与え、それを実行に移してみましょう。それが、世界的なトレンドにならなくても、最終的にはあなた自身が今よりもずっと幸せになるはずです。学び続け、新しい可能性を開拓し続けるかぎり。
ブードゥードーナツ:ありのままの自分に誇りをもち、変わっていることを恐れない
「変人であれ」という人生の教訓を教えてくれるのは、米オレゴン州ポートランドのある企業です。Voodoo Doughnutは、これまで見たことのないような奇妙なドーナツを数々生み出しています。「オランウータンドーナツ」から「トリプルチョコレート侵入ドーナツ」など。FDAが介入するまで、同社は咳止め薬ロビトゥシン、風邪薬Nyuqil、胃腸薬Pepto Bismolの入ったドーナツまでつくりました。こんなぞっとする製品は客を遠のけてしまうのではないかと思うかもしれません。ですが、実際には同社は成功しました。自分たちの奇妙なアイデアに自信をもち、それを世界に向けて発信したからです。
Voodoo Doughnutの成功事例について、Copybloggerはこのように述べています。
あのドーナツが他の会社のドーナツに比べて美味しいか? もし、ドーナツの上にベーコンや朝食用シリアルをのっけたものと比べるのなら、確かに美味しいだろう。そうでなければ、他のドーナツとなんら変わらない味だ。最初のふた口は美味しく感じるだろうけど、そのあとはうんざりしてくる。でも、Voodooを一度訪れれば、その経験を誰かに話したくなる。顧客が夢中で話したがるような、すごいストーリーを提供してくれる。
相手の印象に残る人というのは、自分自身が何者であり、何者でないかを実によく分かっています。
相手に鮮烈な印象を残すには、自分の提供するものが誰に受け入れられないかを理解していることが重要だ。自分の想像力に任せて、下品になるべきだという意味ではない。自分に適さない人をターゲットから外すことが重要なのだ。
この議論は、変わっているとは何かというテーマ以上の話です。私たちはみな、いくらか変わっていますが、人によってそれを外に見せる程度は異なります。変わっている自分を見せ、それに対する周囲の反応を気にしないためには、自分に正直であり、自尊心をもっている必要があります。こうした姿勢が、Voodoo Doughnutの成功における要であり、顧客一人一人を満足させることのできる秘訣なのです。
私自身も、このドーナツ店と同様に人々の話題の対象となることがあります。たくさんの変なことを行うからです。私は敢えて、そうしています。なぜなら、前述したように、新しいことを試みて、周囲の反応を学ぶことが大切だからです。私は心を開いて、ありのままの自分を見せていれば、自分と関わりたい人々を引きつけることができると考えます。同時に、多くの人との関係も失うかもしれませんが、それは有意義な人間関係を築くために必要な代償です。ありのままの自分以外を装う必要はないのです。目指すべきは、自分に自信をもち、自分にとって大切なことを理解し、そしてそれを包み隠さないことです。あなたがもしロビトゥシン入りドーナツと同じぐらい変わった存在であっても、あなたを愛してくれる人は大勢いるはずです。
Apple:ポジティブであれ
Appleの魔法のような革命的な戦略が好きであろうとなかろうと、その効力の大きさは否定できないでしょう。非凡な成功を収めたこの企業がトップに上りつめることのできた理由は、ただ良いガジェットを作ったからではありません。盲目的な楽観主義に基づいて、製品を発表したからです。
Appleは、自社製品を大げさに売り込むこと、時にそれはおかしく聞こえるレベルでもあることで知られています。それでも、その戦略は人の感情に多大な影響を及ぼします。Appleは製品について大げさに表現すると分かっていても、ポジティブな表現を繰り返し聞いていると、聴き手の気分も盛り上がっていきます(もちろん、まったくそう感じないという人もいると思いますが。完璧なものは存在しません)。たとえば、Appleのマーケティング方法をパロディ化したこのビデオを見たあとに、キットカットを食べたいと思う気持ちを抑えることができますか?
