服を選ぶとき、バッグを選ぶとき、家具を選ぶときなど、パーソナルな部分で色を選ぶ場面や、社内の企画書を作るときといったとき、「個人の色彩センス」がいやおうなく問われます。色の持つ力って意外と侮れなかったりするものです。そして、色を「作る」「選ぶ」「使う」場面でも色彩のセンスやノウハウはそれぞれにあるものです。
東洋インキとライフハッカーのタイアップ企画として、そんな色彩に関するセンスや知識を分かりやすく紹介するべく、今回は、4000以上のはてなブックマークを集めたことで、すでにご存知の方も多い「色彩センスのいらない配色講座」の人気っぷりにあやかりまして、作者の@marippe_さんこと、デザイナーのやまぐちまりこさんに、「色を選ぶ人」「色を使う人」として、色彩についてのお話を伺いました。
これまで、色について曖昧なイメージしか持っていなかった「非デザイナー」な私(野本)にとって、目からウロコのお話がたくさん! まだスライドをご覧になっていない方は、上のスライドをご覧になってから、以下のインタビューへどうぞ。
「デザイナー同士では通じる話が、非デザイナーの人にはなかなか伝わらない」という現状があるとよく耳にしますが、それってデザイナーがちゃんと説明していないからなんですよね。非デザイナーの人に伝えるということを、自分も含めてもっとみんなにがんばってもらいたいなと思っています。
デザインの流れは「企画を立てる人からの指示でデザインやコーディングをするパターン」と、「すでにあるコンテンツの改善案を私から提案して、A/Bテストをするパターン」の2つに分けられますね。私は、サイトのユーザビリティや使いやすさを重視しているので、そのような観点からアイデアを出すようにしています。
ノ:企画を立てる人から指示を受ける場合、ラフは作成してもらいますか? ヤ:いえ、むしろラフは作らなくて良いと言っています。「何を載せたいか」「どういう趣旨か」さえ押さえていれば、軸が大きくぶれることはないと思うので。テキストも「何が言いたいか」を聞くレベルで、それを元にデザインに合わせて自分で作成しています。企画の人が作ったラフを元にデザインをするタイプのデザイナーさんの方が、世の中の比率的には多いと思いますが、私の場合は自分のやりたいことをやるタイプですし、物怖じもしないので、自分のスタイルを貫かせてもらっています(笑)。 ノ:やまぐちさんがデザインされるときは、サイトの配色をどのように決めていきますか? ヤ:一番大切なポイントは、「最初の一色をどう決めるか」なんです。私の場合は、サイト全体のイメージをどんな風にしたいのかというところから決めることが多いかな。簡単に言うと、「にぎやか=暖色」「堅実=寒色」といった感じですね。あとは『カラーリスト -色彩心理ハンドブック-』という本を参考にしながら、ターゲットのペルソナによって配色を考えたりもします。この本では、大学生~40代までの男女820人に「どの配色が好きか?」を聞いたアンケートの結果が紹介されていて、例えば「30代はカジュアルな配色が好き」「この配色は男性に人気だけど、女性にはあまり人気がない」など、性別や年代によって異なる、好まれる配色の傾向がわかります。
ノ:やまぐちさんが、最初に色について学ばれたのはいつ頃ですか? ヤ:私は多摩美術大学出身で、色彩の基礎の部分は受験のために通っていた予備校時代にみっちり学びました。 ノ:では、スライドの中で紹介されていた「3色を70:25:5のバランスで配色する」という手法も学校で? ヤ:いえ、あれは偶然インテリアの本で見かけて、「これは!」と思ったんです(笑)。ただ、同じような考え方で「粗密」というものがあって、ひとつの画面の中でも密度の濃淡をつけることなのですが、それを学んだのは予備校ですね。たとえばWebの画面を見たときに、色の密度の低いところ(薄いところ)と、色の密度が高いところ(濃いところ)とを比べると、色密度の低いところの面積比が大きくなることがほとんどだと思います。つまり、粗密を意識すると自然と色の割合は等分ではなくなってくるんです。■やまぐちさん直伝! 色を扱うときに気をつけたい3つのポイント 1. 明度のコントラストに気をつけようノ:最後に、「色彩センスのいらない配色講座」続編の予定はありますか? ヤ:ちょっと反響が大きくて、続編への期待のハードルが上がり過ぎてしまって...(笑)。ブログを作ったので、これからも情報発信は続けていくつもりです。「そのうちヒット作が出るといいな」くらいの温かい目で見守っていただけるとうれしいです。前景と背景のコントラストが低いと、文字が読めなくなる。イメージ的に目立ちそうな黄色は特に、色相の中でも一番明度が高いので要注意! 派手な色を使えば必ずしも目立つわけではない。
2.色のイメージを大切に赤は目立つからという理由で多用されがちだが、「警告」のイメージが強い色。お得な情報を伝えたいときに警告する必要はない。赤から少しずらしてオレンジなどにした方がベターな場合も。
3. ネガティブ表示とポジティブ表示の使い分けネガティブ表示(黒地に白文字)は濫用しない方がいい。人間は昼に行動する生き物。ネガティブ表示は、夜に光を見る感覚に近いので、見る人の目に負担が大きいのでは?
色って本当に奥が深い! 配色って、センスだけでするものではなかったのだと、とても勉強になりました。やまぐちさんが埋めようと意識されているような、デザイナーと非デザイナーの間にある「大きな溝」が、お互いに話を聞き合うことで少しずつ埋まっていけばいいですね!
やまぐちさんから伺った3点のポイントを紹介しましたが、明度の話や目に与える負担の話は、東洋インキさんが展開している「カラーユニバーサルデザイン」の考え方にも通じるものがありました。また溝を埋める一つのコツが「色に関して興味を持つこと」。普段の会話のネタにもちょっと色に絡んだ話題を交えるだけで、他の人からの、色についての認識や、色の使い方・合わせ方が分かるかもしれません。
そんな会話のネタにも役立つ色に関するトリビアや、ちょっとマニアックな色や印刷の豆知識を、東洋インキのFacebookページとTwitterでは発信しています。色に関するネタ探しに以下のリンクもご覧ください。「色を作る」立場ならではのTipsが見つかるかもしれませんよ。
また、来月から開催されるTOKYO DESIGNERS WEEKでは、環境デザインTENTに出展。リアルなイベントを通じて様々な人に「色の魅力」「色の価値」を提案していきます。こちらの話題も、後日記事にて紹介しますので、ご期待ください!
(野本纏花)