pp. 315-318
【1980年代中盤の文献】セルフヘルプ活動の形態として紹介されている(p.315)。アメリカでは1960年代初頭にはじまった合衆国および州の脱施設化政策によって、全米の公立精神病院から多数の精神障害者が退院して地域で生活するようになった。―中略―地域に暮らす回復途上にある精神障害者のよりどころとなっているのがファウンテンハウスである。その特徴はかつて精神障害を経験した「元患者」たちの創意によって始まった。文字通り自助活動の組織だということである。現在ではその活動の規模は拡大して、リハビリテーションの専門家、精神科医、市民ボランティアが参加、協力しているが、障害者が主人公であるという基本的性格は変わっていない(共同作業所全国連絡会、1988: 15)。 【1980年代後半の文献】1960年代に生まれ、1970年代に多くの精神障害者のセルフヘルプグループが、この時期活性化する一方で、1987年に改正・精神衛生法(新・精神保健法)が成立し、精神障害者の社会復帰と自立促進のための施設として「援護寮・福祉ホーム・通所授産施設」が制度化された。職業リハビリテーションや就労支援という観点からクラブハウスを紹介する文献が登場している。「アメリカの職業リハビリテーション活動の特徴として、政府主導ではなく、ほとんどすべてが非営利の民間組織の活動であり、その活動は自由で創意に富む。リハビリテーション法の象徴される合衆国政府の一貫した障害者政策の根底には「障害者を種別および程度によって差別しないという理念が流れている。」と紹介されている(p.316)。 【1990年代の文献】専門家支援の方法論(p.318)
pp. 323-324
日本では、クラブハウスモデルが浸透しているとは言い難い。事実、国際基準に従いクラブハウスモデルを実践しているのは5か所であり、増える兆しはない。これは、クラブハウスモデルが日本の制度に合致しないという理由以外に、「メンバーとスタッフの対等性」という性質や過渡的雇用などの特徴的なプログラムを誰かが従来の施設に移植したため、その本来の相互支援がうまく働かないということが考えられる(p.323)。〔注〕クラブハウス内の「仕事」は「デイプログラム」、「ユニット活動」と呼ばれ、メンバーとスタッフがともに関わる。そこには従来の福祉施設に見られるメンバーの仕事とスタッフの仕事の区別はない。しかし障害者自立支援法によって、専門家の支援が強化された。一般就労を見越した訓練、これまで授産施設で行われてきた「作業」に焦点をあてた福祉的就労への支援に給付が行われる制度が専門家の支援を強固なものにした(p.324)。