即座にキットカットを買いに走りたいと思わない人も中にはいるでしょうが、ポジティブな語り口調はポジティブな気持ちを生みます。このビデオに影響を受けて、キットカットを買いたくなる人も大勢いるでしょう。行動の結果に関わらず、ポジティブな気持ちというのは波及していきます。常にポジティブな気持ちを保つことは難しいですが、それでも物事の良い側面に目を向けるよう努力して、感謝を示すことはできるはずです。こうした考え方をすることで、気分が良くなり、満足感を得られるはずです。ただ、自分の気持ちを偽ってはいけません。Appleのように、自分が口にする前向きな言葉は、本当に心から思って発する言葉でなければなりません。
パネラブレッド:正しいことを行うために、ルールを破る
ルールというのは、遵守するためにつくられるものですが、正しいことを行うためには時にルールを破る必要があることを私たちの多くは理解しているはずです。一方で、多くの企業はそのように考えていないかもしれません。ですが、Panera Breadは善意に基づいて例外の対応を行ったことで、賞賛を得ました。
Panera Breadがゲイル・クックさんという女性に対して行った親切な行動は、彼女がFacebookに投稿したことによって拡散され、有名になりました。それは、以下のような内容です。
私の祖母は癌を患っており、最期の日が近づいています。先日、私が祖母を訪ねると、祖母は私にスープが飲みたいと訴えました。ですが、病院のスープは祖母曰く「ひどい」味がするとのこと。Paneraのクラムチャウダーがとにかく飲みたいのだと言いました。残念なことに、Paneraはクラムチャウダーを金曜日にしか販売しません。私はマネージャーのスーに電話をして、状況を説明しました。私は特別なものを求めていたのではなく、ただ一杯のクラムチャウダーを必要としていました。なんのためらいもなく、スーはクラムチャウダーをつくると言いました。私がスープを取りに行くと、スタッフはクッキーが入った箱まで渡してくれました。この出来事はたいしたことがないように思えるかもしれませんが、祖母にとってはとても大きな意味をもつ出来事でした。スーとそのほかのPaneraナシュア店のスタッフに心から感謝します。祖母に喜びを与えてくれたことを。本当にありがとうございました!
この件に関して、Panera Breadの行動を多くのメディアが取り上げました。記事にはこうした行動は、同社にとって特別なことではないと書かれていました。同社にとっては、食べ物を販売することがルールなのではなく、正しい行為をするためであれば例外措置をとることがルールなのです。上部に権限を得る必要もありません。正しい決断をするように、奨励されているのです。
時として、人生においてルールは意味をもちません。それでも、ルールに従わなければならないときもあります。反抗することの代償が大きいときです。ですが、そうでなければ、ルールに従わないことも時に必要です。良い行いをできる状況にあって、それが大きなリスクを伴わないのであれば、進んでルールを破るべきです。小さな行いも、他の誰かの人生に大きな影響を与えることができるのです。
Tasty BrandとAmazon:問題解決のために決断をする
流行に乗って、ちょっと商売を成功させるのは、それほど難しいことではありません。BluetoothのスピーカーやUSBバッテリーはうんざりするほど見ますが、それは生み出すよりも複製する人がいかに多いかを示しています。新しいアイデアはもうあまり残っていないのかもしれませんが、大変革を起こす必要も決してありません。ただ、目の前の問題を解決するものをつくればいいのです。
Tasty Brandの創業者は、子どもが口にする食品の中身を知ったとき、どれも健康に悪いか、味が悪いかのどちらかであることに気付きました。そして、この問題を解決するため、健康に良く、自然な材料を使った、かつ美味しい子ども向けの食品を提供するための会社を立ち上げました。
アマゾンが事業を始めたとき、同社は複数の問題解決を目指していました。オンラインショップ自体が、当時は新しいアイデアでしたが、同社はより大きな目標を掲げていました。もっとも顧客中心主義の小売事業をつくる、というものです。買い物のプロセスを簡単にしただけでなく、購入に関わる全ての側面を、顧客にとって楽なものにできるよう、あらゆる方法を模索し続けました。
Tasty Brandとアマゾンだけが、既存の問題解決のために事業を立ち上げた企業ではありません。成功企業の多くは、この記事で紹介した他の企業も同様に、世界に対して貢献をするために事業を立ち上げました。それは、すべての企業に当てはまることとは言えませんが、それでも多くの企業が行っていることです。こうした成功事業から得られる教訓の中でも、次の点は何よりも重要でしょう。問題解決のために決断をせよ。決断をするためではなく、という点です。
人生において、決断を迫られる場面というのは数多くあります。それは苦痛を伴うものですし、多くの人は決断が得意ではありません。それでも、決断をしなければなりません。そして、その際に決断の指針があれば、役に立つことでしょう。みなさんが与えられた複数の選択肢を検討する際には、どの選択をすれば問題を解決できるのかという視点で選ぶといいでしょう。当たり前のことのように聞こえるかもしれませんが、意思決定プロセス自体が苦痛を伴うものであるため、私たちは合理的に決断をするための意志を失ってしまうことがよくあります。決断できないときには、生産的な結果を生むであろう行動を選んでみてください。それが完璧に進まなかったとしても、自分が世界に対して何か良いことをもたらそうとした事実は、ずっと忘れないはずです。
Adam Dachis(原文/訳:佐藤ゆき)