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幻灯は訴える


朗読:岡田秀則、鷲谷花 ピアノ伴奏:柳下美恵
協力:神戸映画資料館、上野朱、人形劇団プーク
共催:JSPS科研費15K02188「昭和期日本における幻灯(スライド)文化の 復興と独自の発展に関する研究」(研究代表者:鷲谷花)


 戦時中、国策・軍事教育における必要により復興した幻灯は、1950年代に至って、戦後日本社会の抱えるさまざまな問題への認識を促し、その解決に向けた行動や支援を呼びかける「運動」のメディアとしても独自の存在意義を確立した。今回のプログラムでは、とりわけ50年代に大衆的な盛り上がりを見せた反戦平和運動と労働運動に関連して製作された幻灯4本を、フィルムと幻灯機により上映し、当時の作り手たちが幻灯という融通無碍なメディアに託した抗議や救済の訴えを、今日に伝えることを試みる。


-野ばら

Wild Roses

1952年
原作:小川未明 脚色:高橋克雄
演出:川尻泰司 美術:田畑精一、石井マリ子
撮影:佐竹晴雄 制作:厚木たか
製作:人形劇団プーク 配給:光影社
神戸映画資料館所蔵

幻灯配給会社光影社との提携により人形劇団プークが製作した「世界名作物語」シリーズの1本。当時のプーク劇場の裏の原っぱに手作りしたオープンセットに人形を配置して撮影された。鮮やかな色彩はモノクロポジフィルムへの手彩色により作り出された。



- ゆるがぬ平和を ―8.6原水爆禁止世界大会記録―

Toward the Unbreakable Peace: A Report of the 8.6 World Conference Against Atomic and Hydrogen Bombs

1955年
製作:原水爆禁止世界大会日本準備会
協力:原爆被害者の会、八・六世界大会共同デスク、日本幻灯文化株式会社、関西幻灯センター
神戸映画資料館所蔵

1955年8月6日に広島市で開幕した第1回原水爆禁止世界大会の貴重な映像記録。全大阪映画サークル協議会内に設立され、幻灯フィルム・台本・機材等の貸出業務の傍ら、幻灯の自主製作も手がけた関西幻灯センターのスタッフが現地に赴き、複数の参加団体のカメラマンが撮影した記録写真をもとに製作された。



- 基地沖縄のうったえ

Appeal from the Base Okinawa

1956年
製作:沖縄県祖国復帰協議会
協力:平和擁護日本委員会
神戸映画資料館所蔵

1956年、沖縄全島で展開された米軍による軍用地収用に対する大規模な反対運動(島ぐるみ闘争)に関連し、米国の占領統治下にある沖縄の窮状を、内地に向けて訴えるべく製作された幻灯。内地在住の沖縄出身者が製作の中心となったと考えられる。



- せんぷりせんじが笑った!

Senpuri Senji Laughed!

1956年
原作:上野英信 美術:勢満雄
撮影:菊地利夫 脚本改訂:上野朱 
製作:
日本炭鉱労働組合
配給:日本幻灯文化株式会社
*上野朱氏所蔵のオリジナルプリントから作成したニュープリントを上映

1954年、筑豊の中小炭鉱の労働者に向けたガリ刷り冊子として発表された上野英信の文、千田梅二の版画による原作を、精巧なミニチュアセットと人形により幻灯化した作品。美術担当の勢満雄は、満映(満洲映画協会)スタッフとして旧満洲で日本の敗戦を迎えた後、中国東北電影公司で働いた経歴をもつ。