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5. 記憶を綴る



個々人の無尽蔵で、一見、目には見えぬ記憶の海。映画という手法を通して日常生活のなかに沈んでいた記憶が、ことばや所作から可視化されてくる瞬間が立ち上がる。グスタボ・フォンタンとヘルマン・シェールソ、ジョアン・モレイラ・サレスの実験映画(アート・フィルム)は、繊細さと親密さを伴いながら、私的な空間を映画空間へと拡げていく独特の試みが展開されている。


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The Tree
El árbol

アルゼンチン/2006/スペイン語/カラー/35mm/62分

監督、脚本:グスタボ・フォンタン
撮影:ディエゴ・ポレリ
編集:マルコス・パストルティレ
録音:ハビエル・ファリナ
製作:ステラ・チェルニアキエヴィッチ
提供:Tercera Orilla

時というものは、自然とその流れのなかで姿をあらわすものだ。マリアとフリオというふたりの老人が、2本の樹(アカシア)について議論している。口論を続けながら、100年以上経つ家でのふたりの生活が織りなされてきた。隣人の訪問、パーティー、思い出、雨、夢、繰り返される日々の行為、季節、光と影などが、時の移ろいを私たちに語る横糸となっていく。



The Face
El rostro

link インターナショナル・コンペティション審査員参照



-感性

Sensitivity
La sensibilidad

アルゼンチン/2012/スペイン語/カラー、モノクロ/Blu-ray/55分

監督、脚本、撮影、編集、提供:ヘルマン・シェールソ
インタビュアー:ヘルマン・シェールソ、マラ・バレストリニ
出演:マリア・ルイサ・パンド・デ・サバティーニ、ラウラ・エスピンドラ・デ・ペッシ

ふたりの祖母、ラウラとマリア・ルイサは同世代だが、まったく異なる社会階層の出身だ。ともに先の軍事独裁政権時代に子どもが失踪し、ひとりは幸運にも娘を取り戻すことができたが、もうひとりは違った。本作では、ふたりの孫である監督のヘルマン・シェールソとの対話から、より豊かな表情をもつ歴史の(歴史それ自体が語ることのない)側面が紡ぎ出される。異なる身振り、異なる作法、異なる形、異なる感受性は、彼女たちが属する社会階層の違いを物語る。



-サンティアゴ

Santiago

ブラジル/2006/ポルトガル語、スペイン語/カラー、モノクロ/ Blu-ray/80分

監督:ジョアン・モレイラ・サレス
撮影:ヴァウテル・カルヴァーリョ
編集:エドゥアルド・エスコレル、リビア・セルパ
録音:ジョルジェ・サウダーニャ
製作:マウリシオ・アンドラデ・ラモス
提供:VideoFilmes

『サンティアゴ』は未完の映画についてのドキュメンタリーである。サンティアゴは監督が育った家の執事だった。何年も前、監督は彼についての映画を作ろうとして、失敗した。監督はいま、その撮影素材に立ち返り、アイデンティティとドキュメンタリーの本質をめぐる映画に取り組む。