2017年5月22日 開催
記者会見
「ひきこもり自立支援を謳う団体による被害実態について」
「暴力的支援団体」に喝采を送ったマスメディア
斎藤環(精神科医・筑波大学教授):昨年4月に「支援という名の暴力」という記者会見を開いた時は「TVタックル」という番組で、非常に暴力的な支援業者に、あたかも喝采するような報道をしたことを問題視しました。私の目的は、それを正義を代行する団体であるかのように持ち上げるマスコミへの批判です。こうした裏稼業は世界全体にありますが、公式の支援事業のように取り上げるのは日本だけです。この恥ずべき状況を改めていただきたいと考えております。
幸い記者会見の後、そのような報道は一応鳴りを潜めているようですが「長田塾」の時のように10年ぐらいで息を吹き返すので、定期的に監視しております。
私はツイッターで「ロックオン」と表現して、必ず団体の名前を出して注意喚起をしていますが、どちらかと言うとマスコミへのアピールとお考えいただければと思います。
誰もが拉致監禁されうる恐るべき現状
日本が人権後進国だと痛感するのは、精神障害者という名目で拉致監禁をしても、親が納得していれば罪に問われず、警察も全く助けてくれないどころか業者に加担する事。大変に情けない現状です。
仮に皆さんが職を失って、親御さんが拉致監禁を頼んだら、助けを求める場が存在しないのです。警察も人権擁護委員会も当てにならず、証拠がなければ何も出来ない。恐るべき状況だと考えております。
「支援対象を貶めてはならない」というルールを無視する業者
支援者は、支援対象を貶めてはならない。これは絶対のルールですが、この手の業者は支援対象をモンスター扱いして、TVを観る人に共感させる形を取ります。
ある精神病院移送業者が、自分がいかに「精神障害者のモンスター」を精神病院に送りこむ「正義の活動」をしているかと、自慢するように語っていますが、日本に32万床の病棟がある収容主義のあだ花ですね。そもそも収容主義が間違いですが、そこには「他人に迷惑をかける精神障害者には人権が無い」という大衆の意識があります。
個人の人権を犠牲にする「強すぎる家族主義」
「Yahoo!ニュース」ありますよね。あのコメント欄は酷いことで有名ですが、昨年の報道があった際に「ひきこもりに人権はない」といったコメントが沢山書かれました。
私は、これが日本の7割の人権意識だと考えています。本人の人権が剥奪されても、批判されず、違法性も問われない状況が続いている。
せめてメディアの方々は、啓蒙的な活動をしていただき「個人を尊重する方が、家庭の安定も守れる」という常識に立ち返っていただきたい。日本は家族主義が強すぎて「家族のためには、個人の犠牲は仕方がない」という発想と馴染みが良い。私はそれを「ヤンキー文化」と呼んでいますが、それが続く限り、この手の業者を止められないと思います。
また暴力的支援は、精神医学的にも問題があります。まず支援になっていない事は、Aさんの勇気あるご発言からも感じられたと思いますが、かえって傷口を開いてトラウマを増悪させてしまう行為が「支援活動」と言われている事に戦慄します。
「ひきこもり」に起こる「高齢者ビジネス化」と「裏社会の侵入」
私が感じている現状は、ひきこもりと親の高齢化が進行していて、この手の事業が高齢者ビジネスになりつつある事です。「おたくの屋根、おかしいですよ?」と言って、高いお金を払わせて屋根を直すセールスがありますよね。それと同じです。「おたくのお子さん、おかしいから治してあげましょう」と、甘い言葉で近づいて数百万を奪い取りながら、実際は何の支援もしない。親御さんは罪悪感で泣き寝入りに終わる。
また、裏社会の業者が一部侵入しつつある。先ほどの業者も元警察官と言っていますが、そうした形で大きくなりつつある事を注意喚起しておきます。
裏稼業を正しいと錯覚しないように、メディア側も正しい知識を
こういう話をすると必ず、暴れる精神障害者はどうするんだと反論されますが、やり方はいくらでもあるんですよ。
それを学ぼうともしていない、先ほどの精神病院移送業者のような「誰も対処してくれないから、俺がやるしかないんだ!」という変な正義感に燃える人を、マスコミが正義の美談のように取り上げる。そうした悪循環は許しがたいと感じます。
せめてメディアの方は正しい医療サービスの知識を持ち、目の前の業者を正しいと錯覚しないでいただきたい。
家庭内暴力の問題も、解決不可能・困難と思われますが、私はそうした問題を多々扱っており、解決に至っています。
決して医療に手が出せない物でも、裏稼業に頼むしかない物でも無く、スキマ産業に活躍する余地は無いと申し上げて、終わりにしたいと思います。
以上
紙面版ご購入はこちらをクリック
ひきこもり新聞をサポートして下さる方を募集しております。詳細はこちら
更新情報が届き便利ですので、ぜひフォローしてみて下さい!
Twitter
Facebookページ
近年、ひきこもりが増大するに従って、社会で顕在化し、いわゆるボランティアとして家族や関係者を中心に自然発生的にサポート活動を開始し、専門医や専門的な関係者も連携してくれるようになった。これらの経緯は斎藤 環医師(教授)が最も熟知している一人と理解している。
全国的な家族会のひきこもり当事者支援という観点からその存在も多大ではないか。
企業ビジネスという観点からひこもり当事者を合理的、効果的にサポートできるのか。
まだ、未知数ではないか。さまざまな法的な問題、医学的な問題などを抱えながら検証できていない。公的機関の関与が急がれる。治療に不可欠と言われる臨床専門医(精神科等)それに類する有資格者の全国的な増大が急務だ。政府の組織的、経済的支援措置も急務だ。
精査された的確なサポート情報のシステム化で当事者、家族、専門医、公的機関、特に地方自治体の専門部署、サポートボランティア(登録NPO)、その他関係者の情報共有を急いでもらいたい。情報の精査と偏在解消。